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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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ヴェイザー 中編

 艦内に設けられているスポーツジムにて。

 アーシャが去った後で、そこを利用していた戦闘班の面々はトレーニングをヒートアップさせていた。


「ウヲオオ!俺の煩悩を全て受け止めてくれ、サンドバッグぅぅ!!」


 中には沸き上がって来る煩悩を全て拳へ込め、サンドバッグを殴りまくる者も居る。

 こうなってしまっている原因は、全員一つだけだ。


「アーシャぐんそぉぉぉ!貴女に近づこうとする私を見てくださいぃぃ!!」

「性欲を持て余すなぁぁ!全て筋肉と汗で流し出せぇぇ!!」


 このジムの常連であるアーシャは、ここを利用する者の一部から羨望の眼差しを送られていた。

 弱冠十六歳でヴェイザーの精鋭であるスコールに抜擢され、それを納得せざるを得ない自分への厳しさと実力。

 そして三年前まではちょっと発育のいい子供と言う印象だったというのに、どこか影が有りながらも、雄々しさを醸し出す表情。

 それらのせいで男女問わず人気があり、筋トレ中のアーシャには煩悩をかき立たせてしまっていた。


「クソ!手ぇ出したい、何なら告白したい!」

「私だってそうだよ!できればあの人の方から来て欲しいけど!!」

「だがダメだ!手を出せばCQCの訓練と称して叩き潰される!告白したところであしらわれる!我々にできる事は、こうして己を律する事だけだぁぁ!!」

『押忍ッ!!』


 と言う理由で、ジム内はアーシャが居た時以上の熱風が吹き荒れている。

 おかげで隊員達の士気と練度の上昇が見込まれているが、もちろんアーシャが離れた後で行われるため本人は知らない。


『ウヲォォォォ!!』


 室内をジャングルのような湿気と暑さにする彼らは、その出入り口が普通ではありえない位勢いよく閉められた事にさえ気づかなかった。


 ――――――


 同時刻。

 アーシャは勢いよくジムの出入り口を閉め、身体全体で押さえつけていた。

 フィリアの案内の途中で再び訪れたが、おかげで戦闘員たちの様子を初めて目撃。

 見てはいけないものを見た気分となっていた。


「……」

「あ、あの、マスター?」

「何も聞くな、行くぞ」

「……はい(この部隊、大丈夫なのか?いろんな意味で)」


 血気盛んだった中の戦闘員とは真逆で、アーシャのテンションはとんでもなくへこんでいる。

 軍としての厳格さ等を心配しながら、フィリアは踏み込む事を止めた。


「あ、アーシャちゃん戻ってたんだ」

「(……こんな時に一番会いたくない奴が来やがった)」


 地味にショックを受けている時に再登場したのは、洗濯済みのインナースーツを手に持った私服のケフュレス。

 相変わらず糸目でのほほんとした雰囲気の彼女は、アーシャとフィリアの両名に手をふり、二人の様子の観察を開始する。


「あ~、見ちゃったか~」

「ああ」

「まぁ、あれのおかげで皆の練度上がってるみたいだからさ、気を落とさないでよ、それにジム使ってる全員がって訳じゃないよ、今居る十何人くらいだし、それに、私も毎回楽しませてもらってるよ」

「……今日は厄日だ」

「ドンマイ」

「オメェも関係者だ」


 落胆するアーシャは今日と言う日を呪い出す。

 フィリアの面倒を言い渡され、同僚の知りたくない姿を目撃し、ケフュレスと言う名の追い打ち。

 今日一日で、戦場に駆り出た時以上の精神的疲労を被った。


「で?何でお前がここに?」

「あー、ちょっとね、明日アレの整備頼まれちゃったから、洗濯してたこのスーツ取りに」

「……アレ、か」

「あれ?」


 フィリアが首を傾げる横で、アーシャは脳裏にケフュレスの言う物を思い浮かべた。

 この艦に配備されている特殊な兵器。

 表情を強張らせるアーシャを前に、ケフュレスは話題を変える。


「あはは、まぁでも、仲良くしてるみたいで良かったよ、てっきり首にリードでもつけて案内してるのかと」

「泣きわめくようならそうしていた」

「あらら、でも」


 フィリアを少し置き去りにするケフュレスは艶やかな顔をアーシャに向けながら距離を詰めていき、そっとアーシャのホホへと手を置く。

 顔の柔らかさを堪能しつつ、ホホを赤らめだす。


「私なら何時でもそうしていいからね?」

「……」


 ケフュレスとは逆に、アーシャの顔は謎の寒気で青ざめてしまう。

 そんな彼女に助け舟を出す為に、フィリアは二人の間に割って入る。


「あ、あの、マスター、は、排泄処理等は、ど、どこで?」

「え?あ、ああ、トイレか、それならこっちだ(コイツ、私に助け舟を?……まさかな)」


 とは言え、これでケフュレスから即座に離れる口実はできた。

 さっさと離れる為にフィリアを抱きかかえようとした時、ケフュレスは両手を差し出しながら屈み込む。


「さ、どうぞ」

「……」

「……」


 さも当然かのような言動を気持ち悪く思いながら、アーシャは拳を握り締める。

「当たり前みたい気持ち悪い事してんじゃねぇぇぇ!!」

「オッペケ!」


 拳を繰り出した事で変な悲鳴を上げたケフュレスは、何とも嬉しそうな表情で吹き飛んでいった。


「変態は放っておいて、さっさと行くぞ」

「……やはり、様子がおかしい方ですね」

「ああ、何時もあんな感じだ、あんまり関わるなよ、何かされたら遠慮なくぶちのめせ」

「は、はい(マスターも心配する程かよ)」


 珍しく気にかけてくれたセリフに驚きながらも、フィリアはアーシャの後に続く。


「……ただ、最後の方に案内する格納庫に居る奴にもダル絡みされると思うが、その時は我慢しろよ」


 アーシャのどこか罪悪感を孕んだ声色で忠告に、フィリアは冷や汗を垂らした。

 またケフュレスのような変人に絡まれるのか、そんな不安をフィリアは過ぎらせてしまう。


「ここ、様子のおかしい人しか居ないんですか?」

「……言っておくが、さっきのジムの連中と言い、ここの連中の九割以上、私が入ってから顔ぶれ変わってねぇよ」

「(……マジかよ、この時代の人間怖)」


 アーシャからのカミングアウトに、フィリアは顔をひきつらせた。



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