表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/81

新しい友人

 しばらくして、シュカは落ち着いた。

 屋上から移動せず、二人は同じ場所に座る。


「すみません、何度もトラウマを呼び起こしてしまって」

「……ほんと、だよ、全く」

「(近い)」


 そんな事を言いながらも、シュカはフィリアに身を寄せる。

 屋上で感じるそよ風さえ通さない程に密着してくる彼女に戸惑いながら、フィリアは言葉を続ける。


「……それで、その、さっきの質問、ですが」

「さっきも言ったけど、僕には友人何て居なかったよ」

「……」

「でも、自分が無い奴は、やっぱり嫌い」

「だから、私はそれを解消したいから」


 また心に刺さる事を言われ、フィリアは思わず目を逸らした。

 その時、シュカがちょっと笑みを浮かべていた様にも見えた。


「(さっき強く叩いたのは謝るが、それでも同じ事何回も言わなくても)」

「悩む位なら、今の仲間を大事にしろよ」

「え?」

「昔の仲間が気になって、今の仲間が死んだら元も子も無いだろ?」


 今気づいたが、シュカの喋り方には柔らかさが出ている。

 だがそんな事よりも、フィリアにとってその言葉は容易い物ではないと首を横に振る。


「そうかもしれませんが、私はあの子達と仲が良かった、それなのに、私だけが幸せになるなんて」

「そんなの、わがままになればいいんだよ」


 即答だった。

 あまりの返答にフィリアは目を白黒させ、身体を硬直させてしまう。


「それに、自分を持つって、わがままで居る事だろ?大人の言う事聞くばかりとか、正に自分が無い奴だろ」

「……」


 色々と腑に落ちないが、フィリアはその言葉を頭の中でリピートさせる。

 そもそもマスターであるアーシャからは、なんの制約も施されていない。

 更にチョーカーで縛り続けて来た国も大人たちも、何もかも過去の物だ。


「(でも確かに、私はもう、わがままを言っていい立場だ)」


 チョーカーに触れたフィリアは、それを握り締める。

 自分の意思でこれを千切る事はできないが、それ以外にほとんど制約はない。

 それを頭でわかっても、心が許してくれない。

 そんな事を考えながら、フィリアはシュカに視線を落とす。


「……え」


 一瞬だったが、シュカを別の人間に錯覚した。

 黒髪では無く、美しい銀色の髪を持った少女。

 彼女とも身を寄せ合い、そして何かを話していた。


「(誰だ?思い出せない、だけど)」


 幻覚で見た彼女に言われた気がする。

 自分が死んでも、幸せで居て欲しいと。


「(言われた根拠も確証も無い、なのに)

「で?過去を捨ててどうすんだ?」

「……い」

「い?」


 アンジェラにも言おうとしたが、喉につっかえて言えなかった言葉。

 今も出て来ないせいで、喉と胸の間に痛みが走る。


「(わがままになるんだ、それで、あの人の隣に)」


 シュカの言葉だけではない、先ほど見た幻影の少女にも背中を押されるように、フィリアは言葉を吐き出す。


「い、いま、のマスターと、もっと、親密になりたい、主従なんかではなく、友人に」


 喉を引っ掻きながら出て来る言葉に、フィリアは表情を歪ませた。

 それでも全て出しきり、胸に手を当てて息を整える。


「はぁ、はぁ……やっと、言えた」

「……ふ」


 その隣で、シュカの表情は徐々に笑みへ変わっていく。


「ふふふ」

「……笑わないでください」

「……ごめん、そんな事で、僕は何度も苦しい思いをしたんだって思うと、なんか」

「そ、そんな事って」


 ちょっと頭に来たフィリアは改めてシュカの方を向き、彼女と顔を合わせる。


「……あ」


 今の彼女からは、さっきまでの威圧感は感じなかった。

 まだ暗い所はあっても、普通の女の子のような笑みに近づいている。

 そんな彼女の表情に、フィリアはまた固まってしまう。


「ん?何?」

「い、いえ、その、何でも、ないです」

「あっそ」


 目をパチパチとさせるフィリアは、一旦深呼吸。

 彼女に何が有ったにせよ、今はそれどころではない。

 アーシャと距離を縮める為に必要な情報は、まだ不足している。


「(……記憶は有るとは言え、まだまだ私の中の友人のデータは少ない)」


 ゆっくり横を向いたフィリアは、強く打ち始めた胸を抑える。

 今まで口にした事も、頼んだ事も無いセリフ。


「あ、あの、シュカ、さん」

「今度こそ何?」

「え、えっと、その、よろしければ、わ、私と……お、お友達に、なってください」

「……」


 緊張を飲み込んで言ったセリフに、シュカは少し黙った。

 彼女は軽く上を向き、首を傾げた。


「あ、あの、別に、無理強いは」

「い、いいよ」

「え?」

「だから、良いよって、何回も言わせんな」


 ちょっと顔を赤くしたシュカの言葉に、フィリアは笑みを浮かべた。

 込み上げて来る嬉しさをこらえ、今度はフィリアの方から寄り付く。


「ッ」

「では、これからお願いします」

「あ、ああ、その、よろしく」


 二人はお互い握手を交わし、笑みを浮かべ合った。


 ――――――


 その頃。

 アーシャは胸に痛みを覚えながら、孤児院での仕事をこなしていた。


「(フィリアと喧嘩した)」


 表面では平静を装っているものの、内心は穏やかではない。

 昨日の言い合いがずっと頭の中でループし、後悔としてアーシャに襲い掛かっている。


「(謝ろうにも、今日一日顔合わせて無いし、何よりさっきから見てない)」


 さりげなく探してはいるものの、やはり彼女の姿はない。

 見つけた所で謝れるかは置いておき、一先ず目の前の仕事をこなそうとする。


「(とりあえず、この資料を先生に)」

「……と言う感じにしましょう」

「あ、ああ」

「ッ!(フィリアの声)」


 遠くてよく聞こえなかったが、確かにフィリアの声は聞こえて来た。

 すぐに足を声の方へ向け、早めに走る。


「ふぃり」


 彼女の名前を呼ぼうとした辺りで、アーシャの目はフィリアを発見。

 しかし、その隣にはシュカが居る。

 二人そろって笑みを浮かべ合い、話している姿。

 なんの変哲もない光景の筈なのに、アーシャの胸にナイフが突き立てられたような痛みが走る。


「ッ!?」


 何かも解らず、アーシャは身を隠した。

 脳が揺さぶられるような感覚に陥り、視界も歪み出す。


「(あ、あれ?なんだ?この感じ)」

「べ、別に、僕の社会復帰に、協力しなくても」

「いいえ、貴女が私の助けになってくれたように、私も貴女を助けたいので」

「いや、助けたって言うか……」


 そんな会話が聞こえてきたが、アーシャは咄嗟に耳を塞ぐ。

 そして、二人に姿は見られたくないと、その場を立ち去った。


「(なんだ?なんだ?わからない)」


 思わずトイレに駆け込んだアーシャは、震える手で胸を抑える。


「(フィリアに友人ができた、喜ばしい事なのに、普通の事なのに、何で、こんなに痛い)」


 初めての感覚に、アーシャは個室の中で震える事しかできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