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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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魔法の教育者 前編

 

「ん~、いいねぇ」


 勝利の美酒に酔い浸るレッドは、艦の上から戦場を眺めていた。

 ベルガスシティを襲撃した艦隊は、ヴェイザーの介入によって壊滅。

 残存戦力は町から出撃した航空戦力によって排除され、生き残りは敗走か捕縛されている。


『おい、何時までそうしている、さっさと撤収するぞ』

「オセロットか、ああ、そうだな」


 オセロットからの無線を聞き入れたレッドは、さっそく操縦桿を動かす。


「ん?」

『おい、どうした?』

「あー、ちょっと、操縦系統が死んだかも(ケフュレスの言う通り、無茶は禁物だったな)」


 しかし、敵タイタンバスターを破壊する際の無理が祟ったのか、機体は操作を受け付けない。

 それどころか、折角新調した剣がボッキリと折れてしまう。


「え?ちょ、ウソだろ!?」

『何やってんだよお前は!?』


 ――――――


 同時刻。

 周囲の隊員達が負傷兵の回収や、敵部隊の捕縛に専念している中。

 フィリアはレッド達の戦いに目を見張っていた。


「……まさか、こんな事が」


 嗅ぎ慣れた埃っぽい焦げ臭さと異臭が漂って来る中、フィリアは死体や兵器の残骸を踏みながら敵艦三隻を視界に収めていた。

 ライトニング達の戦う様子は興味があり、戦闘を行いながらデータを収集していた。


「(アーマードナイトで、タイタンバスターを破壊するなんて、それに、あの人達まで魔法を)」


 厳密には、彼らも魔法を扱える事自体は予想していた。

 だが、破壊力と規模はサーバルの物と比較にならない。

 感情がマスキングされていなかったら、今頃データを取る事さえ忘れていただろう。


「(精鋭と呼ばれる訳だな、あの変態エルフはまだ未知数だが、皆私の時代より魔法技術が高い……ん?)」


 視界に五人の戦う映像を同時に流していると、フィリアはとある事に気付く。

 その疑念を確信に変えるべく、アーシャの戦闘データを中心に解析する。

 他の隊員達より肉体派な戦闘のせいでバイオレンスな映像が流れ、彼女の周囲は死屍累々としている。

 だが、彼女だけは目立った魔法を使っていないのだ。


「(マスターだけ魔法を使っていない?使う必要が無かったのか?いや、サーバルさんは積極的に使っていた、ファイトスタイルの差か?)」


 産まれた疑問の仮説を立てつつ、フィリアは順次視界に映る映像を消していきながら同じ部隊の面々と合流する。


「ウホォー!さっすが兄貴だぜ!」

「……」


 空薬莢や鉄の棺桶となった機体達を地面にしながら並んでいるアーシャとサーバルの二人は、敵艦を破壊したライトニング面々を眺めていた。

 子供のように興奮するサーバルと、大人しく武器を下ろしているアーシャ。

 ヘルメットで顔を見せていなくても、二人の反応と抱いた感情は正反対のようだ。

 特にアーシャは自らの握力で破裂しかねない程拳を握り締めており、フィリアは彼女から劣等感のような物を感じ取ってしまう。


「(……まさか、彼女は)」


 嫌な予感を過ぎらせるフィリアに、ソウリュウからの通信が入る。

 視界に〈音声のみ〉を意味する文字が映し出され、それに続いて通信相手の声がフィリアの鼓膜を直接刺激する。


『……無事に生き延びたようでなによりだな、これが、俺達の戦いだ』

「こ、コマンダー、あ、はい、驚きの連続でした」

『……そうか、今日は、戻って休め』

「は、はい」


 返事をする少し前のタイミングで、コマンダーからの通信は途切れてしまう。

 付け入る隙の無い彼に距離を感じながらも、フィリアは改めて二人の方を向く。


「つけ入る隙無いな……あの、マスター」

「……」

「……あ」

「あ、おい!アーシャ!この子を……アイツ、なんか呟いてたし、またヒステリーか?」


 フィリアはアーシャに魔法の事を聞こうとしたが、彼女はフィリアの呼びかけを無視するように装甲車の方へ帰投していく。

 彼女の態度に、しょうがないと言いたげに、サーバルは腰に両腕を置いた。


「えっと……何時もの事なんですか?」

「ああ、困ったもんだよ、隊長が打たれ弱いってのは」

「……打たれ弱い」


 重たい足取りで装甲車へ向かうアーシャへ視線を移したフィリアは、彼女の背中から悲しさを感じ取る。

 その気配のおかげで、フィリアは先ほどの仮説に確証を得た。


「その、彼女まさか、魔法が……」

「……ああ、気づいたか、アイツ、身体強化以外はからっきしでな、俺らみたいに斬撃飛ばしたり、魔法撃ったりなんて事はできなくてな(まぁ、最近ちょっとできるようになって……きてるか?)」

