表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/68

孤児院

 傭兵団ヴェイザーを乗せた艦ソウリュウは、目的地である町へ到着。

 しばらくした後で、アーシャ達は孤児院へと向かっていた。


「……ここが、マーセナルタウンですか」


 その道中で、フィリアは町を見渡す。

 ベルガスシティ程栄えてはいないが、どことなく落ち着いた雰囲気が見られる。


「ああ、エターナル管轄の町だ、ここでの抗争は禁止だが……その、私から離れるなよ、個人の安全まで保障されない」

「は、はい」


 頬を少し赤くしたアーシャは、紙袋を持っていない手でフィリアの手を掴む。

 フィリアの体温が手を通じて伝わり、離れないようにしっかりと握る。

 そんな彼女達の姿を、オセロットは鼻で笑う。


「……随分としおらしくなったな、自分から手を握るとは」

「うるせぇ、そんでお前は何で毎回毎回大量にお菓子持ち込むんだよ!?」


 そう言いながら、アーシャは手に持っている紙袋をオセロットへ押し付けた。

 この紙袋はアーシャとオセロットだけでなく、同行しているライトニングチームとスコールチームの面々も全員持っている。

 中身はオセロットの手作りお菓子が入っており、全員で四苦八苦しながら持ち込んでいる。


「折角行くんだ、生徒や先生方に土産の一つ持って行かないといけない、お前だってそれ位の良識あるだろ!?」

「売れないバンドマンみたいな恰好してる奴に良識問われたくねぇ!」


 今のオセロットは半裸長ズボンの上に、ギザギザノースリーブのロングコートと言う恰好。

 長ズボンもダメージジーンズで、アクセサリーも大量に着けている。

 そんな姿に、フィリアも冷や汗をかいてしまう。


「サーバルさんの私服があれなのって、もしかして」

「ああ、コイツのせいだ」


 ヒソヒソと話す二人に、ケフュレスが話しかける。


「ちょっと、もう着いたよ」

「おう」

「は、はい」


 彼女の発言で顔を上げたフィリアは、目の前の建物を目にする。

 所々古さを感じるが、周りより立派で大学病院のような大きな建物。

 校庭と呼べる広い庭では、今も多くの子供達が遊び回っている。


「こ、ここが」

「ああ、春暁園、私達が育った場所だ」

「しゅんぎょう、えん」

「この世界で数少ない、良心みたいな所だ……マックスを探す為に、私はここを出たんだ」


 園の名前をオウム返ししたフィリアは、校門越しに子供達を観察する。

 遊び回る子供達の種族は、艦内の時のように複数確認でき、みんな笑顔で遊び回っている。

 そんな子供達を見ていると、アーシャ最後に言った言葉は耳に入らなかった。


「(……あの子達)」


 一見すれば平和に見えるが、一部の子供の足音や四肢の関節の収縮音に違和感を覚える。

 踏みしめる砂の音からして、生体ファイバーを用いる医療用の義肢だ。

 それだけではない。

 顔に手術痕を持つ子供や、頭の耳が片方無い獣人の子供まで見受けられる。


「(戦争で、焼け出された、のか……)」


 敵対勢力であれば目の前に居るような子供さえ焼き、かろうじて生き延びた子供に手を差し伸べる事すらできなかった。

 閃光で見えなくなった目で母を探し、泣きじゃくる子供。

 砲撃の余波で四肢を失い、破片で体を刻まれた子供。

 かつては見捨てるしかできなかった子供達には、治療が施され、ここに笑顔で居られる。

 羨望の目を向けていると、輪に馴染めていない子供を見つける。


「……馴染めない子もいるんですね」

「ああ、私みたいにな……サーバルが居なかったら、私はここに居なかったかもな」

「な、何だよ急に」

「事実を言っただけだ」

「……そうかよ、まぁあん時のお前、本当に根暗だったもんな」

「うるせぇ」

「(……そっか、サーバルさんは、ここに居た時のマスターを知ってるんだ)」


 顔を赤くするサーバルを横目に、笑みを浮かべるアーシャを見つめる。

 隅っこで表情を曇らせる子供が昔のアーシャと考えると、フィリアは痛む胸を抑えた。


「(私が知らない時間、私の知らないマスター)」


 目に影を作ったフィリアは、昔の仲間達を思い出す。

 洗脳と施術で、自分を兵器としてしか認識していない同年代の子供達。


