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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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お茶会 次の目的地

 目が覚めたアーシャは、ほどなくして復帰。

 スコールの生活する部屋に戻り、恒例のお茶会に参加していた。


「は~い、アーシャちゃん退院おめでと!お姉さん特性の紅茶とプリンでーす」

「……あ、ありがとう」


 いつも通り糸目の朗らかな笑みを浮かべるケフュレスから、アーシャはお茶とお菓子を受け取った。

 そして、チラリと隣に座っているフィリアへと目を向ける。


「……」

「……」


 不意に目が合うなり、アーシャは目を逸らした。

 心臓も一瞬強く打ち、顔も火照りだす。


「(くそ、話したいのに、話題が出て来ない)」


 部屋に戻ったら色々と話したいと思っていたというのに、この体たらく。

 自分のコミュニケーション能力の低さと、気の使えなさに落ち込みながら紅茶をすする。


「(言わないといけないのに、私、次は絶対に守るからって、傷つけないからって……)」


 紅茶を冷ますフリをしながら深呼吸し、アーシャは気持ちを落ち着けていく。

 いつも通り、冷静に、フィリアの頭を撫でながら言えばいい。


「(よし)」

「ところでアーシャちゃん、さっきから顔赤いけど、大丈夫?」

「ブッ!」


 ケフュレスの横やりで、折角整った覚悟は霧散。

 感情の矢印は、ケフュレスへと向かう。


「い、いきなり何だよ!?」

「いやー、ベルガスシティ行く前の時もなんかソワソワしてたしぃ、目覚めた?ねぇ目覚めた?」

「永眠させんぞ」

「あはは」


 口元を手で隠しながら徐々に接近してくるケフュレスを前に、アーシャは拳を握り締めた。

 すぐ逃げられたが、アーシャはすぐにサーバルの方を向く。


「サーバル、黙ってないで、お前もなんか言ってくれよ」

「……テメェで何とかしやがれってんだ」

「……なんか、最近冷たくね?」

「知らね」


 しかし、サーバルは顔だけでなく体まで違う方向を向けてしまう。

 彼女の様子にため息を零しながら、アーシャは席に深く座る。


「たく」

「まぁまぁ、ちょっとヤキモチ焼いちゃっただけだよね」

「や、焼いてねぇ!」


 ケフュレスに茶化され、サーバルは顔を赤くした。

 そんな彼女の様子に、アーシャは先日の一件を思い出す。


「(そういやコイツ、この前……)」


 当時は出撃命令で流れてしまったが、サーバルは明らかに何か気付いていた。


「(ま、まさか、私がロリコンに近づいたとか、変な勘違いしてんじゃないだろうな)」


 誤解されているのではないか、そんな不安を過ぎらせてしまう。

 悩んでいると、ケフュレスが口を開く。


「あーそうだフィリアちゃん、次の町に着いたら、アーシャちゃん、しばらく孤児院勤務なんだけど、貴女はどうする?」


 先ほどコマンダーからもたらされた通達を思い出し、アーシャの思考は吹き飛んだ。


「え?あ、えっと」

「……そうだった」


 返答に困るフィリアを横目に、アーシャは露骨に俯いた。

 アーシャのメイジギアは大破し、その報告書を書くついでに聞かされた一時的な転属。

 フィリアは慣れてきたが、他の子供に同じように接する事ができるか解らない。


「……さ、サポートの為に、ご同行します。私が居た方が、マスターも、あ、安心、でしょうし」


 チラチラと目を向けて来るフィリアは、自分の手同士を絡ませながら答えた。

 まるで同意を求めて来ているかのような彼女の仕草に、アーシャはカップを置く。


「あ、ああ、そうしてくれると、う、嬉しい」


 以前であれば、嫌々同行を許可していただろう。

 そんな事を思いながら、アーシャはプリンを一口食べた。


「……はい、ありがとうございます」


 その横でも、顔を赤らめたフィリアはカップで顔を隠すように紅茶をすする。

 一瞬ではあったが、フィリアの顔は朝日のように明るく見えた。

 そんな彼女の表情に胸を暖かくしたアーシャも、柔らかくほほ笑んだ。

 フィリアは置いたカップを震えながら握り、顔を俯かせてしまう。


「で、ですが、その、私、戦闘ばかりでしたので……下手にやって、傷つけてしまいそうで」


 彼女のセリフに、空気が凍り着いた。

 アーマーを展開したフィリアは、ドレイクと言う傭兵と正面から斬り合える。

 カップを強めの力で包むフィリアを前に、アーシャはほほ笑みながら口を開く。


「……大丈夫だ、基本同い年ばっかだし、それに、子供なんて怪我してナンボだ」

「……そう、でしょうか」

「お前がそれ言うか?」

「グ」


 サーバルの横槍で、アーシャの表情は崩れた。


「まぁ最初の二、三日は俺と兄貴たちも行くから、安心しな」

「……は、はい」

「……」


 サーバルの発言で、フィリアは僅かに笑顔を取り戻す。

 確かに子供好きであるオセロットの方が、孤児院での仕事に向いている事に違いは無い。

 下手をしたら、フィリアのサポートは全て彼らに頼る事になりそうだ。


「(でもこれ、下手したら、私の方がサポートされる事になりそうだな)」

「それに、あそこは基本的に身寄りのない子とか、元々少年兵だった子なんかも居るから、意外と話合うかもよー」

「そう言う問題かよ」

「(身寄りのない子供に少年兵、か)」


 改めてフィリアの方を向いたアーシャは、彼女の経歴のような物を思い出す。

 彼女の場合両方を併せ持ち、更には友好関係まで思い出せていない。


「(この子はまだ子供だ、私がサポートしてやらないとな)」


 自然とフィリアの頭に手を置いたアーシャは、フィリアが子供達と触れ合う姿を思い浮かべた。


「ん?」


 そんなアーシャを見上げるフィリアは、彼女のほほ笑んだ顔を見つめる。


「(……マスター、以前より柔らかくなった?でも、なんだろう、ちょっと、嫌だ)」


 どことなく感じる保護者のような目に、フィリアは目を曇らせた。


「(私だって、マスターを守れるのに)」


 胸から湧き出るモヤモヤを飲み込むように、フィリアは紅茶を飲み込んだ。


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