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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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微睡の巨人

「これで、終わりだな」


 アーシャ達を観察する敵兵士こと、ドレイクはアゴに指を置く。

 戦意を喪失したアーシャへ近づきながら、フィリアに着けられた右腕の傷を再生させる。

 改めて刀を握り締め、座り込むアーシャの前に立つ。


「さてと……ん?」


 その瞬間、アーシャの魔力の流れに乱れを感じる。

 濁流のような魔力の流れに、ドレイクは身の毛をよだたせる。


「こ、コイツ!」


 今アーシャを殺さなければ、恐ろしい事になる。

 そんな感覚に襲われたドレイクは、すぐに刀を振り下ろす。

 白刃が頭を捉えかけた瞬間、アーシャのメイジギアが弾ける。


「グッ!?」


 アーシャの体格は徐々に大きくなり、ドレイクは刀をしっかりと構える。

 メイジギアは崩れ落ち、インナースーツだけの姿となった。


「その力……」


 思考を巡らせていると、倍の身長となったアーシャが目の前に居た。


「ッ!」


 そして、自身の艦を破壊しかねない一撃が放たれ、ドレイクはギリギリで回避。

 甲板は潰れ、今のアーシャよりも大きな穴が開いた。


「その力は弱点だぞ」


 刀に紫電を纏わせたドレイクは、アーシャの首目掛けて刀を振り抜く。

 しかし、その一撃はアーシャの巨大な手で阻まれる。


「何!?」


 間髪入れる事なくアーシャの蹴りが放たれ、その一撃を左腕で受け止める。


「グォ!」


 衝撃で左腕を破裂させたドレイクは、遠くに展開していた味方艦へ突っ込む。

 装甲を貫き、クッションとなった備品をぶちまける。


「……全く」


 体とメイジギアを汚す備品たちを退けながら立ち上がると、炸裂音のような物が響き渡る。

 視線を上げてみると、そこには前髪で目の隠れたアーシャが立っていた。

 彼女を前にしながら、刀身に着いたアーシャの血を舐める。


「そういう、事か」


 血の味をみたドレイクは、再びアーシャを睨みつける。

 今の彼女の目は、ドレイクにしか見ていない。

 ドレイクの経験では、未熟なタイタンがよく浮かべてしまう目だ。


「(まさか、過去の盟約を守る事となるとは!)」


 全身と刀に紫電を纏わせたドレイクは、再びアーシャと衝突する。

 その衝撃によって区画を遮る隔壁さえも押しつぶし、備品程度は消し飛んだ。

 切り返したドレイクは、備品の一つのトマトソースをアーシャの目に投げつける。

 視界を遮られたアーシャを踏み台に、ドレイクは飛び上がる。


「これで」


 空中に上がったドレイクは、体内に魔力を集中させた。

 竜人族特有の器官をコイルとし、電撃の出力を向上させる。


「吹き飛べ!!」


 収束したエネルギーの全てを口から吐き出し、アーシャへ向けて放った。

 その余波で、突っ込んだ艦艇の全電子機器が破裂し、シャットアウトする。

 船底さえぶち抜き、地面に大穴を開けた。


「はぁ、はぁ」


 肩で息をするドレイクは、自分で形成したクレーターの上に降りる。


「……お、おいおい」


 舞い上がる爆炎の中より、アーシャの拳が出現。

 半身全てを捉える程の拳を受け、ドレイクは後方へと吹き飛んだ。

 後方にある壁や装甲の全てを貫き、地面に何度もバウンドしてようやく止まった。


「グ、ガハッ!あ、グ……本気だった」


 血を吐き出しながら立ち上がったドレイクは、かすむ視界でアーシャを捉える。

 ゆっくりと歩きながら近づいて来る彼女を見て、ドレイクは笑みを浮かべた。


「怒りだけで、これか」


 重たい一歩を踏みしめるアーシャを前にしながら、ドレイクはほほ笑む。


「……制御しきれば、魔王幹部クラスだ」


 何時しかアーシャは目の前に佇み、ドレイクは力無く彼女を見上げる。


「……惜しいな」


 振り上げられた拳に、ドレイクは半ば諦めながら俯いた。

 しかし、その拳はドレイクの真横に命中し、衝撃でドレイクは砂と共に巻き上げられる。


「ヌオっ!?な、何が」


 見上げると、そこにはアーシャの肩に跨るフィリアの存在があった。


「お、お前は」

「アンタの為じゃ、ない!」


 復活したフィリアは私物のライフルをアーシャに噛ませ、無理矢理姿勢を変えている。

 今にも振り払われそうだが、足をアーシャの首に絡めて堪える。


「マスター、私は無事です!!」

「ウー!」


 フィリアの脳裏に過ぎるのは、何時しかケフュレスに聞いた警告。

 下手をすれば、アーシャはこのまま死んでしまう。


「貴女を、死なせる訳には、行かない……」

「アー!」

「マックスさんと、合わなくて良いんですか!?」

「ッ!?」


 アーシャの耳元で叫ばれたフィリアの言葉。

 フィリア自身の胸を痛める言葉ではあったが、アーシャの動きは徐々に収まる。


「あ、ああ」


 やがてアーシャは膝から崩れ落ち、フィリアはアーマーを解除。

 痛覚抑制が途切れ、塞がりかけの傷から激痛が走る。


「グ……」


 気絶しそうな痛みに耐えるフィリアは、大人しくなったアーシャの頭を抱きしめながらそっとなでる。


「わ、私が、私が、ついています……もう、何も、怖くないですから、マスター」

「……」


 その言葉に、アーシャは静かに涙を流した。

 体格は徐々に戻り、いつもサイズで止まると、アーシャは倒れ込んだ。


「し、静めやがった」

「……はぁ、良かった、本当に、良かった」


 再びアーマーを展開したフィリアは、痛みを抑えながら眠るアーシャを撫でる。

 そして、またもや近づいて来るドレイクへ目を向ける。


「ッ……」

「いい財宝を持ったな」


 気を失ったアーシャを地面に寝かせたフィリアは、再びナイフを引き抜く。

 徐々に痛みが抑制されているが、まだ足に力が入り辛い。


「そいつの未来は、お前次第だ」


 息の詰まる空気に飲まれながら、フィリアは構える。


「これで盟約は守られた……次までに、その力を練り上げておけ」

「は?」


 その時、フィリアの後方から砲撃が放たれた。


「ッと」

『ソイツから離れやがれ!!』

「オセロットさん!」


 オセロットの攻撃を悠々と回避するドレイクは、砂を電撃で巻き上げて弾幕を防ぎ止める。


「今回は分が悪い、また会おう!」


 その際に発生した爆発と砂塵に紛れ、ドレイクは姿を消した。

 辺りを見渡したフィリアは、本当に撤退した安堵で座り込んだ。


「ふぅ……見逃してくれた、のか?」



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