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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
序章 300年目の夜明け

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夜明け 中編

 アーシャ達の戦いによって死屍累々とした遺跡の前にて。

 サーバルはモンスーンに回収を依頼していた。


「とりあえずモンスーンは呼んでおいた、一分ちょっとで来る筈だから、それまで待機するか」

「……ついでに、おいガキ、お前は何者だ?」

「え、えっと」


 少女への疑念を捨てきれないアーシャは、機関銃を突きつけた。

 いくら子供嫌いだからといってこの聞き方は無いと思う他二名だったが、警戒心むき出しの声色は何となく理解できる。

 それでも脅迫紛いの行為にケフュレスは感心せず、銃口を手で抑え込む。


「もうアーシャちゃん、いくら嫌いだからって子供にそんな聞き方ダメだよぉ、ここはお姉さんに任せて」

「……チ」

「さぁて、お姉さんの質問に答えてくれる?」


 アーマーを解除した少女と同じ目線に立つケフュレスの問いかけに、少女は口を開こうとしていない。

 このまま無言でおるのはマズイと判断したのか、アーシャの方を向く。


「……マスターのご命令でしたら」

「答えろ」

「……はい」


 高圧的なアーシャのセリフに俯きながらも、少女は改めてバイザーに隔てられたケフュレスと目を合わせる。

 相変わらずの態度にため息を混じらせながら、ケフュレスは質問を開始する。


「えっと、先ずは……先ず、ま、ず」


 しかし、徐々に雲行きが怪しくなってしまう。


「……はい?」

「よく見ると、凄く綺麗な鎖骨」

「ヒ!」


 妙な声のトーンと共に向けられる視線に、少女は全身の鳥肌を立たせた。

 ケフュレスより感じられる、異様な不快感に表情を歪ませてしまう。


「はいダメ!!」

「オパッツ!!」

「あ」


 変態発言一歩前のケフュレスに対し、サーバルは横からショットガンを撃ち込んだ。

 スラグ弾を受けて怯んだ彼女に蹴りを入れて吹き飛ばされる光景に目を見開く少女達は置いておき、今度はサーバルが前に立つ。


「悪いな、変な奴しか居なくて、で、お前の名前はなんだ?」

「え、あ、え、えっと、あの方は、良いんですか?」

「大丈夫だ、あいつゴキブリだから」

「せ、せめてゴキブリみたいな生命力って言って」


 ケフュレスは無視して改めて、サーバルは少女と対面する。


「さて、話を戻すか」

「……先ほど申しましたように、G7-666です」

「改めて聞くと不吉な数字だな……じゃなくて、そんな製品番号みたいな物じゃない固有名詞だ」

「……え、えっと」


 片手を頭に乗せた少女は、記憶を巡らせ始める。

 その過程で妙に苦い表情を浮かべるも、何とか名前を思い出そうとする。


「(名前、名前)」


 砂嵐や霧に包まれているかのような記憶の中、少女は確かに番号以外で呼ばれていた事を思い出す。

 前のマスター、そして友人と呼べる者達から呼ばれていた。


「あ」

「どうした?」

「ふぃり、あ」


 記憶の隅に居た誰か。

 顔すら思い出せないその人物に、何度もその単語で呼びかけられ、呼応していた。

 誰が付けてくれたかもわからないが、その名前に軽い笑みを浮かべる。


「え?」

「フィリア、それが、私の名前です」

「そうか、フィリア、俺はサーバル、で、こっちのデカ女、つまりお前のマスター?がアーシャで、この変態がケフュレスだ」

「よろしくね~、フィリアちゃ~ん」

「ッ」


 いつの間にか復活したケフュレスの姿に、フィリアは目を見開く。

 大きめの弾丸をわき腹に受けておきながらピンピンしており、笑顔で手まで振っている。

 鎧の穴と近くの血を見る限り、夢では無い筈だ。

 そんなケフュレスの姿を前に、フィリアはサーバルの事の陰へと隠れてしまう。


「……」

「あれ?嫌われちゃった?」

「……コイツになんかされたら遠慮せず俺に言えよ」

「は、はい……」


 軽く震えるフィリアは、サーバルの鎧を握り締めながら頷いた。

 それから間を置かず、フィリアは空を見上げる。


「ッ、上空に機影!」

「あ?」


 フィリアの発言に小首を傾げながらも、アーシャ達は周辺の警戒を開始。

 少し遅れたタイミングでアーシャ達も向かってくる気配を探知し、警戒を解いて行く。


「……モンスーンか」

「ああ、心配して損したぜ、大丈夫だ、あれは味方だ」

「そ、そうでしたか、すみません」

「……」


 視界に入り込んで来たのは、長方形の機体の四隅にローターを着けた基本的なヘリ。

 味方である事を改めて確認したスコールチームの面々は警戒を解くも、アーシャだけはフィリアに対する警戒を強めてしまう。


「で?結局なんなんだ?このガキは、装備も無くモンスーンの接近を感知したぞ」

「それ位俺達もできるだろ?」

「いや、コイツは機影と言った、私達と同じなら、そんな単語は使わない筈だろ?」

「そ、それは、そうだな」


 アーシャ達の能力は人を検知する物であり、機械は探知できない。

 つまりフィリアには、アーシャ達とは違う能力が備わっている事になる。

 アーシャ達の頭にそんな能力は無く、レーダーらしい物は今のフィリアには確認できない。

 余計に高圧的な態度をとるアーシャを遮るように、四人にヘリのローターが引き起こす砂嵐が襲う。


「ッ、肝心な時に」

『こちらモンスーン、降下地点に到着した、スコールチーム!無事で何よりだ!』

「はーい、みんな~、お迎えが来たよ~」

「……で?どうするんだ?隊長どの」

「……」


 砂嵐に吹かれながら、アーシャはフィリアを睨む。

 フィリア自体は気に入っていないが、武器の方は申し分ない。

 だが、武器だけ頂戴して置いて行けば後で来る依頼主の部隊に拾われ、ロクでもない事になる可能性も有る。

 不意に奴隷時代の自分を重ね、アーシャはため息交じりに連れて行く事を決定。

 今のご時世戦艦の主砲位にしか搭載できないビーム兵器が手に入ると、自分に言い聞かせながら。


「はぁ……しょうがない、連れて行く、このガキ……フィリアの報告は私がやる、サーバルとケフュレスはあのウェポンコンテナを運べ」

「はいよ」


 アーシャ達の前に降りて来た機体は、機体後方のハッチを解放。

 近未来感のある薄暗い機内、その奥にはパイロットのモンスーンが腰掛ける操縦席がチラリと見える。

 アーシャは機体へと乗り込み、フィリアもそれに続く。

 残る二人は、フィリアの武器が詰まったコンテナを機内へと運びこんでいく。

 その様子をチラチラと見ていたモンスーンは、見慣れない顔に首をかしげる。


「お、おい、誰だ?その子供」

「私が聞きたい位だが、連れて帰る事にした」

「い、良いのか?」

「こんな所に置いて行く訳にもいかないだろ、報告は私がする、後で無線を私に回してくれ」

「……解った、今回の隊長はお前だ、指示に従う」

「すまん」

「積み込み完了!モンスーン、頼む」

「あいよ、上昇開始」


 空気の吹き荒れる音を響き渡らせると、輸送機は機体を揺らし、ハッチを閉じながら飛び立つ。


「(……それにしてもこの辺、こんなに荒れてたかな?)」


 ハッチが閉まると共に、フィリアは残っている記憶と現在の景色を照らし合わせる。

 眠りにつく前は、このもう少し動物や魔獣で賑わっていた筈だと。



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