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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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会食 後編

 恥ずかしい目に遭ったフィリアは、再発防止のためにオセロットからマナーを学んでいた。


「たく、テーブルマナー位教えてやれよな」

「私に言われたのはこの艦の案内だけだ、私生活のあれこれまで教育するいわれはない」

「チ、クソ女が」

「(本当に仲悪いな、この人達)」


 言い合う二人を他所に、フィリアは教えられた通りに食事を続ける。

 そして、いがみ合いを中断したオセロットが話しかけて来る。


「たしか、フィリアって言ったな?」

「え、はい」

「アイツに嫌がらせされたら言えよ?お兄さんがぶっ飛ばしてやるから」

「あ、え、えっと、その、お、お気になさらず(あんな感じの割に、実際に手ぇ出してきたこと無いんだよね)」


 フィリアからしてみれば、アーシャの態度なんて慣れた物。

 確かに冷たい対応は多かったが、嫌がらせのような事はされていない。


「全く、いい子だな」

「兄貴も相変わらずだな」

「(何か、ここまでべた褒めされるの初めてだな)」


 フィリアの発言に頬を緩ませたオセロットは、フィリアの頭を軽く撫でた。

 逆に戸惑ってしまっているフィリアは、残りの食事を片付けていく。


「……覚えが良いな」

「銃の扱いよりは簡単です」


 フィリアの持って来た比較対象には、全員苦い表情を浮かべてしまう。

 どう考えても年齢一桁程度の少女の持って来る対象では無く、彼女の活動していた時期は相当荒れていたのだと勝手に想像してしまう。

 地味に重くなった空気を無視し、ケフュレスはどこからともなくフィリアに絡む。


「それじゃぁ、私の食べ方もぉ、教えてあげようか?」

「(本当にキモイな、この人)」

「フン!!」

「あがらし!」


 嫌がるフィリアを見たオセロットは、誰よりも早くケフュレスへと一撃をいれた。

 同じ獣人とは言え、その威力は妹よりも遥かに早く重い。

 何時もより大きな怪我を負ったケフュレスは、急いで自分の顔に回復魔法をかける。


「さ、流石、サーバルちゃんのお兄さん、いい一撃だね」

「黙れ、テメェの場合は殴っても特にお咎め無しだ、もう一発いくか?」

「え、遠慮しとくよ、あ、でもサーバルちゃんならいくらでも引っ掻いて欲しいなぁ~」

「よし、俺が抑えてやるから兄貴にぶちのめしてもらうか」

「あはは!それはちょっと遠慮するねー!」

「あ、逃げた」


 オセロットの更なる攻撃に恐れをなしたのか、ケフュレスは人混みをかき分けながら食堂からの脱出を試みる。

 だがこの時、ケフュレスはとてつもないミスを犯していた。

 その事にいち早く気付いたラケルタは、焦りながら立ち上がる。


「あ!待つんだ!ケフュレス!お前食事がまだ半分残って」


 ほとんど無意味に腕をケフュレスへと向けながら静止を呼びかけたが、既に手遅れである事を示すかのように彼のすぐ近くを何かが通り過ぎた。


「ヌベラ!」

「(何!?)」


 それはケフュレスの後頭部へと命中し、衝撃で変な声を出しながら横転。

 ダウンした彼女の横を肉叩き用のハンマーが転がる音だけが響くだけが食堂に響き渡り、フィリアは投擲元へ目をやる。

 そこにはゆっくりとケフュレスへ近づく、割烹着姿の女性があった。


「(……あ、さっきの、赤鬼族の人)」

「やっべ、姐さんじゃねぇか」

「(やっぱりあの人が、てか、この人が震える位って)


