会食 中編
ソウリュウの艦内には複数の食堂が設けられており、アーシャ達が利用しているのは一番人気のある場所。
遅れると、フードコート並みに席を確保するのが難しい。
「いや~、混んでたけど、何とか座れたね」
「……で、何で飯時までお前らと顔合わせなきゃいけないんだよ」
「こっちのセリフだ、チ、妹と新顔の子と仲良く食おうと思ってたのに」
「飯くらい穏やかに食わせろ、兄貴もアーシャも、子供が見てんだろ」
「無駄だ、孤児院でもよく喧嘩していただろう、この二人」
「……そう言えばそうだったな」
長テーブルに向かい合う形で座る事になり、アーシャ達の喧嘩は継続。
静かに食事をしたいサーバルとラケルタからしてみればいい迷惑だ。
それ以前に、フィリアの前で有るという事も考えて欲しい。
やかましい声に包まれながらも、フィリアは目の前の料理を眺め続けていた。
「どうしたの?やかましいだろうけど、姐さんの作るご飯は美味しいから、食べて損はないよ、毒とかも入ってないし」
「え、あ、いえ、その」
何時までも手を付けようとしないフィリアを見かねたのか、ガツガツとマイペースに食事を続けていたレッドは食事を勧めた。
しかし、遠慮しているという訳では無く、配膳された料理に戸惑っていただけ。
メニューは炊きこみご飯に味噌汁、そして何の肉か解らない物をシンプルに焼いた物。
和食をベースとした定食のような献立が、お盆の上に乗っている。
体型も考慮して他の面々より盛り付けは少ないが、食べ方の解らないフィリアは匂いを嗅ぐだけで止まっている。
「(よくこんな荒廃してる中で野菜とかが、まぁ、基本第一次産業に力入れてるみたいだし、その辺の補給は万全なのか?けど、それ以前に……)」
「言っておくけど、残したら姐さんに何されるかわからんから、さっさと食った方が良いよ」
「あ、えっと、はい、ですが、その……」
「どうかしたの?気分悪い?」
あまりに食事に手をつけないせいで、珍しくケフュレスは純粋に心配しだした。
彼女を横目に、気になる点を色々募らせるフィリアは固まってしまっている理由を語りだす。
「す、すみません、こ、こう言った食事は、経験が無くて」
食べた事のある物と言ったら、アーシャがよく食べていたブロック状の携帯食位な物。
医療班の厄介になっていた時も、お粥やスープのような、比較的食べやすく消化に良い物だった。
なので、今回のような食事らしい食事は初めてだ。
「うーん……まぁ、そんな気を使わなくても」
「じ、自分が思うように食べれば良いと思うよ」
「……で、では」
レッドとケフュレスの後押しで、フィリアはようやく匙を握る。
白米以外にも根菜類や豆類を混ぜ込まれた炊き込みご飯をすくい、恐る恐る口へと運ぶ。
「あむ……ンぐ(携帯食と全然違う、なんか、いろんな、変わった食感……それに、しょっぱいようで、甘くて、それで……)」
数回咀嚼しただけで、フィリアの味覚は初めての味を複数感じ取る。
白米の他に混ぜ込まれた豆類や根菜類、これらが多様な食感をもたらし、口内はお祭りの様に賑やかだ。
味気ない携帯食とは異なり、調味料と素材の味わいによる満足感がフィリアを満たす。
「(何だろう、なんか、嬉しい?)」
初めての嬉しさを名残惜しく思いながらも、フィリアは炊き込みご飯を飲み込んだ。
内から湧き出て来た嬉しさを再度味わうべく、もう一度、もう一度と食べ進めだす。
「(……強化人間は人格が破綻するとか何とか、レプティルが言っていたが、コイツ見てるとそうでも無さそうなんだよな)」
普通に美味しそうにご飯を食べるフィリアの姿は、身体を兵器として作り換えられたように見えない。
それどころか、アーシャの目に映るのは、ただご飯を食べる少女、にしか見えない。
「(ここだけ見ると、普通に可愛いな)」
先ほどまで子供を全否定していたとは思えない考えに至っていると、アーシャは有る事に気付く。
「(けど……持ち方といい、食べ方といい、随分と汚いな)」
食事をしたのは本当に初めてらしく、フィリアの食べ方はマナーがなっていない。
一応スプーンとフォークを使い分ける事位はしているが、動作の一つ一つがぎこちない事にアーシャは気づく。
ここに来るまで子供とは思えない位しっかりしていたというのに、食べ方は年相応より下手だ。
「あ、あはは、夢中になって食べちゃって、そんなに美味しい?」
夢中になって炊き込みご飯をかきこんでいる姿を微笑ましく想いながら、ケフュレスは笑みを浮かべた。
珍しく普通の質問をしてきた彼女の質問に答えるべく、フィリアは一旦お茶碗を下ろす。
「んッぐ、はい、お、美味しい、です」
「ブッフ!」
「え?」
「……フィリア、口の周り」
吹き出したレッドに加え、笑いをこらえる他の面々。
その中で唯一真顔状態のアーシャは、フィリアの口の周りに大量のご飯粒が付いている事を指摘した。
「え!?」
おかげでフィリアは顔を真っ赤に染め上げる事となった。