「(最初からただの友達、私には、ただの兵器同士の関係が、最初だった)」


 兵士や起動兵器は勿論の事、同じように強化された同年代の子供さえその手にかけた。

 同じような子供としか接した事が無い事を思い出し、フィリアはフェンスにもたれかかってしまう。


「……フィリア?」

「戦争で奪われた子供達を保護、しているんですね」

「そんな所、と言いたいが……」

「ん?」

「下手したら、あそこに居る子供達、もしくは親を焼いたのは、私達かもしれないんだ」

「……」


 光りの灯っていないアーシャの目は、冗談ではない事を物語っている。


「な、なぜ、そんな」

「……ここはヴェイザーの管轄だが、表向きには伏せられている、イメージ的な問題があってな」


 フィリアが言葉を失っていると、インターフォンが鳴る。


「すみません、オセロットです、アンジェラ先生に頼まれて来ました」

『はーい、今開けまーす』


 と言うオセロット達のやり取りに気付いたフィリアは、ゆっくりと顔を上げる。

 インターフォンで返事をした人物のおかげで校門の鍵が開き、フィリア達は招かれる。

 金属のきしむ音は校庭中に響きわたり、子供達の視線は一斉に向けられて来る。


「い」

「おし、来た来た!」


 怖気づくアーシャとは反対に、紙袋を置いたオセロットは一目散に子供達の方へ向かう。

 彼の姿に気付いたのか、多くの子供達が彼へと群がる。


「ねこのおにいちゃんとおねえちゃんだー!」

「トカゲのヒトもいるよー!」

「おーきいおねえさんもいる!」

「……私もかよ」


 隣であからさまにため息をついたアーシャは、ゆっくりと男性陣たちに続く。

 空気について行けないフィリアは、後ろで眺める。


「(……自然な笑み、楽しそうな空気)」


 オセロットに抱かれる子や、ラケルタにぶら下がる子供達。

 更に下手な空手をレッドに披露する子に、サーバルと笑い合う子供まで見受けられる。

 聞いた事の無い子供達の賑やかさに、フィリアは頬を緩ませる。


「マスターも、ここで過ごしたんですね……あれ?マスター?」

「アーシャちゃんなら、あそこだよ」

「え?」


 ケフュレスが指さす方を見ると、一か所だけ子供の山ができていた。

 少し揺れたと思うと、山は盛り上がりだす。


「ふんぬー!」

「ま、マスター!?」

「なんでいつもこうなるんだよ」


 どうやら子供に群がられていたアーシャだったらしく、立ち上がった事でクリスマスツリーのように子供達がぶら下がられている。

 初めて会った時のような嫌悪感の籠った目をしながら、子供達を一人ずつ引きはがしていく。


「あはは、アーシャちゃんにはやっぱまだ早かったかな?」

「はい、少し克服したと思っていたんですが」

「いやいや、随分進歩したよ、前だったら自分から近寄る何てこと、しなかったからね……それに、目をよく見て」

「あ……」


 艦内を案内されている時は目を合わせてくれなかったが、今は子供一人一人に目を向けている。

 その事に気付くと、一部の子供達と目が合う。


「あ!あたらしいひとかな?」

「ほんとだ!」

「あ、えっと」


 数名の子供達に囲まれたフィリアは、少し話しにとまどってしまう。

 話した事有る同年代と言えば、施術や刷り込みで感情の起伏を無くした子共位だ。

 キラキラした目の子や、活発な子と話した事は無い。


「きれいなかみだね」

「え、ええ、よく言われます」

「ねぇ、おなまえは?」

「えっと、私はG……」


 同年代と話したせいか、思わず番号で名乗りそうになった。

 だが、ここでは兵器で居る必要は無い。


「え、っと、フィリア、と言います」

「うん!よろしくね!フィリアちゃん!」

「……はい」


 複雑な気持ちになりながら、フィリアは笑みを浮かべた。

 そして、子供達を見渡していると、隙間から輪に入れていなかった子供を視認。

 その子供と目が合い、殺気のような物をぶつけられる。


「(……あの目は)」


 向けられたのは、戦場で敵に向ける目。

 まるで、昔大勢いた仲間達の内の一人を見ているようだった。

 思わず目を逸らしてしまいそうになったが、改めてその子供と目を合わせる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