 隣で震えた声を出すアーシャの言葉で、フィリアは赤鬼族の女性が姐さんである事を確定。

 すっかり静まりかえる食堂の空気の中で、フィリアはケフュレスの方へと目を向ける。


「……へー、アタイの食堂でお残し厳禁である事を誰よりも知っている筈のアンタかい、これは意外だねぇ、何だい?女共に頭殴られ過ぎてそこまで馬鹿になったかい?」

「あ、あー、あはは」


 レイブン同様赤みがかった肌と、額に二本の角を持つ割烹着姿の彼女は、片手の牛刀をもてあそびながら倒れ込むケフュレスの事を見下す。

 そんな彼女より放たれる威圧感は、近くで食事をしていたスタッフ達に熱風のように襲いかかる。

 周りの面々はお盆ごと距離をとって行き、フィリアもこの異常な空気に冷や汗をかく。


「(何?何が始まるんだ?)」

「何時までもヘラヘラとしてないで、何か言い訳の一つでも言ったらどうなんだい?」

「……す、すぐ戻って食べますので、許してください、メグミ給食長」


 珍しく体を震わせるケフュレスは頭を床へこすりつけ、給食長の一人であるメグミへと謝罪を行った。

 しかし、そんな上辺だけの態度で彼女は納得しない。

 ケフュレスの胸倉をつかみ上げると、持っている包丁を近くの壁へと向ける。


「あれが見えるかい?見えるなら読み上げな」

「お、お残し、厳禁」

「(うわ、よく見たらメッチャ横断幕かけられてる)」


 フィリアの目にも確かに映る、【お残し厳禁】と言う文字がデカデカと掲げられた横断幕。

 しかも、それは部屋の四方に複数散見される。


「そうだ、この遠征の中、食材はどんな武器弾薬よりも貴重だ、こっちがどれだけ工夫を凝らしても、そっちが残されちゃたまんないんだよ」

「だ、だから、すぐに」

「アタイが止めなかったら、アンタは逃げていただろうに、偉そうなことを言うんじゃないよ、謝りたいんなら、アタイらの料理場(戦場)で誠意を見せてもらおうじゃないかい」

「りょ、料理場……」

「……」


 料理に関して知識の無いフィリアは上手く呑み込めなかったが、厨房へと目を向ける事で事の重大さに気付く。


「あれが糧食班の方々ですか」

「そうだ、私達ヴェイザーの戦線を支える、大事な影の立役者達だ」


 アーシャからも解説を入れられながら、フィリアの目は料理人たちを捉える。

 姐さんことメグミの雰囲気に乗っているのか、全員ケフュレスへ敵意の目を向けている。

 そんな視線に物怖じする事なく、ケフュレスは何時ものテンションで話しだす。


「成程、食材を通して贖罪してほしいと!」

「……へー、上手いこと言うじゃ無いかい」

「あ、あはは、どうも」

「それじゃ、アンタのザブトン一枚貰おうじゃないかい」

「……ん?私のザブトン?」


 よく聞く誉め言葉の類かと思われたが、その言葉の違和感に気付くと共にケフュレスは厨房へと連行される。

 訳も解らないままのケフュレスはアーシャ達の目から消えていき、厨房から彼女の声だけが響き渡る。


『え?あ、ザブトンってそう言う事!?ちょ、ちょっと待って!!ヌアアアアア!!』


 一体何をされているのか、そんな恐怖が食堂中に伝播する。

 色々見聞きしなかった事にしながら、彼らは黙って目の前の料理を残さず食べていく。


「……とにかく、ああなりたくなかったら、姐さんの作る料理は残さず食えよ」

「は、はい(あれが、姐さん、怖い)」


 静まりかえった食堂の中で、怯えるアーシャに忠告されたフィリアも心の隅に恐怖を抱きながら食事をかきこんだ。


「……私が居た軍と、全く違いますね、変な人ばかりですが、ここには、優しさが有ります」

「……ウチはあくまで傭兵だ、正規の軍じゃない、多少緩い所もある」

「それでも、随分居心地はいいです、もう、嫌々銃を撃たなくて済みそうです」

「……そうかよ(子供のセリフか?これが)」


 ほほ笑むフィリアを横目に、アーシャは沸き上がる感情を食事と一緒に飲み込んだ。



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