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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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探し人

 正門をくぐったアーシャ達は、早速受け付けを行うロビーへと足を踏み入れた。

 そこには彼女達以外の傭兵もおり、静かに依頼の受注等の順番待ちをしている。


「意外と静かですね、もっと騒がしいのかと」

「周り見てみろ」

「……成程」


 周りの空気を読んで小声で話すフィリアは、表にも居た警備兵の姿を数名視認した。


「うし、じゃぁ俺ら待機してっから、行ってこい」

「……やっぱ私じゃなきゃダメなのか?」


 サーバルに背中を軽く小突かれたアーシャは、あからさまに嫌そうな顔を浮かべた。

 その様子に頭を抱えたサーバルはため息をついてしまう。


「昨日ケフュレスに言われただろ?フィリアみたいな戦争奴隷を登録する場合は主人の立ち合いが一部必要なんだよ」

「……チ、解ったよ、ほら、行くぞ」

「あ、はい」


 アーシャに連れられ、フィリアは窓口へと移動。

 スタッフさんから渡された書類を記入しつつ、その項目を確認していく。


「(名前、所属、種族……強化人間かどうかの欄は無いか)」


 書類の記入を終えると、次は整理券を手渡された。

 後は時間になるまで待つだけだが、その間にフィリアはアーシャの方へ向く。


「あの、マスター」

「何だ?」

「この時代、強化人間は、居ないんですよね?」

「まぁな、お前が来るまで、私とサーバルは存在すら知らなかった」

「……」


 アーシャからの返答に、フィリアは表情に影を落とした。


「どうした?」

「あの警備員、動きから見るに、強化人間か、アンドロイドに近い物かと」

「……そうか、エターナルだったら、その手の技術も独占してておかしくないか、けど、それがどうしたんだ?」


 アーシャからの言葉で、フィリアは先日の事を思い出す。

 顔も声も思い出す事のできないほど、朧気な記憶の中に居る仲間の影。

 手を取り合い、そして身を寄せ合った仲間。

 会えるのであれば、もう一度会ってみたかった。


「……もしかしたら、私の昔の仲間がこのエターナルか、あるいは、別の傭兵団に所属している可能性がありまして」

「……」


 フィリアの発言に、アーシャは言葉を失った。

 表情から寂しさを感じ取ったアーシャは、自分と境遇を重ねてしまう。


「(そうか、コイツも、私と同じ)」


 胸に痛みを覚えたアーシャは、とある事を思い出す。


「……こっちに来な(昨日の借りも返してやるか、返せるかはともかく)」

「え?」


 道中でサーバル達にどこに行くか伝えたアーシャは、目的の場所へとフィリアを連れて行く。


「……コイツだ」

「……QRコード?」

「ああ、アクセスしてみろ」

「は、はい」


 アーシャの指さしたQRコードをスキャンしたフィリアは、早速その先に有るサイトへアクセス。

 すると、名前やアルファベット等が大量に表示される。


「……あ、あの、これは」

「……エターナルに登録してる傭兵の名前とランクだ、そこに、お前の友人の名前が有るかもな」

「あ、ありがとうござい、ま、す……」

「まぁ、見つかるかはさておきな」


 アーシャも携帯を使って、フィリアも見ているサイトと同じ物を閲覧する。

 電話帳のような名前の数々のおかげで、フィリアの言葉がぎこちなくなった理由を改めて認識した。


「な、何ですか、この登録人数」

「ああ、一応ランクと名前の五十音で絞込みはできるが……お前の友人が本名で登録してるとも限らないしな」

「……じ、時間がある時に、探してみます」


 アーシャから辛い現実を叩きつけられた事で、やはりフィリアは落ち込んでしまう。


「……はぁ(めんどくさいな)」


 そんな事を思うアーシャだったが、近くの自販機で缶コーラを二本購入。

 その内の一本を、フィリアへと差し出す。


「ほら、これでも飲め」

「ッ、あ、ありがとう、ございます」


 すぐに栓を開けたアーシャは、フィリアの横で中身をグビグビと飲みだす。

 フィリアもアーシャのマネをして、チビチビと飲み始める。


「(全く、面倒かけさせやがって……)」


 内心ではそう思いつつ、美味しそうにコーラを飲むフィリアを見て軽い笑みを浮かべるアーシャだった。


「……でもまぁ、気持ちは解らなくない」

「え?」

「私も探してるんだよ、捕まった時に、離れ離れになった、友人の事」

「……ま、マスターも」


 目を丸めるフィリアの言葉に、アーシャは静かに頷いた。

 そして脳裏に過ぎらせてしまう、探している友人達と共に野原を駆け巡った日々。

 狼の耳と尻尾を持った友人の事を思い出し、思わずその名前を口にする。


「……マックス」


 コーラを傾けつつ、アーシャはダメ元でその名前を探し始めてしまう。

 友人の特徴である種族と名前を入力するも、ヒットする条件はいくつもある。


「……マックス、さん、ありふれた名前のせいでしょうか、やはり人数は多いですね」

「ああ、しかもアイツは狼人族だ、描人族と並んで絶対数が多い……て、私じゃなくて、お前の友人はどんな奴なんだ?」

「え、えっと……すみません、肌が褐色だった事以外、覚えてないんです」

「そうか……まぁ、頑張れよ」


 無意識にフィリアへと手を伸ばすアーシャは、その途中で手をひっこめた。


「(私、今、何をしようとした?)」

「……ですが、何故、私にそんな」

「(……確かに、何でだ?)」


 フィリアの言葉に、アーシャは首を傾げてしまう。

 本来であれば、フィリアに話すような事ではない。

 またもや頭がこんがらがり始めた所で、館内アナウンスが響きだす。


『登録希望者方へご連絡いたします、試験開始時刻となりましたので会場へお越しください』

「あ、よ、呼ばれたな、ほら、行くぞ」

「え、ちょ、あの」


 完全に話をはぐらかしたアーシャは、フィリアの手を引っ張って会場へと向かう。


「(別に、コイツに共感したからじゃ、ない)」


 そう自分に言い聞かせながら、アーシャは目的地への足を速めた。

 その道中で、アーシャは傭兵団の広告が流れるモニターを横切る。


「ん?」


 終わり部分を一瞬目にしただけだったが、特徴的な企業ロゴはしっかり目に入り込んだ。

 蜂の巣を模ったような、八角形のマーク。

 おかげで、アーシャは顔に大量の血管を浮かべた。


「あのクズ野郎共、まだ」

「ま、マスター?ッ」


 息も荒くするアーシャは、知らずの内にフィリアの腕を握る力を強めてしまう。

 痛みで片目を閉じるフィリアに気付く事無く、アーシャは息を荒くする。


「(……浮かれていた、こんな事している場合じゃない)」



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