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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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初日の半分

 同日の夜。

 六つの月のうち四つが夜空を照らす中、施設の一部の電灯が落ちた。


「……や、やっと寝た」


 電気の落ちた部屋を後にしたアーシャは、フィリアと共に半ば千鳥足で歩く。

 幼年組以下の子を寝かしつけていたが、全く言う事も聞いてくれなかった。

 おかげで、騒がしい状態が一時間近く続いた。

 思いだすと、視界が歪んでしまう。


「は、はい、思った以上に苦戦しましたね、けど、本日はこれで終わりでしょうか?」


 その隣を歩くフィリアも、今回ばかりは目に力がない。


「あらあら、これでまだ半分よ?まだやれる?」


 二人の後ろを歩くアンジェラは、二人の頭を撫でた。

 孤児院への期間限定転属一日目は、まだ終了していない。

 彼の言葉でその事を思い出したアーシャは、風邪をひいたレベルで顔を青ざめる。


「……そうだった」

「え、えっと、他に何が」


 フィリアの質問に答えるべく、アーシャは虚無を見つめた。


「レポート、それから作業が……」

「はいはい!先ずはちょっと休憩しましょうね!!」


 どんどん底なし沼にはまって行くアーシャの肩を持つように、アンジェラはアーシャを連れて休憩室へと向かう。


「じゃ、お茶でも入れるから、くつろいでて」

「は、はい」

「はーい」

「あ、テーブルのお菓子食べちゃって良いわよ」


 お茶くみを始めるアンジェラを横目に、ソファに座ったアーシャは死んだ目でフィリアを見下ろす。

 見た目の年齢にはそぐわない程大人しく、静かにお茶菓子をかじる。


「フィリアはいい子だな」

「ちょ、マスター!?」

「はー、いい子だ、フィリアは、本当にいい子だ、いいこいいこー」

「ちょ、え!?」

「いーこー」


 フィリアを押し倒したアーシャは、抱きしめる彼女の頭を何度も撫でた。

 顔が真っ赤になるフィリアの事を気にも止めず、舌の足りていない言葉で褒め続ける。

 そんな彼女達を視界に収めながらも、アンジェラはお茶の入ったカップをテーブルに置く。


「あらやだ、完全に疲れちゃってるわね」

「戦場に出るよりずっと疲労少ないですよね!?」

「ふふ、その子にとっては、戦場以上に過酷なのよ、でも、貴女が来る前は気絶なんてザラよ」

「進歩って言うんでしょうか?それ」

「ええ、あ、ごめんなさい、お茶追加しないと」

「え?」


 アンジェラの言葉に首を傾げたフィリアは、扉が開けられた事に気付く。


「先生、少年組のレポート書き上げたから確認を」

「相変わらずはえーな、俺なんてまだ用紙受け取ってもいないってのに」

「レッドが怠け過ぎなだけだと思うが」

「いや、俺から見ても兄貴が早すぎるだけだ」


 扉が開く。

 オセロットを筆頭に、レッド、ラケルタ、サーバルが入って来た。

 ケフュレスの姿は無く、四人だけが休憩室に入ってくる。


「あら、いつも通り早いわね、ちょっと待ってて、皆の分のお茶も淹れるから、ついでに休んで行きなさい」

「は、はい、ですがまだ色々残って」

「熱心なのはわかるけど、お言葉に甘えようぜ、あーにき」


 まだ仕事を続けようとするオセロットとは別で、サーバルはソファに腰掛ける。

 彼女に続き、ラケルタとレッドも座る。

 自分以外が休憩モードに入った事で、オセロットはようやく休む事にする。


「……はぁ、分かった……それで?」


 席に着いたオセロットは、他のメンバーと同じ方を向く。

 彼らの視界に入り込んで来るのは、フィリアを抱き枕のようにするアーシャの姿だ。


「何でそうなった?」

「じ、自分で何してるのか解らないレベルでお疲れのようです」


 添い寝の場面は絶対に見られたくないと言っていた筈のアーシャは、他のメンバーが入って来ても構わずフィリアを愛でる。


「そもそも、フィリアは大人しすぎる、子供だったらもっと我がまま言ってもいいのに」

「まぁその事は否定しないが、だらしないな」


 と、オセロットは妙に肌をツヤツヤさせながら言った。


「……何でそんなツヤツヤしてんの?体力無限か?」

「いや、子供達の元気な姿を見てると、疲れ何て何度でもぶっ飛ぶだけだ」

「それ言ってる奴比喩か何かだと思ってた」

「あの、マスター、そろそろ」


 ため息交じりにそう言うフィリアは、ちょっと嬉しそうに引き離そうとした。

 しかしアーシャはそれを拒み、フィリアの事をより強く抱きしめる。


「はぁー、フィリアをこうした方が疲れが取れる」

「たく」

「……チ、子供は嫌いだ何だとか言いながら、随分あまあまだな」

「……」


 舌打ちをしたサーバルはお茶菓子を食べながら煽ったが、アーシャは全く無反応。

 それどころか、彼女から規則正しい寝息が聞こえて来る。


「なんか言って来いよ」

「……あー、寝てますね、これ」

「……まだ業務は終わってないから、後で起こしてあげて」

「は、はい」


 全員分のお茶を淹れ終えたアンジェラは、フィリアにそう通達した。

 とは言え、ぬいぐるみのように抱きしめられるフィリアは。


「(ちゃんと起きるか?これ)」


 一抹の不安を過ぎらせ、フィリアは小さくため息をついた。


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