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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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哀れな人形

「……」


深呼吸を行ったアーシャは、地面を踏みしめる。

そして、フィリアを視界の隅に捉えながら口を開く。


「フィリア」

「……はい」

「ああなった奴を治す術は、あるのか?」

「……」


先の会話のせいもあってか、表情は酷く曇らせるフィリアはゆっくり首を横に振った。

だが、今のアーシャにはそれだけで十分だ。


「解った、ありがとう」


深呼吸をして、殺せる覚悟を整えた。

戦闘を続行しようとした時、先ほどの男が声を上げる。


「何をもたもたしている!?おい!武装制限解除!そいつらを徹底的に叩きのめせ!」


その指示を聞き入れた兵士は仮面のバイザーを光らせると、ナイフと銃をしまう。


「ッ、ま、まずい!」

「フィリア!?」


フィリアも反応を示し、一足早く兵士へと接近。

即座に刃で斬り裂こうとするも、兵士は飛び上がる事でそれを回避した。


「させない!」


何かに焦るように乱射されるフィリアの拳銃は全く気に留められず、どこかからか飛んで来た金属製の箱が兵士とドッキング。

金属製の箱と四肢は展開し、徐々に鎧を形成する姿にアーシャ達は言葉を失う。


「あ……」


全体的に大型の装備を纏った兵士は着地し、陥没した地面を揺らす。

アーシャと同等の体格となった体を起こすと、火を入れられた背部の飛行ユニットが空気を震わせる。

唯一露出していた口元もマスクで覆われ、アーシャへと迫りくる。


「ッ!?」


段違いの速さを見せつけた兵士に反応しきれず、アーシャの腹部に拳が食い込む。

そのままブースターの推進力でコンクリートビルに叩きつけられ、壁に押し付けられる。


「マスター!!」

「ゴアッ!!」


息と共に内容物が口内から吹き出すアーシャは、更に地面へと叩きつけられる。


「ガアアア!!」


断末魔とも呼べる悲鳴を出すアーシャに、兵士は淡々と巨大な剣を振り上げた。

高速で振動を始めた剣は振り下ろされ、アーシャへと迫る。


「この野郎!」


直前でサーバルの魔法が兵士に直撃し、大きくノックバックした。

その間に、フィリアはアーシャを引きずって距離を取る。


「ぶ、無事ですか!?」

「無事って程じゃない、プッ」


フィリアに介助されながら立ち上がったアーシャは、口内に残った血を吐き出した。

だが、サーバルは声を荒げる。


「まだ来るぞ!」

「ッ!!」


サーバルの忠告通り、上空に上がっていた兵士は剣を振り下ろしてきた。

フィリアはアーシャを担いで距離を取るが、その衝撃で地面はめくれ上がる。

衝撃波で辺りのビルの窓ガラスが割れ、看板の類が落下する。


「この!」

「よくも!」


復帰したアーシャは、フィリアと共に兵士の飛行ユニットへ一撃を入れた。

手斧による一撃を加えたアーシャは、更に打撃を入れる。

その攻撃で飛行ユニットに亀裂は入るが、兵士は止まらずに回し蹴りを入れて来る。


「グ!」


転がったアーシャの手から、二つのピンが零れ落ちる。

すると、兵士の背中から甲高い電子音が鳴り響く。


「やっべ!」


音の正体を知るサーバルはすぐに退避するが、知らない兵士はキョロキョロと動き回る。


「フィリア!」

「ッ!」


用意したアーシャもフィリアを捕まえ、庇うように伏せて衝撃に備える。


「ッ!」


兵士の背中が一瞬光り、巨大な爆発が引きおこった。

衝撃波と破片がアーシャ達に襲い掛かり、三人そろって飛ばされてしまう。


「……つー、け、ケフュレスの野郎、威力上げやがったな?」

「どこが護身用ですか?思いっきり兵器じゃないですか」

「ケフュレスに言ってくれ」


砂を掃うアーシャは斧を構えながら立ち上がり、舞い上がる砂塵の方に意識を集中させる。


「……ッ!?」


目を見開いたアーシャに、まだ生き残っていた兵士の白刃が迫った。

ギリギリで回避すると、今の兵士の姿が映る。


「ウソだろ!?」


兵士の装備は半壊し、所々からスパークが走っている。

ダメージで動きも乱雑となり、おかげでアーシャも攻勢に出られる。

そう勘ぐっていると、ボロボロになったライフルが向けられた。


「クソ!」


先ほどより強力な粒子ビームが放たれ、すぐに回避行動をとった。


「アグ!」


その余波でインナースーツが焼けたが、代わりに相手のライフルも破損した。

勝機を見逃す事無く、アーシャは痛む体を叱咤しながら兵士へと向かう。


「ッ、やれる!」


握り締めた手斧で兵士の右腕を斬り裂いたアーシャは、もう片方の手に魔力を集中させる。

狙うのは、切り落とした事でむき出しになった右半身。

収束した魔力を撃ちだす事無く、手に形成したバスケットボールサイズの魔力の塊を押し付ける。


「おら!!」


押し付けられた魔力は爆散し、衝撃は兵士の方へと指向される。


「……はぁ、はぁ、これで」


肩で息をするアーシャは、倒れ込んだ兵士を睨む。

体と装備の節々からはスパークだけでは無く、黒煙まで上がりだしている。

そんな状態であろうと、兵士はゆっくりと立ち上がる。


「クソが」


千鳥足で近づいて来る兵士の仮面は剥がれ、虚ろな目をした素顔が現れる。

残った腕で攻撃を行うも、アーシャには当たらない。


「ッ……」


誰も居ない場所を見渡す兵士は、虚空へ無駄な攻撃を行い続ける。

そのせいで、ボロボロだった兵士の脚部は崩壊。

崩れ落ちた兵士は下半身を千切り取り、這って行動を開始する。

片手で体を引きずり、目の前に居る筈のアーシャを探す。


「(……あれが、兵器になった人間の末路か)」


その姿にアーシャは言葉を失い、攻撃すらためらってしまう。

以前までは普通の人間だった者が、命令の為にその体を削っている。

最終的に最後に残っていた兵士の前腕は崩壊、肘だけで地面をこする形となった。

胸に痛みを覚えたアーシャは、手斧を振りかぶりながら距離を詰める。


「……ッ!」


振り下ろす直前で兵士の背中に大きなスパークが走り、斧で顔を保護する。

破裂音と共に、兵士の背中は軽い爆発を起こした。

それを皮切りに、兵士は動かなくなった。


「……哀れだな」


片膝をついたアーシャは、ずっと開きっぱなしだった兵士の目を閉ざした。


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