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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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尋問

 酒場通りのど真ん中で倒れている旧型強化人間の兵士へ、フィリアは目を向けていた


「(……この施術は)」


 ゆっくりと近づくフィリアは、兵士の体を検める。

 機械でできた四肢を雑に繋げた痕や、首元に刻まれている奴隷の刻印。


「粗悪過ぎる」


 兵士の横に座るアーシャを視界に入れる。

 細めた目で兵士を見つめる彼女は、震えた手でヘルメットに手を置いている。


「……マスター」

「ッ」


 フィリアが呼ぶと、アーシャは何かを決めたようにヘルメットのロックを解除した。

 ゆっくりと兵士の頭から剥がしていき、毛髪一つ無い頭が現れる。

 代わりに頭の各所に開けられた穴からコードが伸び、じっくり観察したアーシャは深く座り込んだ。


「……はぁー、良かった、アイツじゃない」


 安堵の見える彼女の表情に、フィリアは再び兵士へと視線を落とした。


「……成程」


 そう呟いたフィリアは、兵士の側頭部に有る耳を削ぎ落した手術痕を見つけた。

 獣人種は基本的に頭頂部に耳があるので、探し人でないと解ってアーシャは安心したようだ。

 更に把握する為に、フィリアはスキャンを開始する。


「よか、た」

「ま、マスター!?」


 兵士の状態をスキャンしていると、アーシャは倒れ込んでしまう。

 彼女へ駆け寄り、すぐに容態を調べる。


「発汗量も脈も早い、そんなに動いていないのに」


 先ほど兵士に潰された腹部を中心に調べるが、あばら骨が数本折れている。

 衰弱している様子のアーシャに疑問符を浮かべていると、横からサーバルが手を伸ばす。


「……安心しろ、ただの魔力ぎれだ、安静にしていれば治る」

「……ほ、本当に大丈夫なんですか?」

「ああ、さっきコイツは魔法で攻撃していた、初めの実戦運用だったし、加減を損ねたんだろうぜ」

「そ、そうでしたか」


 素人目には重体にしか見えないが、魔法に慣れているサーバルの発言を無理矢理飲み込む。

 そうしていると、ケフュレスが拍手しながら近寄って来る。


「いやー、危なかったねー、でも、三人とも無事でなによりだよー」

「……」


 いつも通り朗らかな笑みを浮かべる彼女へ、フィリアは冷めた目を向けた。

 みんながピンチだった時に、何もしていなかった彼女に賞賛されたくない。


「ちょ、ちょっとフィリアちゃ~ん、何その目~」

「……別に」

「参戦して無かったから怒ってんだろ?」

「なーほーねー、許して、こいつ等一人も逃がしたくなかったし、あれ以上横やりも入れて欲しくなかったからね」

「……」


 そう言いながら、ケフュレスは自分の手に握られている光る鎖を軽く引いた。

 その先には、先ほどのゴロツキ達が全員巻きつけられている。

 しかも、全員アーシャに倒された時よりもボコボコにされている。

 彼女の功績を前にして、フィリアは頭を下げる。


「す、すみません」

「いーよ、実際、皆の方が大変だったし」

「……」


 胸をなでおろしたフィリアは、早速頭目らしき人物へ目を向ける。

 彼が強化人間の兵士を連れて来た所は、フィリアも見ていた。


「この人にちょっと聞きたい事があるんですが、よろしいですか?」

「ん?いいよ、でも手短にね、そろそろ治安維持部隊が来るから」


 ケフュレスの言う通り、サイレンのような物が徐々に近づいている。


「……はい」


 早めに情報を取りだそうと考えるが、先ずは面と向かって話そうとする。


「さて、質問に答えてもらえますか?あの強化人間は、どこで手に入れたんですか?」

「ケ、ガキが、調子に乗るな」

「……質問の返答以外の私語は慎んでください、もう一度聞きます、あの強化人間はどこで手に入れたんですか?」