「……やはり、彼女の抱いていた感情は……劣等感、でしたか」


 手を振るのを止めたサーバルの解説を受けたフィリアは、ライトニング達の居る方へと目を向けた。

 一振りで艦を両断し、一突きで艦橋だけを正確に貫き、岩石を操る事で艦をボコボコにする面々。

 魔法が使えるかどうか以前に、これだけ力の差を見せつけられれば誰でも劣等感を覚える。


「……ですが、彼らを見ていると、そんな事を考えてしまいますね」

「……あ、兄貴たちと比べる事は無いさ、俺らより長く戦場に居るし、才能の差ってのも有るしな、特に魔法に関しては」


 同じように劣等感を抱いたと思われたのか、サーバルは少し早口でフォローを入れて来た。


「そ、そうなんですね」

「らしい、まぁそう言う奴には変人が多いみたいな話はあるけど、ケフュレスとかそうだろ?」

「ええ……あ、まさか、お兄さん達もですか?」

「兄貴はそんな変じゃねぇよ、追剥時代からずっと一緒に居たんだ、断言してやる」

「(……しれっと凄い事言ったな)」


 魔法の才能が有る者は変人、変態エルフを脳裏に過ぎらせたフィリアは何となくオセロットたちへと通信を繋げた。

 大気中の粒子濃度が下がって来たのでギリギリ繋がり、オセロットの声が二人の通信機より発せられる。


『全く、どこまで馬鹿なんだよお前は!早くしろ!愛しい妹がお待ちかねなんだよ!』

「……」

「……そ、それ程変じゃない」

「で、ですよね」


 変人では無くただの愛妹を心配する良いお兄さんである、と言う考えに無理矢理帰結したフィリアは通信を遮断。

 撤収の為に装甲車へ向かう前に、フィリアはとある疑問を解消しておく事にした。

 何しろフィリアの時代では既にロストテクノロジーとなっている魔法がこの部隊で運用されているという事は、誰かに教わっているという事だ。


「……それで、そう言った事は誰に教わったんですか?」

「……」

「さ、サーバルさん?」


 しかし、その質問にサーバルは硬直してしまった。

 変な事を聞いてしまった気になりながら、フィリアはおどおどしながら彼女の前に立つ。


「あ、あの、変な事聞いてしまいましたら、その」

「あいや、そうじゃなくてだな」


 視線を逸らしたサーバルは、煮え切らない様子でフィリアの質問に答える。


「け、ケフュレス、なんだよ……信じられないかもしれないけど」

「え」

「だから、ケフュレスが教えたんだよ、俺ら全員に」

「……」


 フィリアの中の要注意不審人物の名前が耳に入り、フィリアは硬直してしまった。

 マスキングさえ貫く驚きと意外性によって。


「……あ、あんな人が」

「まぁ、そう思うよな、けど事実だ、エルフってのもあるが、魔法に関して、アイツの右に出る奴を俺は知らねぇ」


 にわかに信じられないが、サーバルが今そんな嘘を言う理由も無い。

 飲み込み辛くとも、ここは信じるしか無かった。


「全員アイツから魔法を教わった、レッドも兄貴もラケルタも、俺も、アーシャもな……それより撤収だ、今日はゆっくりしようぜ」

「は、はい」


 一緒に撤収するフィリアは、サーバルの言葉を聞き入れながら考えをまとめだす。


「(……マスターは劣等感を抱いている、そして、彼女に従者として隷属している私は、彼女の望みにも応える必要がある)」


 隷属の証でもあるチョーカーに手をふれたフィリアは、自身の役割を思い返した。


「(……戻ったら、彼女に聞いてみるか、どんな力を求めているのか、あと、どんな理由で力を求めているのか)」


 知らない事に対してどれだけ力になれるか解らないが、役に立て、というアーシャからの指令に従う。

 その為であれば、フィリアはどんな事でもするつもりだった。

 それが、フィリアに刻まれた役割だ。


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