ライトニングチーム 後編
敵性タイタンバスターを前にしたオセロットはライフルを捨て、剣と盾だけで対峙していた。
『……敵性AK確認、この私に対して単機で来るとは、随分と命知らずだな!』
レッドが前にした敵タイタンバスターは、装備していたロケットランチャーを放棄。
代わりに、妖しい輝きを放つ剣を構える。
「ああ!俺はバカ騒ぎが好きでね、特に、お前みたいに、強い武器持ってるだけでいい気になってる奴ぶっ潰すのは大好きだ!」
『そうか、潰すのが好きなら、潰されてみろ!』
挑発に乗った敵機体は、より妖しく輝いた大型剣を振り下ろした。
「おっと!」
大振りな攻撃に反応したレッドは即座に回避。
刃は向こうの護衛対象である筈の甲板へ深々と突き刺さり、レッドは笑みを浮かべる。
「なッ!?」
一瞬紫色に光った剣に反応したレッドは、更に距離を取った。
次の瞬間、剣から大量の魔力が放出される。
魔力は斬撃として、甲板と地面を砕きながら直進して行った。
「……あらら~、凄いなこれ」
『はーっ!はっ!はっ!見たか!?これこそが、魔剣の威力よ!これで、貴様の減らず口を焼き尽くしてやろう!!』
「あんまそう言う事いうもんじゃないと思うんだが」
魔剣を高らかに掲げる向こうに対し、レッドは師匠の言葉を思い出しながら肩を落とした。
そんなレッドの反応に、相手は声色を変える。
『まだ言うか!!』
高揚していた声から一転、怒りを孕んだ声でもう一度魔剣を振り下ろした。
先ほどと同様の現象が起こり、斬撃は甲板伝いにレッドへ襲い掛かる。
「フッ!」
命中する前に、レッドは斬撃を回避した。
その回避を予想していたかのように、敵機体は更に剣を甲板へ叩きつける。
『読んだ!!』
「危ね!」
第二波が来る前にブースターを一瞬吹かしたレッドは、空中で身を翻した。
斬撃は再び空振り、敵機体は魔剣を握る力を強める。
『お、おのれ、手加減をしていればいい気になりやがって』
「そうか、じゃ、出し惜しみしないで来いよ」
『言われずとも、やってやるわ!!』
怒りを斬撃に乗せるように、今度は魔剣を横に薙ぎ払った。
傍からみれば虚空を斬ったようにしか見えないが、レッドにはハッキリと見える。
「(地面伝いの次は、不可視の斬撃か)」
攻撃を認識したレッドは、瞬時に機体を反らせた。
「(ッ、機体の反応が!)」
しかし、レッドの反応に対して機体は付いて行けなかった。
咄嗟にシールドを突き出して斬撃から身を守るが、代わりにバランスを崩した機体は尻餅をつく。
間髪入れる事無く、遠くの地面は切られたような跡が出来上がる。
「(ててー、恰好つかないな)」
『ほう、今のを初見で回避するか、だが、何時まで持つかな!?』
「(……けど、おかげでタイミングは掴んだ)お前を殺すまでだ!」
汚名を返上しようと考えたレッドは飛行ユニットを吹かし、新たに放たれた斬撃を回避して敵機体との距離を詰めだす。
『何ッ!?なら、コイツでどうだ!?』
更に強い魔力が込められた魔剣を振り抜かれた事で、次に放たれたのは高密度の弾幕。
速さもサイズも全てがバラバラな斬撃が、レッドへと無数に降り注いでくる。
「(良いね!良いね!体も精神も温まって来た!)」
一気に集中力を上げたレッドは、機体の反応の遅さを加味しながら弾幕を回避するルートを判断。
回避に移る前に大きく呼吸し、操縦桿を改めて握り締める。
「(3、2、1、そこ!)」
機動性に振り切った機体では、全て一度掠めただけでも即お陀仏の威力の斬撃達。
