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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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溢れかける感情

 フィリアとシュカが友人関係となって数日後。

 休憩中のアーシャは焦点の合わない目で、天井を見つめていた。


「あー」


 うめき声のような物を出すアーシャの脳裏を過ぎるのは、ここ最近のフィリアの姿。

 今まで手の付けられない問題児扱いされ、アンジェラの手を焼かせていたシュカのサポートを行うようになった。

 基本的には彼女の問題行動を嗜め、他の子供達が怖がらない様に取りつくろっている。


「(……愛想、つかされたか?)」


 困惑するアーシャは、携帯食をチマチマかじっていく。

 楽しそうに一緒に居るフィリア達の姿を思い浮かべながら。


「(友人ができるなんて、普通の事でしかない、それが普通なんだ、それが)」


 自分に言い聞かせるも、心を巡る痛みは晴れない。

 それどころか、二人を引き裂きたい思いが強くなる。

 一度大きく深呼吸を行い、気持ちを整理する。


「……仕事に戻るか」


 そう呟きながら立ち上がったアーシャは、休憩所を後にした。

 仕事へ戻る道中で、外で遊ぶ子供達に目をやる。


「少年組の子供達、か」


 元気で遊ぶ子供達の中に、シュカとフィリアの姿もある。

 二人も笑顔でドッジボールに興じる姿に、アーシャはため息を零す。


「(……バカだな、私も)」


 目を細めたアーシャは、窓から目を逸らす。


「……そうだよ、あれが、本来のあの子、だよな」


 胸のそこから沸き上がって来る感情を飲み込みながら、アーシャは本来の仕事へと戻って行った。


「(フィリアは、ここに居るべきだ、あんな小さい子が、戦場に出ていい訳がない……ここに居た方が幸せだ)」


 心に決めた一つの選択を胸に。


 ――――――


 その日の夜。

 シュカは仕事を終えたフィリアと一緒に、就寝時間まで院内を散歩していた。

 そんな時、フィリアはばつが悪そうに口を開いた。


「あの、シュカ、さん」

「何度も言うけど、シュカでいいって」

「では……シュカ、実は、その、私達がここで勤務する時期は、明日が、最後でして」

「……」


 言葉を失ったシュカは、笑顔を失わせながらフィリアを見つめた。


「……そ、そう、か」


 俯いたシュカは、フィリアと友人になった日を思い出す。

 フィリアの本来の目的は、アーシャと親密になる事。

 その予行演習として自分と友人になった。それは解っている。


「(やっぱり、僕じゃだめか)」


 本音を言えば、フィリアにはここに居て欲しい。

 徐々に早くなる鼓動を抑えながら、シュカはフィリアの方を向く。


「……ふぃ、フィリア、その」

「はい?」

「何で、戦場なんかに戻るんだよ、あんな所、怖いだけだろ」

「……」


 少年兵として何度か戦場を経験し、今も幻聴に悩んでいる。

 それなのに、フィリアはそんな所に行こうとしている。


「確かに、私は本来行かないという選択が望ましい事ですが、私は、あの人の隣に居たい、あの人の隣で、戦いたい」

「……」


 彼女の言葉一つ一つが、シュカの胸へと突き刺さった。

 フィリアの目を見れば、覚悟の上の発言だと解ってしまう。


「(僕は所詮、アイツの)」

「だから、すみません、私は、ここを離れなければなりません」


 申し訳なさそうな笑顔のフィリアに、手を伸ばしたくなった。

 このままあの日のように抱きしめ、ずっとここに居て欲しいと言いたい。


「(……ワガママになれと言ったのは、僕だ、だから、僕だって)」


 数日前にフィリアに言ったセリフを思い出し、鼓動は早くなる。


「ずっと、ここに……」

「ん?」

「ッ、あ、いや、その」


 思わず出てしまった言葉に、シュカは数歩下がった。

 フィリアからも目を逸らし、俯いてしまう。


「あの、シュカ?」

「な、何だ?」

「その、何か、有りました?」

「(……この子のおかげで、僕は救われた、だから、次は、僕が)」


 心配してくれた事に心を揺らされながらも、シュカは胸を抑えながら深呼吸をする。

 そして、無理矢理落ち着きを取り戻す。


「……大丈夫、フィリアは、いつも、優しいな」

「い、いえ、別に」

「(あの女が気にいるのも、わかるな)」


 今は、この言葉が精一杯だった。

 涙をこらえても、感情は沸き上がって来る。


「フィリア」

「は、はい」


 溢れて来た感情に乗せて、シュカはフィリアを抱きしめた。


「ちょ!」

「……ゴメン、無理だ、もう、平気な顔、できない(どうして、僕じゃない)」


 フィリアを抱く力を強めたシュカは、震えた声と共に涙を零してしまう。

 それでも、離れたくはないとだけは口にはしない。

 だからこそ、せめてものワガママを言う事にする。


「……いつ、帰るんだ?」

「え、えっと、予定では、明後日の朝、ですね」

「なら、最後……最後の夜だけでいいから、一緒に、居てくれるか?」

「……」


 黙ってしまうフィリアに、シュカは少し心を痛めた。

 だが、それがフィリアに対する最後のワガママだと、フィリアの服が千切れんばかりに抱きしめる。

 すると、フィリアは優しく頭を撫でて来る。


「……分かりました」

「……ありがとう、本当に」


 これが最後の思い出だと、シュカは精一杯の感謝を伝えた。

 そんな彼女に抱きしめられるフィリアは、シュカの事を受け止める。


「(……私も、ここに居たかったな)」


 強化人間でなければ、戦場に戻る事は無かっただろう。

 それでも、フィリアの脳裏にアーシャが過ぎる。


「(でも、私はマスターの元に居たい)


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