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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
序章 300年目の夜明け

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夜明け 後編

 アーシャ達が作戦展開地域を飛び立ってしばらくして。

 目的地との通信が可能となり、アーシャは輸送機の無線機と同期して報告を行う。


「……はい、フィリアと言う少女は、遺跡の方で……はい、念のため医療班をお願いします、我々は予定通り帰投します」


 チラチラとフィリアを確認しながら、アーシャは医療班を要請。

 その後予定外の事態に関する報告とデータの転送は終わり、詳しいことは目的地で行う事となった。


「はい、では」

「……どうなった?」

「……とりあえず、ウチで預かる事になった、どうするかは検査後だ」

「ま、そうなるだろうな」

「ああ、コマンダーはガキに甘いからな」


 無線をきったアーシャは、深めに椅子へ腰掛けた。

 預かる事は想定内ではあるものの、アーシャとしてはさっさとオサラバしたい所だ。


「……ま、私としては、早い所孤児院送りにして欲しいが」

「けど、アイツは粒子兵器を使えるし、人殺しにも躊躇は無い……いっそ、スコールに入れるか?ウチは本来五人編成だったろ?」

「冗談じゃない、変態エルフだけでも一杯一杯だってのに、これ以上の面倒はごめんだ(けど、アイツが居れば、私の目的も)」


 サーバルのジョークに嫌な表情を浮かべたアーシャは、自分にとっての面倒の種へ視線を向ける。

 遺跡で見つけた青い髪を持つ謎の少女のフィリア。

 外が気になるという事で窓を眺めており、今の所は大人しい。

 いつもこうであればいいが、一番の面倒は今白目を向いて気絶している変態だ。


「(とりあえずまたセクハラしないように締め落としたが、できれば船に戻るまで起きるなよ)」

「どうだ?なんか見えたか?」


 気付けばサーバルは移動し、外の様子を眺めていたフィリアへと気楽に声をかけてきた。

 おかげで、黙っていたフィリアはようやく口を動かす。


「……この近辺は、もう少し自然が有った筈です、それに、魔獣や他の動物も」

「……どういう事だ?」

「計測によれば、私は五十年程眠っていたようです、ですが、こんなに変わっている何て」


 ここに居る誰でもいい、今の世界の状態を聞きたかった。

 荒れ果てた大地。

 動物の全く居ない景色。

 一体何があってこうなったのか、フィリアは開いた口が塞がらなかった。


「ご、五十年って、崩壊戦時の事言われてもな~、お前、もしかして戦争経験者か?」

「戦争、せん、そう……」


 戦争の単語を聞き、無表情気味だったフィリアの顔は徐々に険しくなっていく。

 サーバルのセリフが引き金となり、埃を被っていた記憶は呼び覚まされる。


「……」


 数多くの同類たちと共に奔走した戦場の記憶。

 世界を焼き尽くす勢いの熱気と、大量の骸、そして破壊された兵器の残骸。

 それらが脳裏を過ぎり、大事な事を思い出す。


「どうした?」


 目を見開きながら硬直するフィリアは、やがてサーバルの方へと食いかかる。


「戦争は!?戦争はどうなったんですか!?」

「え!?ちょ!」

「勝っているのは!?勝っているのはどの陣営ですか!?」

「あが!あが!あが!」


 かなり動揺するフィリアのおかげで、サーバルは質問に答えられない程の勢いで前後に揺らされてしまう。

 とても答えられそうにないので、アーシャが説明する。


「もう終わったぞ、どの陣営も共倒れでな」

「……と、共倒れ?」

「そうだ、三十年ばかり前にな」

「……そ、そんな」


 アーシャのカミングアウトで緊張の空気が流れ、フィリアはまた硬直してしまう。

 やがてサーバルを手放し、ゆっくりと仮設のシートへ腰掛ける。


「……三十年前、じゃぁ、私が今まで戦って来た意味は……同類たちは……」


 戦いも、仲間も、何もかもが過去の事。

 その現実に直面したフィリアの表情は、無表情から明らかな喪失を醸し出す。


「(平和……祖国……名誉……はは)」


 フィリアの耳に焼き付いた言葉が、何度もリピートされる。


「……ま、間もなくマザーシップです」


 何とも言えない空気の中、モンスーンの報告が耳に入る。

 操縦席から見える外の景色には、巨大な艦船が地上をゆく姿が有る。

 一隻の戦艦の両端を二隻の左右対称の空母が挟み込むような形となる大型の艦船へ、ヘリは足を着ける。


「(これが、この人達の母艦)」

「あ、着いた?」

「ああ」


 着艦の振動に合わせるようにケフュレスは目を覚まし、我先にと甲板へと飛び出す。

 空気の読めない彼女の事は置いておき、アーシャも立ち上がる。


「おい、着いたぞ」

「え、あ、はい……」


 消沈していた所をアーシャに連れられ、外で待機していた医療班へと預けられる。


「その人達の言う事、ちゃんと聞けよ」

「……はい」


 担架で運ばれていく彼女を横目に、アーシャは整備士たちと軽口を叩きながら甲板の縁へと移動していくケフュレスへ目を向ける。


「何やってんだか」


 ヘルメットを脱いだケフュレスは、草色の長い髪をかき分けながら朝日を浴びだす。

 エルフ特有の長い耳をピクピクと動かし、大きく深呼吸まで行う。

 のんびりとする彼女を格納庫へ連れて行くべく、アーシャはケフュレスの後を追う。


「……」


 光で遮られながらも僅かに見えるのは、かつて町だった思われる廃墟。

 かつて建物だったコンクリートの塊や車の残骸などの明らかな人工物は、砂に埋もれ、その一角だけを露出している。

 今の世界の一部を黙って眺めるケフュレスの後ろに、アーシャは立つ。


「おい、メイジギア返しに行くぞ」

「ん、はいは~い」


 アーシャの呼びかけに応え、ケフュレスは振り返る。

 おもむろにアーシャの後に続くも数歩で立ち止まり、閉じているように見える細い目を軽く開く。


「50年であれか……今の世界、300年前の転生勇者が見たらどう思うかね」


 そう呟いたケフュレスは、再びアーシャの後を追う。

 荒れ果てた大地を進む艦に揺られながら。



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