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転生勇者が世界を救って300年、世界は荒廃しました  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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12/17

悪夢 前編

あけましておめでとうございます、今年も活動を続けていきますので、よろしくお願いします。

 サーバルの魔法を前にしてムキになったアーシャは、ケフュレスの教えも取り入れつつ練習に熱を入れていた。

 一応努力で何とかできる部類の技術ではあるが、その一歩は非常に重く遠い。

 アーシャがその一歩目に苦しむ中で、サーバルとその兄の仲間達さえも年齢に対した差が無いというのに魔法を己の物として扱い、そして実戦でも問題無く運用できる。

 それだけでなく、精鋭チームのリーダーと言う肩書なんて名ばかりと自己嫌悪に陥っていた所に、魔法と科学の融合技術の結晶と呼べる存在が新たに加わりつつある。


「(私だって、私だって……)」


 練習に躍起になるアーシャが思い浮かべるのは、今日の夜明け前に目撃した粒子兵器。

 この世界が荒廃する原因となった大戦、現在は崩壊戦と呼ばれる戦いの中での技術競争の末に、ようやく個人が携行できるサイズにまで縮小する事に成功したと言われている。

 崩壊戦前でも既に粒子ビームを撃つ兵器は存在していたが、必要になるエネルギーや技術的な問題等が有って、運用できる物は戦艦の主砲並のサイズが限界となっていた。

 全盛期の技術を失った現在でも同じ問題に直面し、フィリアのライフルのような、個人携行用の粒子兵器はどの勢力も持っていない。


「(こんな初歩で躓いてばかりじゃ)」


 同じ精鋭部隊の面々は自分の使えない魔法を駆使する事ができ、力が無いと蔑んだフィリアに至っては今では誰も持っていない力が有る。

 その現実を目の当たりにしたせいで生まれた焦りが、魔法の練習に熱を入れてしまう。


「(私には力が要る、誰にも圧倒されない、誰からも奪われる事もない、自分の力で自分の守りたい物を守れる力が)」


 ケフュレスと共に再確認した目的、それを果たすためには魔法は必要不可欠だ。

 フィリアのライフルと同様に失われた技術の一つである魔法を扱えるのは、現在では数える位しか存在しないので、少しでも使えれば大きなアドバンテージを得られる。

 それを他の皆は持っているというのに、自分は持っていないという劣等感で、アーシャの中から妙な焦りを生んでしまう。


「グ、ウ……」


 焦りは余計な力みを生み、アーシャの体内の魔力は必要以上に消費した。

 運動に置き換えてみれば、軽いジョギングで回るコースを全力疾走で走破しようとしているような状態であり、そんな事をすればすぐにバテてしまう。

 同じ事がアーシャの身に起こり、言い知れぬ疲労感とダルさに襲われだす。


「あ、クソ、少しペースを上げ過ぎた」


 上から見えない誰かに肩から上を押さえつけられているかのような重量感を身に受けながら、アーシャは自分のベッドに転がる。


「身体重、クソ、こんな事で……」


 重たい身体で寝返りをうちつつ、アーシャは自腹で用意した時計を手に取って目を通す。

 非番でも食堂を利用できる時間は決まっていて、時間を過ぎたら利用できなくなってしまうが、次の時間までの間寝ておく時間は有る。

 目覚ましをセットして元の場所に置くと、アーシャはベッドの上で意識を手放す準備を始める。


「……私が使える魔法は身体強化程度、か」


 メイジギア、アーマードナイト、これらはいずれもシステムの補助の恩恵によって、アーシャのように魔法の扱いを苦手とする者でも十分扱えるが、それだけではメイジギアでアーマードナイトを破壊するようなマネはできない。

 それでも、アーシャは唯一扱える身体強化魔法を扱う事でそれを可能にした。

 パーティクル粒子を用いて皮膚や筋肉等、身体にある全ての器官を強化する物で、小難しいイメージ等を必要とせず、自分の身体の扱い方さえ理解できていれば使用できる。

 タイタン族は種族単位で身体強化を得意としており、他の種族よりも秀でた才能を持っている。

 それだけが、今のアーシャの強みだった。


「(メイジギアもアーマードナイトも、どちらも魔法を増幅して強化する機能があるとは言え、身体能力を強化しただけじゃ強さに限界がある)」


 追い求めている理想の強さにたどり着くにはまだ足りない。

 そんな言葉がアーシャの脳裏を過ぎり、自分が情けなくなってしまう。

 自分より一つ上とは言え、同時期に魔法を習い出したサーバルは未だに技術を上げている。

 それ比べて、未だに遠距離攻撃魔法は基礎の段階が固まって来ただけだ。


「ちくしょう」


 しかも身体強化魔法の適性があるとは言え、それは初歩の魔法に近く、魔法を覚えれば誰でも使えるようになる代物。

 それが他より秀でているからと言って、圧倒的なアドバンテージを持てるとは言い難い。

 せめてタイタン族の象徴たる能力を扱えるようになれれば、そんな考えが脳裏を過ぎり、何故だか惨めな感情に襲われてしまう。

 目から雫をこぼしたアーシャは、毛布に包まりながら眠りについた。


今回は続きを二本投稿します。

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