まばたきの一つも行わない程集中する事で、レッドは弾幕を掻い潜る。
『バカな!?』
敵の機体を間合いに捉えたレッドは、甲板上に足を着け、脚部とブースターへ魔力を集中。
持っている剣にも魔力を込め、炎を纏わせる。
「フレイム・スラスト!!」
『ヌッ!』
防御を取る敵機体に対し、レッドは素早い動きで突きを放った。
魔剣によって受け止められてしまうもの、その衝撃によって倍以上の体躯の敵機体をのけ反らせる。
バランスを崩した相手に向けて、レッドは二の太刀を繰り出す。
「フレイム・スラッシュ!!」
『グアッ!?』
炎を纏った一撃は敵の腕部へと繰り出され、魔剣を握る腕を切り落とした。
この事実が信じられないかのように、片膝を突く敵機はレッドを改めて視界に収める。
『ば、バカな、わ、私が、あんな爪楊枝みたいなAKに後れを取る筈がない!!』
「機体の性能が良くても、パイロットがその程度だとな!」
レッドは高く飛び上がりながら大剣を再び構える。
魔力を込められるだけ込める事で、大剣を纏う炎は更に勢いを増す。
と言うより、凄まじすぎる炎は巨大な大剣へと姿を変える。
パーティクル粒子の恩恵により、本来は物質と呼べない筈の炎は、炎と言う名の物質へと変換されて確かな質量を得た。
飛行ユニットにも限界まで魔力を込め、無理矢理巨大な炎の剣を敵艦目掛けて振り下ろす。
「バーニング・インパクト!!」
『させるかアアア!!』
体勢を立て直した敵機は残った腕を用いて、レッドの攻撃を受け止めた。
しかも、強固な魔力防壁を展開する事で、ダメージを免れている。
「チ!」
『ガハハハ!そもそも、貴様のAKと私のTBでは、パワーが段違いなんだよ!』
「グッ!」
サイズ差から生まれるパワーによって、レッドは押されだす。
だが、そんな追い風は彼の闘争心を増長させる。
状況に笑みを浮かべたレッドは、操縦桿を握る力を更に強め、思いっきり前へ押し込む。
「ウヲラアアアアア!!」
『何!?』
許容量以上の魔力が流し込まれた事で、機体の内部にアラートが響き渡る。
機体の損傷具合や、魔力の供給過多がモニターへと映り込む。
「(この程度でもたついてたら、何時までもあれに届かねぇんだよ!!)」
今の限界を極めなければ、また死にかける羽目になる。
警告を無視したレッドは更に力を込め、目指す力の為に無理矢理押し出す。
『ば、バカな!こ、こんな奴、い、今まで居なかった!』
「当然だ、こっちはな、教官と変態エルフから、クソみたいなシゴキ受けてんだよ!!」
死んだ方がマシと思える厳しい鍛錬を思い出すレッドの叫びと共に、タイタンバスターの腕を破壊。
炎の刃によって、その巨体は斬り裂かれる。
『そ、そんな!?グギャアアア!!』
更に、巨大な炎の剣によって地面ごと敵艦を縦に両断した。
熱によって断面は赤熱化しており、本来強固な特殊装甲に守られている筈の艦橋はまるごと焼失し、辺りでは爆薬の類が余熱で誘爆している。
そんな敵艦に降り立ったレッドは、焼け残ったタイタンバスターの頭部に剣を突き刺す。
「(……一番の獲物、ソイツの頭を掲げる、こうすると、何故か高揚する)」
漏れ出るオイルやパーツの破片を返り血のように浴びながら、レッドは敵機体の頭部を甲板上で掲げる。
誰かに言われた訳でもなく、討ち取った一番の敵はこうするようになっていた。
そして、沸き上がって来るのは、立ちはだかった壁をぶち壊したような快感だ。
「(敵を殺し、血を浴び、そして、戦利品を獲る、最高だ)」
血が沸き上がるような達成感に、レッドは大きく呼吸した。