「クク」


 やはり子供だからとなめられているのか、男は笑い出す。

 そして、笑みを浮かべたままフィリアの方を向く。


「お前のママに買ってもらったのさ」

「……不適切ですね」


 返答にため息をついたフィリアは、男の左手を掴む。

 少しずつ力を強め、男の拳を握り潰そうとする。


「……」

「グ!」


 男の左手を握る力を強めるフィリアは、徐々に指と手の骨を潰していく。

 損傷が進む度に男の目から涙が零れ落ち、首を勢いよく左右に振りだす。


「ガアアア!」

「……適切な返答を」

「う、うるせぇ!俺を道具みたいに使えると思ったら、大間違いだぞ!」


 涙目で訴えて来た男のセリフに、フィリアは強化人間の兵士をチラリと見る。


「……よくもまぁ、そんな矛盾した事を」

「黙れ、道具に道具と言って何が悪い?」

「……」

「アガッ!」


 フィリアは握る力を強め、もう片方の手で男の左手首を掴む。

 男は抵抗するが、アーマーを展開しているフィリアに敵う訳無かった。


「わ、解った!話す!話す!」

「(……さて、この痛みだけでどこまで引き出せるか)」


 返答を聞き入れたフィリアは、一旦力を弱める。


「な、何が知りたい?」

「強化人間の出所です」

「……ち、知人から譲り受けた」

「……」

「ギャアアアア!!」


 スキャンの結果で嘘と判断したフィリアは、男の手を使い物にならなくした。

 血がフィリアの白い装甲を染め、地面を濡らす。

 使えなくなった左手を手放すと、フィリアは右手に狙いをつける。


「……」


 残った右手にフィリアの手が置かれると、男は鳥肌を立たせた。


「グ……あ、アイツ自体は奴隷商から買った、手術は、仲間がやった」

「技術の出所は?」

「……し、知るか」

「(……ウソは言ってないな)では、奴隷を買ったメーカーは?」


 次の質問に答えさせるべく、フィリアは少しだけ力を入れた。

 先ほどまでより与えられる痛みは少ないが、その意図を察した男は歯を食いしばる。


「ッ!……び、ビー、キーパー、ズ」

「それって、アーシャちゃんをさらった連中かー、丁度良いね」

「……何がです?」


 首を傾げながらケフュレスの方を見ると、彼女は何とも真っ黒い笑みを浮かべた。


「……フィリアちゃん、そろそろ治安維持部隊の人達が来るから、サーバルちゃんと一緒にアーシャちゃんを運んでもらえる?」

「え?」

「頭を傷つけずに残してくれて、ありがと」


 いつもと変わらない笑み、いつもと同じ声色。

 その筈なのに、言い知れない威圧感を覚えたフィリアは男を手放す。

 代わりに、魔法で光の鎖を生成したケフュレスが男を捕まえ、口元も覆う。


「次は私がお話するね」

「……は、はい(や、殺る気だ、この人)」


 薄っすらと開かれたケフュレスの目を見たフィリアは一瞬だけ男を見ると、すぐに視界から外す。


「とりあえず治安維持部隊の人に言えば、艦に護送してもらえるだろうから、先に帰っててね」

「わ、分かりました……では、後をお願いします」

「はいはーい」


 敬礼したフィリアは、アーシャを運ぶために急ぎ足で彼女の方へ向かう。

 そして、ケフュレスはサーバルに近寄る。


「……でもこいつ等、結構厄介な連中だったよ」

「何だと?」


 小声で話すケフュレスは、懐からエンブレムの書かれたタグを取りだす。

 そのエンブレムを見たサーバルは、身を震わせながら頭の耳を逆立てた。


「おい、それ」

「さっきボコった時に見つけた」

「……巨大な翼を羽ばたかせる巨鳥、マジか」

「傭兵団の中で最大の勢力、リバティフリューゲル、まぁ傭兵団って言うよりは、戦闘狂の集まりって感じだけど」

「ああ、機体パーツ移送の護衛を依頼したら、襲撃者ごと依頼主も殺されて、護衛対象強奪された何て話しも聞くな」


 二人は大きなため息をついた。

 相手が相手のおかげで、ケフュレスも冗談を言う余裕は無かった。


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