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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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悪夢 後編

「そろそろかしら?」


 サキュバス族の得意とする催眠魔法によって深い眠りへとついたアーシャの額へと手を置いたフェルメーラは、アーシャが夢を見始めた事を確認。

 何かを掴むような動作をする事でアーシャの悪夢を釣り上げると、一つの大きな泡のような物が出現し、トラウマを元にした映画のような物が映し出された。


「……相変わらずね」


 主治医に近い事もあって、何度も見て来たアーシャの悪夢。

 血に塗れて倒れた両親と、連れていかれる友人たち。

 そして、人の形をした何かによる暴力。

 映像にお腹を少し鳴らしたフェルメーラは、もう一つの魔法を発動する。


「夢魔法、ドリームイーター」


 そう呟くと共に、フェルメーラにのみ見える悪夢はアーシャの身体と同じ光に包まる。

 そこから一部分を切り取り、ピンポン玉程の大きさにして手に取る。


「今回は、この位ね……んあ」


 切り取った悪夢を頬張ったフェルメーラは、早速口内で咀嚼を始める。

 人間でいうのであれば、ジャンクフードを食べているかのような背徳と多好感。

 折角のご馳走をすぐに飲み込んでしまわないように、ゆっくりと噛み締める。


「……ふふ、この子の夢は本当にジャンキーね」


 数分噛み締めた悪夢をようやく飲み込んだフェルメーラは満足そうに舌なめずりをし、残った悪夢はアーシャへと戻していく。

 食べたのは全体の二割にも満たない量だったが、これで飛び起きてしまう程酷い物を見る事は無いだろう。


「……何時も思ってたが、悪夢の一部を切り取るより、根こそぎ取り除いた方が良いんじゃないのか?」

「バカね、そんな事したら、この子の精神どうにかなっちゃうわよ」


 掛け布団を眠るアーシャにかけたフェルメーラは、ため息交じりにサーバルの方を向く。


「夢って言うのはその人の精神の土台を表面化した物なのよ、例えるんなら、土でできた台座よ、多少傷ついても補修はできるけど、下手にしたらそこから精神が崩れ落ちて最悪発狂するわよ」

「成程なー、けど、コイツ以外にも悪夢で苦しむ奴も居るし、ある意味では役得じゃないか?」

「ええ、けど、悪夢ばっかで食事が偏りがちなのが不満かしら」


 サキュバスの主な食事は、他種族の見る夢。

 そして、その夢にも色々と種類がある。


「貴女達の感覚で言い表すんなら、悪夢はジャンクフード、淫夢はスイーツ、吉夢はサラダとか精進料理って所なのよね、だから、全部バランスよく食べないと健康に問題がでるのよ」

「……サキュバスも大変だな」

「ええ、できれば貴女の夢も食べさせて欲しいわ、お兄さんとの良い思い出の夢、そう言うのって美容に良いのよ」

「またの機会にしてくれ」

「ふふ、そうね、まぁでも、夢で困った事が有ったらすぐに言いなさい、それと、この子が起きたら、ちゃんと診察室に来させなさい、ちゃんとカウンセリングとかも受けないといけないんだから」

「へいへい」


 魔法の効果は朝まで続き、それまで深い眠りにつく。

 しかし、ストレス障害の方は現実での診療を必要としている。

 必ず診察を受けに来るという事を約束させ、フェルメーラは部屋から退室する。


「……やっぱ問題は深い、か」


 ベッドに転がりながら一部始終を見ていたサーバルは床へと降り、眠っているアーシャへと視線を落とす。


「……子供の頃から、お前は大変だったよな」


 眠るアーシャの顔を撫でるサーバルは、彼女達と一緒に住んでいた孤児院での思い出を想起させた。

 当時からアーシャは悪夢にうなされ、フェルメーラや他のサキュバス族の厄介になっていた。

 そう言った経緯のせいで院に馴染めず、ずっと一人ぼっちで過ごしていた。

 と言うより、本人が他人を寄せ付けようとしていなかったのも有る。


「(当時は今よりも根暗で、子供の浅知恵でトレーニングして、遊びにも参加しなかったおかげでずっと一人だったよな)」


 院の影でずっと一人で過ごしていたアーシャを思い浮かべながら、彼女の手を自らのホホに擦り付けた。

 更に記憶を掘り出し、彼女と初めて接触した事を思い出す。


「(それで、俺が無理矢理ボール遊びに誘って、けど、そんな子供っぽい事はしたくないって、お前が駄々こねて……)」


 当時、アーシャを遊びに誘った結果、半ばボールのぶつけ合いのような状態となった。

 おかげで喧嘩へ発展し、兄と院の先生方にゲンコツをくらった。

 しかし、それは仲を深めるキッカケでもあった。


「どんなに大人ぶっても、どんだけ敵の血や臓物浴びても、子供が嫌いなんて言っても、俺は知っている、お前が、本当はぬいぐるみ何かが大好きな、普通の女の子だって事、俺は、ちゃんと知ってるからな、何時でも頼って良いんだぜ、相棒」


 当時の可愛らしい彼女を想いながら、サーバルはアーシャの手で自分を撫でさせる。

 意識が無いのを良い事に自分のホホに擦り付け、耳を斜め側にペタンとさせると、尻尾を真っすぐピンとさせた。


「……って、俺は何してんだ、全く、俺ともあろうものが、盛大に寝ぼけたな」


 顔を真っ赤にするサーバルはアーシャの手を元の場所に戻し、自身の両ホホを軽く叩いた。

 完全に目を覚ますべく、洗面所に向かおうと振り向く。


「ぬふふ、やっぱ二人のカップリングは良いね~」

「……ヌガ!?」


 後ろに目と身体を向けた瞬間、復活していたケフュレスが何ともイヤらしい目をしながら居座っていた。

 口の形状は両手の指先で隠しているので解らないが、ニヤニヤしているのは間違いない。

 そんな事よりも、確実にさっきの寝言を聞かれた可能性がある。

 その事に気付いたサーバルの顔は火が吹き出てしまいかねない程に真っ赤に染まり、ケフュレスへと食い掛ろうとする。


「お」

「まぁまぁ、大丈夫、誰にも言わないから」

「……」


 口先に指を当てられたサーバルは身を震わせた。

 こうして弱みを握ったケフュレスには、絶対に何か裏が有る。

 だがどんな事を要求されても、アーシャに今言った事を知られるよりははるかにマシだ。


「その代わり~」

「だよな」


 その後、口止め料として、サーバルは自分の猫耳と尻尾を差し出す事となり、食事の時間までずっといじられた。



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