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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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会食 前編

 慌ただしく入港準備を進めるスタッフ達を尻目に、アーシャはフィリアを連れて食堂へと向かっていた。

 その道中で、二人はサーバル達とバッタリ出くわす。


「あ」

「ん?」

「お、アーシャとフィリアか、どうだ?デカ女に虐められなかったか?」

「は、はい、えっと、確か、サーバル、さん?と……」

「ああ、そうだ、んで、こっちが、俺の兄貴の、おせ、ろ、と……」


 サーバルが一緒に居たのは、実兄であるオセロット。

 紹介しようとしたらアーシャを見上げながら睨み合い、間にはバチバチと火花を散らしている。

 そんな二人の間で、フィリアは目を左右に動かす。


「これはこれは、ロクな魔法を使えないクセに弱冠十六歳でスコールの隊長に選ばれたアーシャさんではありませんか」

「そちらこそ、アーマードナイト隊の精鋭ライトニングの万年ナンバー2のオセロット君じゃないか」

「……あの、これは」

「あんまり見るな、お前には教育に悪い」


 今にも殴り合いに発展しかねない空気の中、サーバルはフィリアを保護。

 歳はある程度離れているとは言え、体格はほとんど同じ二人。

 威圧感で、スタッフ達は見ないフリをしながら通りすがっている。


「あらら、また始まっちゃった?」

「ケフュレスか、ああ、そんな所だ」

「そっか、じゃぁフィリアちゃん、危なくない様に私と一緒に行こうか~」

「お前が一番危ないっつの」


 そんな三人のやり取りを気に留める事無く、アーシャとオセロットは散らす火花を一層強くしていた。


「へ、図体だけじゃなくて態度までデカく成りやがって、ガキの方が可愛かった位だ」

「そいつはどうも、おほめに与かり光栄だ」

「そんな奴が今や子供のお世話とはな」

「(随分仲悪いな、この二人)」


 ケフュレスの存在すら気にしないレベルで、二人の喧嘩は続いてしまっている。

 ここまで感情を表面に出すアーシャを珍しいと思いながら、フィリアは観察を続ける。


「そもそも、私だってやりたくてやってんじゃないんだよ、何ならお前に全部丸投げしたい位だ、ロリコン猫が」

「誰がロリコンだ、子供は俺らみたいな大人が守るのが至極当然の事だろうが」

「その辺が気に入らないんだよ、第一お前ら兄妹の子供好きが理解できない、一体何が良いんだよ、うるさくて弱くてわがままで理不尽で、手がかかるだけだろ」

「その前に、お前らが見苦しい」


 ため息交じりの文句を垂れたサーバルだが、二人のにらみ合いは収まらない。

 子供に対する意見と好感の食い違いによる口喧嘩は続くも、互いに胸倉をつかむ等の直接的な行動には出ていない。

 二人そろって腕はガッチリと組んでおり、何が有っても手を出さない様にしている事にフィリアは気付く。


「……そう言えば、これだけいがみ合っているのに、手は出さないんですね」

「あ、気づいちゃった?」

「は、はい」

「まぁ、殴り合いとかの喧嘩は問題になるからな、そうならないようにしてんだ、教官のレイブンに知られたら修正が待ってるからな」

「修正?」

「一言で言うんなら体罰だな、不誠実な奴を殴って正すんだよ」

「は、はぁ(私達強化人間が命令に背いたら電流流されてたのと同じか)」


 未だに口喧嘩中の二人であるが、その意識の中にはレイブンの姿がある。

 二人共問題を起こしては彼に殴られて痛い目を見て来た事もあって、軽くトラウマを刻まれていた。

 不毛な喧嘩を続けていると、彼女達と同じ道に更に二人の通行人が現れる。


「ん?やぁやぁ、やっぱやってるねぇ」

「あ、レッド君達も来たんだ~」

「(また何か来たな……)」


 新たに合流したのは、オセロットと同じライトニングチームの面々。

 その内の一人であるレッドは、血を騒がせたらしい。

 ご自慢の赤い髪の毛をなびかせ、歳には見合わない少年のような顔で黒い笑みを浮かべる。


「どうしたの?ご飯より先に喧嘩?なら俺も混ぜてよ、最近哨戒ばっかで身体がなまりそうだからね」

「(何この人、戦ってもいないのに、熱気があふれてる)」


 一目でわかるレッドのただならぬ物を感じている矢先、別の驚きがフィリアへと襲いかかる。


「よせ、お前が暴れるとロクな事がない」

「(こっちはリザードマン!?多様すぎだろ、この部隊)」


