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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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頭目たちの会談

 ベルガスシティ中央タワー、その地下室にて。

 酒場でアーシャ達に絡んで来た男たちは、ケフュレスから拷問を受けていた。


「も、もう、かんべん、してくれ、もう、なにも、しらない」


 四肢を無くし、両眼を焼かれる。

 他にも説明するのも残酷な拷問の末に、男の思考は退行していた。


「生憎、アンタが知ってるかどうかはどうでもいい」


 全身から血を流す男の前で舌なめずりをするケフュレスは、手に持っている電動ドリルを回転させる。

 響き渡る機械音に、男の表情は歪む。


「ああああ!しらない!しらないいい!!」

「さぁ、アンタの脳内、じっくり見せてもらうよ」


 男の断末魔が地下室に響き渡り、ケフュレスは笑みを浮かべる。


 ――――――


 翌日。

 コマンダーはレイブンを連れ、領主であるウィルソンの元へと足を運んでいた。

 タワーにある専用のエレベーターの前に立った二人は、係員からの検査を受ける。


「……いつもは、普通に通すというのに」

「非常事態ですので、お許しください」

「お連れの方も、お腰の物を」

「フン」


 悪態をつくレイブンは、係員に下げていた武器を預けた。

 そして二人は探知器をくぐると、二人共アラートが鳴る。


「……体内の金属だ」

「の、ようですね、失礼いたしました」


 二人の体内に手術で使用した金属を見たスタッフは、頭を下げながらエレベーターへと通す。

 いつもより重たい空気の中でエレベーターに揺られる二人は、ようやくウィルソンの自室に到着する。


「よう、まさかこんなに早く再会できるとはな」


 二人の目に飛び込んで来たのは、サングラスをかけたダークエルフの青年。

 葉巻を手にする彼は、乱雑に煙を吐き出す。


「はぁー……と、冗談でも言いたいが……やってくれたな」

「……その事に関しては、詫びの言葉だけでは済まないな」

「ふん、まぁとりあえず座れ」

「……失礼する」


 コマンダーはウィルソンの前に座り、レイブンは護衛として後ろに立った。

 重苦しい空気の中で、二人はにらみ合う。


「そっちのエルフが情報を引き出したい、と言うから地下室を貸してやったが、血の海を作って良いとは言っていないぞ」

「……アイツは、相変わらずか」

「どう落とし前をつけてくれる?リバティフリューゲルの連中と事を構える気は無いぞ、リスクがデカすぎる」


 ウィルソンの発言を聞きながら、コマンダーはケフュレスの報告を思い出した。

 彼女はレイブンの修正に一切動じる事無く、殺した理由を告げた。

 その時の彼女の顔は、今まで見た事無い覚悟が籠っていた。


「……言い訳にはならないが、ビーキーパーズに近づく為だと」

「愛しのタイタンの為に、こちらまで巻き込むとはな」

「……だからこそ、ビジネス的な物では無く、本格的な同盟を組もうと打診した」


 そう言いながら、コマンダーは端末の画面を見せつけた。

 映されているのは、貸与できる戦力の詳細なデータ。

 それを見せられても、ウィルソンはため息と共に紫煙を吐き出す。


「それで?そっちの総戦力は多くて二個大隊が精々、こっちもかき集めて一個連隊規模だ……その程度で、最低でも七個師団を保有する連中を相手にすると?」

「……確かに、数だけ見ればどうにもならない」

「ああ、蟻と蜂が恐竜の群れに挑むような物だ」

「……だが」


 先ほどから高圧的なウィルソンを前にして、コマンダーは思考を巡らせる。


「……奴らが、たった十人の死で、全軍を動かすような義理人情に厚い奴らだったら、の話だろ?」

「その十人が幹部だったら?」

「……ケフュレスからの報告だ、奴らは下請けの下請け、小遣い稼ぎが関の山の奴らだ」

「だからそれ程戦力は送り込まない、と?」

「……ああ、それでも何かあってもおかしくない、だからこそ、お前の情報網が必要になる、そして、その情報料として、お前の命は必ず俺達が守る、それが同盟の概要だ」


 葉巻を灰皿に置いたウィルソンは、腕を組みながら考え込む。

 強気に言ったコマンダーだったが、今聞こえているのは自分の鼓動だけ。

 下請け程度にさえ強化人間兵士が配備されているのだから、本隊にはどれだけの戦力があるか解った物ではない。

 商人としてのウィルソンの持つ情報網と、彼からの融資はこれからの備えに必須だ。


「うーむ、まぁ、ウチがここまで大きくなれたのも、お前らが押し上げてくれたおかげだ」

「……では」

「なおさらダメだ」

「ッ」

「貴様!」


 ウィルソンの返答に、レイブンは前へと出ようとした。

 彼をなだめるコマンダーは、改めてウィルソンへと目を向ける。


「……どういう事だ?」

「この資料には、見返りが無い、いつもはコチラが支払う側だが、今はそっちが払うべきだろう?」

