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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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心の光

 一切の視界も無く、重油のようにドロドロとした空間。

 何も聞こえず、身体は破裂しそうな苦しみに襲われる。

 また奪われてしまう位ならば、このまま弾け死んでもいいかもしれない。

 倒れたフィリアとサーバルの姿を思いだし、諦めてしまうアーシャの耳に声が入る。


『マスター!』

「ッ!?」


 その言葉と共に光が指し込み、アーシャは目を開く。


「……」


 目に入り込んで来たのは、見知った天井。

 ソウリュウに設けられている医務室の物だ。

 まだ頭はもうろうとしており、状況に目を白黒させる。


「あら、起きたのね」

「……フェル、メーラ」


 状況を飲み込もうとしているとカーテンが開き、サキュバスのフェルメーラが入って来た。

 一先ず起き上がろうと、アーシャは身体に力を入れる。


「グ!」

「こら、急に動いたら身体に障るわよ、体内の魔力が暴走してたんだから」


 全身に激痛が走ったアーシャは、フェルメーラに再度寝かされる。

 動かせる箇所を少し動かしてみると、筋肉痛のように体が痛む。


「ドクを呼んで来るわ、大人しくしてなさいよ」

「あ、ああ」


 フェルメーラはアーシャのベッドから離れ、ドクの元へと向かう。


 ――――――


 数分後、診察の為にドクが訪れ、軽い診察を開始。

 それらを終えた後で、ドクから色々説明を受ける。


「……そうか、交渉はなったのか」

「ああ、もっとも、愚連隊みたいな連中が、これで終わるとは思えんが」


 ドクの言葉に頷きながらも、今のアーシャはそんな事に興味は無かった。


「……フィリア」


 件の傭兵の事より、今の交渉の話より、彼女の安否だった。

 もう彼女の名前を呼んだだけで、胸が張り裂けそうになってしまう。


「ドク、そんな事より、フィリアは、どうなった?」

「……彼女なら心配はいらない、あれでも強化人間だ、既に完治して君の開けた穴を埋めている」

「……そうか、よかった」


 ほほ笑みながら胸に手を置いたアーシャの目から、一滴の涙が零れた。

 ドクの言葉に胸を抑える力を強めたアーシャは、自分の心音を感じ取る。

 久しぶりに運動や緊張以外で、心臓が強く打っているのが解る。

 そして、何時もより顔が熱を帯びだす事に気付く。


「……何だ?この気持ち、以前にも」


 どこか懐かしく切ない感情に、アーシャは頬を緩ませる。

 しかし、そんな事よりやりたい事があると、ドクの白衣を掴む。


「ど、ドク」

「おっと、何だ?」

「頼む、フィリアと、連絡を取らせてくれ」


 ここでは通話禁止である為、一度外に出なければならない。

 ベッドから転げ落ちそうな姿勢のアーシャの懇願に、ドクは困った顔を浮かべてしまう。


「む、無茶言わないでくれ、今の君は安静にしていないと」

「……頼む、あの子に、どうしても、一言謝りたい」

「……わ、わかった、少し待ってなさい、今車椅子を持って来る」

「……ありがとう」


 潤んだアーシャの瞳に押し負けたドクは、車椅子を用意した。

 フェルメーラの手も借りながら乗り込んだアーシャは、外へと連れ出される。

 すぐに準備していた電話を開始し、端末を耳に当てる。


「……ッ、ふぃ、フィリア?」

『ま、マスター!?起きられたんですね!!』

「あ、ああ、何とか、な」


 フィリアの声に笑みを浮かべたアーシャは、肩の力を抜いた。


「そ、その、お前も、傷は、大丈夫なのか?」

『はい、あの程度でまいるようでは、強化人間は務まりませんから』


 責めてこないフィリアに、更に胸に痛みを覚えた。

 端末を両手で包むように保持するアーシャは、電話の向こうに居るフィリアへ頭を下げる。


「……すまなかった、あの時、私がもっとしっかりしていれば」

『……そ、そんな、謝るのは、むしろこちらです、私だって、マスターを危うく死なせる所だったんですから』


 全く責めて来ないフィリアに、アーシャは歯を食いしばった。


「何で、そんなに優しいんだよ、私は、お前に酷い事ばかり言って来たんだ」

『……』


 思わず出て来た言葉は、フィリアの耳にも入っていた。

 そして、ため息のような声が入り込む。


『確かに、マスターの第一印象は最悪でした』

「ッ」

『でも、貴女は私を使い潰そうとはしなかった、私が力を見せる前にも、ちゃんと死なないように配慮していましたから』


 フィリアの言葉を聞き、アーシャは初めて会った時の事を思い出す。

 確かにケフュレスにフィリアを守る様に言ったが、少し解釈が違う。


「あ、あれは、ただ、子供に死なれたら、飯が不味くなるって、思ったからであって」

『そう言う所ですよ、貴女は、根本は悪人ではない、そんな人だから、死なせたくないと思ったんです』

「……」

『だから、マスターが暴走していた姿を見た時、このまま居なくなってしまう、それが怖かった……助けられて、本当に良かったです』

「……やっぱり」


 フィリアのおかげで、戻る事ができた。

 夢では無かった事に笑みを浮かべたアーシャは、温かくなる胸を抑える。


「やっぱり、フィリアだったのか、あの時、私を連れ戻してくれたのは」

『は、はい』

「……あの時私は、暗闇の中で死にかけている気分だった、何も聞こえないし、何も見えない、そんな中でも、フィリア、君の声だけは、聞こえたんだ」

『ッ、え、えと……あ、ありがとう、ございます』

「フィリア……私」


 フィリアの声が、少し震えているような気がした。

 そんな彼女の声を聴きながら呼吸を整えると、アーシャは再び声を発する。


「いや、いい……それじゃ、またな」

『……』

「フィリア?」

『あ、はい!』

「どうした?」

『い、いえ、ま、また』

「あ、ああ……」


 そうして、アーシャは通話を終了。

 端末をしまうと、再び胸に手を置く。

 心に灯った一筋の光が、未だに消えていない。

 幼少の頃に奪われ、もう二度と手に入らないと思っていた温かさ。


「(二度と、奪われてたまるか、あの子も、友人も……)」


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