 血の気を荒げるレッドを静止させたのは、青い鱗を持つリザードマンの青年ラケルタ。

 ワニのような顔から冷や汗を流しつつ、アーシャよりも筋肉質かつ大柄な体を使って今にも暴れ出しそうなレッドを抑え込む。


「ちぇ、邪魔すんなよ」

「さてと、アーシャ、お取込み中悪いが、レプティルからお前にお届け物がある」

「……何だよ、ラケルタ」

「何でも、そこにいる強化人間の解析を終えた範囲だけまとめてあるようだ、今後の参考にしろよと」

「……どうも、面倒が増えたな」


 レッドをなだめ終えるなり、ラケルタはレプティルから渡されたデータの詰まったUSBを手渡した。

 何か劇物でも渡されたような表情を浮かべながら受け取ったアーシャは、再度オセロットを睨みつける。


「……チ、まぁテメェの方が気に入らないけどな」

「何だと?」

「お前も止せ、飯の前に血は見たくない」

「そうそう、下手すると、レッド君がこの辺り血で染めちゃうよ」


 またもや喧嘩をたきつけたアーシャだが、ケフュレスの指摘でその目はレッドへと向けられる。

 確かに、彼も喧嘩に混ざろうとしている。

 ラケルタとケフュレスの言葉を飲み込み、アーシャは一旦離れる。


「……チ」

「それで、その子が噂の強化人間?」

「(マスター達が怯えてる、この人一体)」


 喧嘩が始まらないと気付くなり、レッドの興味はフィリアへ移行。

 初対面三人から目を向けられた事に気付き、少し身体を震わせながらもフィリアは敬礼する。


「え、あ、は、初めまして、私はG7-666、フィリアです、現在はアーシャさんに付き従う物となっております」

「へー、結構可愛いじゃん、俺はレッドだ、よろしくな」

「あ、あう」

「おい、あんまちょっかい出すなよ」


 オセロットの指摘を耳にしたレッドは、フィリアの頭を軽く撫でる程度で終了。

 そして次にラケルタが、フィリアへと手を差し出す。


「ライトニングチームのラケルタだ、よろしく頼む」

「あ、はい、こちらこそ(リザードマンと握手したのは初めてだな)」


 ラケルタとの挨拶を終えるも、その横ではアーシャはまたオセロットと睨み合っている。

 これでは何時までも進みそうにないので、フィリアはアーシャの手を握る。


「あ、あの、マスター、そろそろ」

「……だな、さっさと行くか、こんな奴と関わっていると餓死する」

「チ、テメェにだけは言われたかねぇな」

「ほらほら、早く行こうねー」

「兄貴も、もうその辺にしようぜ」

「では、私はこれで(気のいい人達ではあるんだな)」


 オセロットに一礼したフィリアは、ケフュレスに連行されるアーシャを追いかける。

 レッド達も彼女達に続き、オセロットたちもその後に続く。

 彼女達の耳は賑やかな声を捉え、料理のいい香りが漂ってくる。


「ん~、良い匂いだ、余計に腹が減って来る」

「(……そう言えば、以前はこの香り、嗅いでただけだったな)」


 お腹をさするアーシャと共に食事を楽しみにするフィリアだったが、目に入って来た光景に目を丸める。


「あ」

「……うわ、マジか」

「ありゃりゃー、出遅れちゃったねー」

「チ、並ぶか」


 お目当ての食堂は既に人が溢れていた。

 今日の食事を受け取ろうと、スタッフ達は列を作っている。

 更には出遅れたおかげで、見る限り席が埋まりつつある。

 ここでの食事を諦める事になるかもしれないと思いながらも、アーシャ達は列の最後尾へと並んだ。

 そして、後ろに並んだオセロットはアーシャに話しかける。


「……その前にアーシャ、ここの注意事項は教えたのか?」

「あ?……ああ、そうだ、フィリア」

「は、はい」

「ここは非常時以外お残し禁止だ、出された飯はちゃんと食え、姐さんにどやされる」

「わ、解りました(姐さん?)」


 アーシャの指摘に首を傾げるフィリアは、姐さんという言葉に他の隊員達まで反応した事に気付く。

 人によっては身体をビクつかせた者もおり、深呼吸をする者までいた。

 しかも、先ほど顔を合わせた面々も、アーシャの言葉に首を何度も縦に振りだす。


「(……え?何?誰が居るの?ここ)」


 列から少し顔を出したフィリアは、厨房へと目をやった。

 外より慌ただしい現場は、一人の赤い肌の女性を中心に回っている。

 彼女の額には、小さな二本の角が見える。


「(……あの人か?しかも、レイブンさんと同じ、赤鬼族か、やっべ)」


 アーシャ達も恐れるレイブンの同族を見た事で、フィリアも表情をひきつらせた。




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