ベルガスシティ
翌日。
出発したアーシャ達は早速町内へと入り、艦の外に出られた解放感を謳歌していた。
その傍らで、フィリアは開いた口を塞げずにいた。
「……思ったより普通ですね」
壁の内側は現代社会その物と呼べる物が広がり、それなりのビル群が立ち並んでいる。
装甲車が乗用車気取りで走っている所に目を瞑れば、町の様子はフィリアの記憶と大差ない。
特に目に着くのは、町の中央部分にそびえ立っている巨大な塔と呼べる物だ。
「ですが、あの塔は、一体」
「ベルガスタワー、この辺りの領主、ウィルソンの自宅でも有る、まぁウチのお得意様だ、警戒する事は無い……」
一緒に塔を見上げたインナースーツ姿のアーシャは、簡単に塔の事を説明した。
そして覇気も無くあくびするアーシャの姿に、フィリアは昨日の事を思い出してふくれっ面を浮かべてしまう。
「(昨日結局添い寝させてもらえなかったし、また不眠症か?)」
「おい、あっちはコマンダーたちの行く場所だ、俺達は先ず、エターナルの支部だ」
「あ、そうでしたね」
塔にばかり気を取られていたが、ドクロ中心の私服を着るサーバルに諭された二人は移動を再開した。
その道中で、フィリアは辺りを見渡す。
「賑わってますね(やけにコーラの広告が多い気がするけど)」
「それに、ここは私達の協力のおかげで、他と比べると比較的治安はいいからねー」
「……治安、ですか」
チューブトップ姿のケフュレスが自信満々治安の良さを語ったが、先ほどからずっと無視していた音にフィリアは耳をすませる。
人の賑わいや、車のエンジン音に混ざって、確かに銃声が混じっている。
「……先ほどから花火大会並に銃声が響いてますけど?」
「あー、どっかで抗争してるのかなー?まぁ気にしないでも、十分位で治安維持部隊が駆けつけて来るよ」
「ッ」
のほほんと銃声の原因を解説するケフュレスとは裏腹に、銃声はますます激化してフィリアは耳を塞いでしまう。
オマケに、目の前の通りからロケット弾らしき物が横切った。
どこかに着弾したのか爆炎と煙が轟音と共に現れ、その一部を浴びるフィリアは真顔となる。
「……治安のいい住みよい街ですねー」
「これでも良い方なんだよ、ほんとだよ?」
「……はい(もうこれ以上空気が良くなる事無いな)」
顔をひきつらせたフィリアは、力無く返事した。
そんなやり取りをする彼女達の後ろで、アーシャとサーバルは明後日の方を向いていた。
「……つけられてんな」
「ああ、ま、喧嘩なら喜んで買ってやるさ」
「だな」
「二人共!行くよー!」
「……ん、あ、ああ、解った」
ケフュレスに呼ばれた二人は、さっさと移動を開始する。
――――――
銃声が聞こえなく成程歩いたアーシャ達は、最初の目的地に到着。
不気味な雰囲気を醸し出す無機質なビルの正門をくぐり、庭の中に入り込むなり、ケフュレスはビルを仰ぎ見る。
「さぁて着いたね~、懐かしいな~、私もアーシャちゃん達の手を引きながら連れて来たな~、あのプニプニで柔らかくて、力を入れたら折れちゃいそうな手と腕、もう一度味わいたいな~」
「……今なら後頭部に銃弾撃ち込めますよ」
「流石のアイツも頭やられたら復活できないから気を付けろよ」
フィリアのケフュレス暗殺を退くと、四人はビルへ入るべく自動ドアをくぐる。
その際すれ違った警備員二人に、フィリアは目を奪われる。
「(……あの見張り、随分ゴツイな)」
警備兵と思われる黒ずくめの人物にすれ違ったフィリアは、彼らの装備に目を向けた。
メイジギアの代わりに黒い防弾コートを着用し、大型のショットガンまで装備している。
顔はヘルメットで覆われ、人なのかどうかさえ疑わしい。
「(全員体格が同じ?装備のせいでそう見えるだけか?てか、装備が武器の知識聞きかじった人が考えたみたいな奴だな)」
「あまりジロジロ見るな、下手したら警告無しでミンチだ」
「……本当に警備兵なんですか?」
「さぁな」
警告無しでミンチ、その事に軽く身を震わせながら、フィリアはアーシャ達と共にビル内部へと入り込む。
その瞬間、両サイドの警備兵二人が発砲する。
「何だッ!?」
フィリアは咄嗟にアーマーを展開し、アーシャ達も武器を構えた。
しかし、もう彼女達が手を下す必要はない。
「……ほ、本当に、容赦無いですね」
「……言ったろ……てか、アイツ等、さっきまで私達の事つけ狙ってた奴じゃねぇか」
「ああ、ここ入った瞬間狙うとか、馬鹿なヒットマンだぜ」
彼女達の目に入り込んで来たのは、本当にミンチにされたスーツ姿の武装した人物数名。
呆気に取られていると、硝煙のたつ銃を構える警備兵の一人が話しかけて来る。
『お騒がせいたしました、こちらで対処いたしますので、傭兵の皆様は、ご心配なくお入りください』
ボイスチェンジャーを使っているのか、機械的な声が耳に入り込む。
おかげで、性別やどんな感情を抱いているのかさえ解らない。
「は、はい」
警備兵の一人は無線で誰かに連絡をとりながら、淡々と死体の方へと向かっていった。
彼の姿を横目に、フィリアは昔の記憶を脳裏に過ぎらせる。
「(今の感じ、まるで、私達強化人間……まさかな)」
一抹の不安を感じながらも、フィリアはアーシャ達の後に続いて行く。




