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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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釣り餌

 ドレイクが撤退した事で安堵するフィリアは、気絶したアーシャを介護する。


「ま、マスター」


 スキャンによって命に別状がない事は解るが、魔法的な部分までは認識できない。

 それでも、最悪な結果にならなかった事に胸をなで下ろす。


「良かった……」


 だが、フィリアの脳裏にドレイクの姿が過ぎる。

 感覚をマスキングしていても、しばらくは彼の爬虫類風の瞳を忘れられそうにない。

 腹部を貫かれたのは、本当に久しぶりだった。


「フィリア、無事か?」

「あ、はい、おかげさまで」


 シュネーヴァイツから降りて来たオセロットに、フィリアは頭を下げた。

 そして、彼もアーシャの容態を診はじめる。


「全く、何したんだか」

「……ちょ、ちょっと、はい」

「……そうか、それでフィリア、お前からも血の匂いがするんだが、被弾したのか?」

「あ、はい」


 そう言いながら、フィリアは刺された部分をさする。

 おかげで、オセロットは食らいついてしまう。


「だ、大丈夫か!?どこが痛い!?すぐに医療班の所連れて行ってやるからな!!」


 目から涙を零すオセロットに言い寄られ、その勢いにフィリアは身体を震わせる。


「だ、大丈夫です!あ、頭さえ無事でしたら、死ぬ事は有りませんから!」


 何とかオセロットを引き離し、フィリアは軽く息を吐く。


「(まぁ、このアーマー脱いだら激痛走るから、しばらく脱げないんだけど)」


 納得したオセロットの横で冷や汗をかくフィリアは、早速アーシャの回収に移る。

 こんな所で寝かせていたら、本当にどうなるか解らない。


「では、私はマスターを医療班の元へ連れて行きます」

「……そうか」


 アーシャを担ぎ上げると、オセロットは目に影を落とす。

 そして何かを呟き、機体へと戻って行く。


「オセロットさんは?」

「俺は現場の整理だ、コマンダーからの指令で、交渉の席を設けなきゃだからな」

「こ、交渉」


 機体へ再度搭乗したオセロットの後ろで、フィリアは戦場を見渡す。

 ライトニングのおかげで、敵艦隊は既に沈黙している。

 あちらこちら水濡れや火災が起き、死屍累々とした地獄絵図が広がっている。


「(交渉ってか、脅迫になるだろ、クソデカ反社みたいな連中相手に)」


 ヴァイザーの兵士達は次々降伏を煽り、本当に交渉の席を設けようとしている。

 とは言え、平和にはいかないのは間違いない。


「(でも、仕掛けたのは向こうか、あの竜人の人は……引いたって事はただの雇われだろうが)」


 アーシャを運びながら分析するフィリアは、先の竜人を脳裏に過ぎらせた。

 どう考えても、彼の行動は仕事の途中放棄だ。


「(そういう作戦?それにしては、逃げた感じが強かった……彼の言う財宝と関係が有るのか?)」


 考察を巡らせるフィリアは、崩壊した艦艇の一つを目にする。

 アーシャとドレイクによって原型を失い、元々船だったと解らない。


「(アーマードナイトを使わずに、艦艇をあそこまでやれる力を持つ者……対抗策が必要だ)」

「……フィリ、ア」

「ッ、マスター?」


 足を止めて横顔へ目を向けると、まだアーシャの意識は戻っていない。

 背負う彼女に手を置きながら、フィリアは答える。


「大丈夫ですよ、私は、ここに居ます(敵の心配してる場合じゃないな)」


 周りの事に割かれていたフィリアの思考は、一瞬にして先ほどのアーシャの姿に切り替わった。

 先ほどまでのアーシャは、一目見て普通ではないとわかる位の暴れようだった。

 呆気にとられながらも、ケフュレスの説明を思い出した事で考える間も無く飛び出した。


「(貴女に死なれるのは、本意ではありません)」


 以前は拒否感をマスキングする事で、ようやく主人の為に戦えていた。

 だが、今は違う。


「(初めてだな、誰かのために、本気で行動しようと思えたのは)」


 視線を上げたフィリアは、自分達の艦を目にする。

 アーシャ達ヴェイザーの母艦であり、今のフィリアが帰る場所。


「(貴女も、あそこも、失うのは嫌だ……だからこそ、あれを使えるようにしないと、もう貴女に、あんな思いはさせない)」


 今後の戦いの対抗策を脳裏に過ぎらせながら、フィリアは歩みを進めた。


 ―――――


 その頃。

 ソウリュウの甲板に残っていたケフュレスは、辺りを見渡していた。


「うーん、流石レッド君たちだねー」


 敵対している軍艦はレッド達の手で制圧され、首謀者や幹部たちは捕縛された。

 他の敵兵士達も次々降伏し、コマンダーが交渉する為の状況を整えている。


「(後始末はコマンダーに任せて、私はあの子の方だね)」


 少し移動したケフュレスは、アーシャ達の方へと目を向ける。

 双眼鏡では無く、指で作った輪の中を覗き込む。


「……うん、やっぱりフィリアちゃんが何とかしたか」


 先ほどの二人のやり取りに熱いものを感じるも、ケフュレスはしっかりと観測する。

 能力でアーシャの魔力の巡りを視認し、ケフュレスは指を離す。


「(後数秒遅かったら、あの辺、アーシャちゃんの臓物まみれだったね)」


 体内を循環しているアーシャの魔力は、先ほどまでの不安定さは改善された。

 そして、彼女の遺伝子にまで組み込まれていた呪いは、三割ほど千切られている。


「貴女達の選択で、呪いは一部解かれた……これは、波紋になる」


 そう言ったケフュレスは、倒れるサーバルに回復魔法をかける。

 未だに気を失っているが、緑色の光に包まれたサーバルの傷は徐々に塞がっていく。


「後は、待っていればいい」


 サーバルの治療を終えたケフュレスは、座りながら空を仰ぐ。


「……餌に獲物が食いつくまで、ゆっくり休んで、アーシャちゃん」


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