町へ行くために
キャパオーバーで気絶したアーシャは、五分程で復活。
その後、四人は改めて部屋の中央のテーブルに座った。
「どう?頭しっかりしてる?」
「ああ、何とか……けど私が、フィリアに惑わされる何て」
復活したのはいいものの、アーシャは頭を抱え込んでいた。
彼女のそんな姿に、ケフュレスはため息交じりに言葉を発する。
「うーん、明日はお休み貰えたから、べルガスシティでするショッピングの予定とか決める為にお茶会開いたんだけど、これは予想外だねー」
露骨に落ち込んでしまっているアーシャの姿に、ケフュレスとサーバルは冷や汗をかいてしまう。
そんな二人の姿に、フィリアまで顔を俯かせた。
「……私、余計な事してしまいましたね」
「いやいや!そもそも私が推奨したんだから!私の責任だって!フィリアちゃんのせいじゃないよ!!」
「原因お前かよ!!」
ケフュレスが白状した次の瞬間、室内に落雷のような音が響き渡る。
「……テメェの入れ知恵か、クソが」
復活したアーシャの一撃で壁に叩きつけられ、ケフュレスは意識を手放した。
そんな彼女を尻目に、アーシャはフィリアの方を向く。
「やれやれ、昨夜のあれはアイツの入れ知恵か」
「え」
「上手く行きすぎてると思った」
「あ、あの(……私が考えた奴なんだけど)」
ケフュレスの入れ知恵だったと知ったせいなのか、アーシャの顔から曇りが晴れた。
しかし、逆にフィリアの表情に影が落ちてしまう。
「……わ、私が、考えたのに」
頬を少し膨らませたフィリアを無視するかのように、アーシャはロッカーへカバンを取りに行く。
そして、ロッカーの中を漁るアーシャは、少し息を乱していた。
「(そうだ、そうに決まっている、でもないと、私が……あんなに、動揺する訳ない)」
昨晩の事を思い出したアーシャは、カバンを強めに握り締めた。
息も更に乱れ、またホホに火照りを感じ出す。
「(もしそうだったら、私、チョロすぎるだろ)」
フィリアだけの力ではないと言い聞かせるも、やはり昨晩の温もりは身体から消える事は無い。
それを誤魔化すように、アーシャはカバンを持ってテーブルに戻る。
そんなアーシャの姿を横目に、サーバルはフィリアの様子に気付く。
「……どうした?フィリア」
「……いえ、別に(考えてもみれば、マスターって変に頑固な所があるし、私が言っても無駄か)」
持って来たバッグをテーブルの下へ雑に置いたアーシャを横目に、フィリアは先程の言葉を無理矢理飲み込んだ。
まだ心にモヤモヤを残していると、ケフュレスはホホをさすりながら復活する。
「あたたー、もうアーシャちゃん、強く殴り過ぎ」
「ケフュレスも復活したし、予定通り明日の予定でも確認するぞ」
「だな」
相変わらず即行復活したケフュレスは、アーシャ達と共に食器類を片付けだす。
まっさらとなったテーブルに、下に置いていたバッグの中をぶちまける。
その中身に、フィリアは言葉を失う。
「……え」
「よし、じゃあ、明日の予定としては、朝ご飯食べた後に、フィリアちゃんの傭兵登録だね」
普通に話を始めたケフュレス達は、アーシャがぶちまけたバッグの中身を手にする。
中身は、アーシャ達がプライベート様にと購入した銃器や弾丸だ。
「そしたら、買い物に」
「……あの、話の腰を折るようですが、すみません、一つ聞かせてください」
異様過ぎる光景に、フィリアは手を上げた。
「ん?なんだ?」
「えっと、ショッピング、というお話ですが……お、押し込み強盗では、ないですよね?」
「ああ、ちょっとセール品とか見に行ったり、お前の服見に行ったりな」
ケフュレスの質問に対し、サーバルはショットガンに弾丸を込めながら答えた。
明らかに買い物に行こう、と言う雰囲気ではない。
「……セールって、全品百パーセントオフセールですか?」
「いや、ちゃんとしたセールだ」
「あ、もしかして、この銃で勘違いしちゃった?大丈夫、ただの護身用だよ」
ケフュレスは朗らかな笑みで誤解を解こうとして来たが、フィリアは怪しむように並べられている武器の一つを手に取った。
「……手榴弾が必要な護身とは?」
フィリアの手に握られたのは、小さなパイナップルのような見た目の手榴弾。
明らかに護身の域を超えた威力の武器を見せつけるも、ケフュレスに没収される。
「はいはい、これは手榴弾じゃなくて、パイナップル型防犯ブザーだから、心配ないよ」
「何でそんなややこしい見た目に」
「ああ、ピン抜くとちゃんとデカい音が鳴る」
「そんで、直径三メートルが焼け野原」
「要するに爆弾ですよね!誰ですか!?これ作ったの!!」
サーバルとアーシャは、ケフュレスの事同時に指さした。
意外な人選に、フィリアは目を丸める。
「え、えー」
「あはは、私手先は器用だからねー」
「それよりフィリア、お前もこれ位持っておけ」
「……え、あ、はい」
腑に落ちない事に表情を歪ませながら、フィリアはアーシャから小さな拳銃を受け取った。
それを弄るフィリアを見て、ケフュレスはアーシャの方へ詰め寄る。
「あらあらー、自分の愛用品渡しちゃうなんて、お優しいねー」
「う、うっせぇ、だいいち、あれは予備だ」
「でも自腹で買った奴だよねー」
「……チ」
「(……マスターの)」
改めて渡された拳銃を見てみると、それなりに年期は入っているものの、手入れは行き届いている。
笑みを浮かべたフィリアは、拳銃をしっかり握る。
「……ちゃんと壊さずにお返しします」
「……あ、ああ、そうだ、もし壊したら溶鉱炉に叩きこむからな」
「はい、気を付けます」
ばつが悪そうな顔をするアーシャはフィリアから背を向け、後頭部をかきむしりだす。
冗談交じりのアーシャの言葉に、フィリアは笑みを浮かべた。
「……ッ、と、とにかく!明日お前の服が買いに行くんだ、サーバル!それまでお前の奴貸してやれよ!」
「ああ、そうだったな」
誤魔化したアーシャはサーバルに頼み、未だに病人服姿のフィリア用の服を準備してもらう。
種族こそ違うが幸い二人の身長や体格は近く、服の用意等は予め決まっていた。
その事を思い出したサーバルは自分のバッグを漁りだし、彼女の姿を横目にフィリアはアーシャの方を向く。
「……ですが、私が普通の服を持っても良いんでしょうか?」
「何だ、またその話か?こういう時、サーバルに毎回借りる訳にもいかないし、何より」
「よし、これで良いだろ?」
明日フィリアが着る為に、サーバルが用意した服がフィリアの目に飛び込む。
黒中心に、大きなドクロがプリントされたシャツ。
しかも身に着ける物全てにドクロと鎖が描かれており、フィリアは硬直してしまう。
「ああいうのばかりになるぞ」
「……分かりました、明日ちゃんと買いに行きます(だ、ダサい)」
僅かに早口になったフィリアは、先ほどまで考えていた事を全て撤回した。
「よろしい」
「じゃ、改めて、どのお店に行くか、とか決めよっか」
「おーい、俺の話無視か?テメェら」
そして、当初の予定であった町での予定作りがようやく始まった。
その中で、フィリアは今の空気に頬を緩める。
「(……平和だなー)」