「……つまり?」

「今までに無いリスクが伴う、ウチの町全体に利益の出る見返りが欲しい」

「……いいだろう」


 ウィルソンの性格上、必ず出て来ると思ったセリフ。

 彼の要望に応えるべく、コマンダーは端末でデータを送る。

 送られたデータに、ウィルソンは笑みを浮かべた。


「ほー、これはこれは」

「……以前お前がごねた、大規模農業プラントの開拓プランだ、その技術を提供する」


 すぐに利益の出るような話では無いが、いずれの事を考えるウィルソンがずっと協力を要請していた物だ。

 ずっと足蹴にしていたが、状況が状況だ。

 おかげで、ウィルソンの顔に笑みが灯る。


「悪くはないが、得られた利益は全てこちらで頂くぞ?」

「……」

「ま、待て!以前の交渉では半分ずつだった筈だ!」


 難しい顔を浮かべたコマンダーの代わりに、後ろで見守っていたレイブンが声を上げた。

 皮膚が痺れるような威圧感に流石のウィルソンも震え上がったが、本人にも譲れない所があるようだ。


「れ、レイブン君、それはお互いに利益を得ようという話しの時だ、今は状況が違う」

「しかし!」

「……レイブン、残念ながらこっちの負けだ」

「……」


 コマンダーの静止により、レイブンは苦い顔をしながら引き下がった。


「……利益に関しては認める、だが、こちらも渡す所は渡している、せめて四割はコチラに渡して欲しい」

「……ふうーむ」

「……三割だ」

「これでは、無かった事にするしか」

「……わかった、二割でいい」


 譲歩できる所まで譲歩したコマンダーだったが、ひっそりと爪を手に食い込ませた。

 その後ろでも、レイブンは歯を食いしばった。

 それによって、ウィルソンは手を差し出す。


「……同盟の話、受け入れよう、こっちも危ないかもしれないからな」

「……感謝する」

「ただし、指揮権はコチラに譲ってもらう、そしてそっちの部隊に損害が出ても、こちらは一切賠償しない」

「……苦しいが、致し方あるまい」


 胸を痛めながらも、頭を下げたコマンダーは条件を飲んだ。


「……さて、欲しいのは、情報だったな?」

「……そうだ、奴らに関する物であれば、何でもいい」


 再び葉巻を手にしたウィルソンは、端末を操作した。

 そして数秒後、コマンダーの端末に情報が表示される。


「……これは?」

「ここ最近、こことは別の区画で見かけられている連中だ、今回でてきた強化人間と同じ奴らかまでは解らないが」

「……」


 送られたのは、戦場で撮影された複数の写真。

 画像も荒く、見切れている物も多い。

 その写真の一部には、粒子兵器の物と思われる光が見え、更にはアーシャ達の遭遇した強化人間と酷似した物が見受けられる。

 撮影日は、遠征のキッカケとなった依頼を受けてから間もない頃。

 そんなデータを送られ、コマンダーはウィルソンを睨む。


「……何故黙っていた?」

「聞かれなかったからな、それに、情報だって商品になりうる、知っているだろ?」

「(腹黒商人が)」


 鼻で笑ったコマンダーは、送られて来た全ての写真に目を通す。

 しかし、その全てにビーキーパーズに通じそうな情報は無い。


「……無駄だと思うが、ビーキーパーズの連中について、何か知らないか?」

「悪いな……と、良いたい所だが、新しい情報がある、アーシャ君には俺の町に潜んでいた連中を掃除してくれた恩もあるから、提供してやる」

「……聞かせてくれ」


 そう言いながら、ウィルソンはタワーの監視カメラの映像を提供。

 沢山の客で賑わう中で、数名の人物がピックアップされた。


「……こいつ等は?」

「ビーキーパーズとリバティフリューゲルの末端連中だ、最近、頻繁にウチのカジノに来ている」

「……と言う事は?」

「奴らには何らかの繋がりがある、ケフュレスの言う通り、リバティフリューゲルを追えば、何か掴めるかもな」

「……そうか」


 頭を抱えるコマンダーは、深呼吸をしながら思考を巡らせる。

 ウィルソンからの情報と、最近アーシャ達の前に現れる奇妙な装備の敵。

 それを頭にチラつかせ、コマンダーは身体を震わせる。


「(フィリアが来てから……)」

「おい、どうした?」

「……今まで姿一つ無かった強化人間が、次々姿を現している……どうもタイミングが良すぎると思ってな」

「虫の知らせ、ってやつか?」

「……多分な」


 体の震えを強引に止めたコマンダーは、ウィルソンとの商談を続けた。


 ――――――


 数時間後。

 話を終えたコマンダーは、レイブンと共に車で艦へ戻っていた。


「良いのか?あんな条件で」

「……気にするな、それに、同盟の話を持ち掛けられるのは、奴だけではない」

「同盟の話、まさか」

「……ああ、マキナだ、奴の協力を得る事ができれば、今回のプラントの件も、とり返せる」

「だといいが」

「……上手く行けばな」



 不安に駆られるレイブンを他所に、コマンダーは思案にふける。



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