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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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世界の歪み 前編

 レプティルから逃げるように格納庫を後にした二人は、次の目的地である特別格納庫へ歩を進めていた。

 もう心配はないと判断してゆっくり歩きつつ、フィリアは自分の身体をさする。


「(何か、悪寒?いや、皮膚が痺れる?疲れで身体に異常でも出たか?てか、あっつ)」


 通路を進むごとに変な感覚は強まっているような気がして仕方がないが、後で医療班に診てもらう事にしながらここまで見て来た事をまとめていた。


「……それにしても、レプティルさんもそうでしたが、医療スタッフのフェルメーラさんも、ここは魔族が多いですね」


 襟元を扇いで暑さを誤魔化しながら、フィリアはアーシャへ質問した。


「コマンダーの方針だ、能力さえ有れば種族も生まれも気にしない、過去もな」

「そうでしたか(過去……崩壊戦よりも前に起きたもう一つの大戦、人魔大戦、か)」


 二人の脳裏を過ぎったのは、崩壊戦よりも前に起きたもう一つの戦い。

 魔族と呼ばれているのは、その時に魔王側に属していた種族への総称、と言うよりは蔑称に近い。


「……そう言えば、私の居た時代でも、魔族の方は良い扱いをされていませんでした、中にはサイボーグ化されて意識を奪われた状態で戦線に投入されていた方も」

「今はそうでもない、中にはその当時の考えのままのバカもいない事は無いが、コマンダーがそう言う連中じゃ無かったのは、私としても有りがたい」

「え……と言う事は、マスターも……あ」

「あ?何だよ、知らなかったのか?私がタイタン族だって事」


 フィリアからしてみれば、どこからどう見てもヒュームにしか見えないアーシャ。

 だが、フィリアの記憶にはヒュームに限りなく近い見た目をしている魔族も居る。

 それがアーシャの同胞であるタイタン族。


「……確か、魔王を名乗っていた方や、魔王軍の主戦力のほとんどがタイタンであったと記憶していますが(まさか、マスターが)」

「らしいな、けど、今はそんな怯えられるような立場じゃない、てのも知ってるよな?」


 息を飲んだフィリアとは反対に、アーシャはため息交じりに返答する。


「……はい(確か、タイタンの平均身長は十五メートル、彼女がそうでないのは)」


 アーシャも年齢の割に高身長だが、それでもタイタンの平均身長とは比肩できない小ささだ。

 元より自在に変身できる能力は備わっているが、現在は種族全体でそう言った事はできないようにされている。


「カースアトミックによる全世界同時攻撃、その被害によって、タイタン族や他に変身能力を持つ種族は力を失ってしまったと(相当恐れられてたんだな、変身型の種族は)」

「らしいな、私の何世代も前の話だから詳しくは知らないが」


 過去に起きた、遺伝子にまで刻まれる呪いを全世界へばらまく攻撃。

 その影響を受けたアーシャや他の種族は、現在でも多くの者が呪いに蝕まれている。


「確か、かなり複雑な呪いで、相応に腕のたつ聖職者でないと解呪不可能、しかも魔王の同胞であるタイタンは侮蔑や畏怖の対象、それ故に誰も解呪する事ができなかったと」

「と言う事だったな、まぁ、魔法さえ廃れた今でも無理だし、後は鍛えて力ずくで克服する位しか方法がないな」

「でしたね(いや、無い事も無いか?)」


 アーシャの話を聞きながら、フィリアは別の解呪方法を思い出す。

 しかし、今の時代ではその方法が使える可能性は低い。


「(あの医療カプセルがあれば、あるいは……けど、あんな希少な物、今でも残ってるとは思えないな)」

「こうなったのも、この先にある奴が原因だ」

「……え?」


 考え事をしている内に発せられたアーシャの言葉に反応したフィリアは、この先にある扉へ目を向けた。

 考え事ばかりで気にしていなかったが、熱気と肌の違和感は強まっている。


「着いた、ここが特別格納庫だ」

「あ、はい」


 目的地である特別格納庫に到着するなり、アーシャは扉を開ける。


「ッ!あっつ!」

「えっと、電灯はっと」


 解放された特別格納庫からは、まるでサウナのような熱波がフィリア達へ襲い掛かる。

 やたらと薄暗い部屋の中から電灯のスイッチを探し出して灯りを点ける。


「ッ!こ、これは!?」

「……」


 灯り一つ無かったせいで急な灯りに目を焼かれながらも、フィリアは映り込んできた巨大な人型の金属の塊に目を見開く。

 炎のように赤く角張った装甲に包まれ、人とドラゴンを掛け合わせたような姿をした全高十八メートルの巨人。


「『タイタンバスター』、通称TB、ウチではこの一機しか無いが、最強戦力だ」

「……」


 アーシャの説明にも耳を傾けながら、開いた口の塞がらないフィリアはゆっくりと首を横に数回振った。

 問題なのは、目の前にある個体だ。

 ただのタイタンバスターであれば、フィリアもここまで言葉を失う事は無い。


「こ、これは、そんな、生易しい物じゃありませんよ(そうか、肌の違和感も、熱気も、全部コイツが……何て物を隠し玉にしてやがる)」

「……あ?知ってたのか?」


 フィリアの内から這い出て来る恐怖心。

 目の前の機体を前にした瞬間、まるで首根っこを掴まれた気になりながら口を開く。


「はい、これは『サラマンダー』かつて世界を救った勇者のパーティが使用していたとされている、特別な個体、メサイアシリーズの、一機、それも、初めて実戦投入された最古のタイタンバスター」

「……らしいな」


 震えながらサラマンダーを刮目するフィリアは、先ほどまでの表皮の痺れの正体に気付く。

 眠りについている筈のこの機体から発せられる気配、これが物理的に干渉してきている。

 起動すらしていないというのにこんな気配を放つ機体を前に身震いするフィリアを横目に、アーシャは拳を力強く握り締め、機体を睨みつけていた。


「(コイツが作られて無かったら、私は今頃……忌々しい)」


 魔族が勝利していたら、今のように歪んだ未来を生きていなかったかもしれない。

 そんな、あり得たかもしれない未来を想像するアーシャは歯を噛み締めた。

 怒れるアーシャと異なり、フィリアは記憶を刺激されていた。


「(……そうだ、思い出した、コマンダー達の言っていた人口の異常減少……原因は、コイツの姉妹機だ、コイツ等が、世界の歪みの元凶)」


 アーシャの横で、フィリアは機体から数歩下がりだす。

 身震いの原因は、サラマンダーの姉妹機。

 混濁とした記憶の中で、確かにその黒い影は存在する。

 フィリアの中で、恐ろしい物として。


「かつて、世界を救い、そして、破滅へと導いた機体と、同じシリーズ……」


 世界を歪めた存在と同格の存在。

 それを前にして、フィリアはレイブンを前にした時以上に身体を震わせる。



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