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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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魔法 後編

 突如始まった、ケフュレスの魔法レッスン。

 密着するケフュレスのアシストを受けつつ、先ほどよりも綺麗な魔力の玉の形成に成功。


「……く、うう」


 後はどれだけ玉を維持できるか。

 しかし、徐々に形は崩れ出す。


「はいはい、そこで力入れない、もっとリラックス」

「……だ!」

「……」


 結局、アーシャの形成していた光の玉は霧散した。

 開始して一時間経過したというのに、未だに成功していない。

 困った表情を浮かべるケフュレスはアーシャから離れ、改めてレクチャー方法を考える。


「クソ、何で上手く行かないんだ」

「うーん、何て言うかねー、念じるっていうか、願い?うん、願う感じかな?」

「……感覚野郎が」

「あーねー……」


 ケフュレスは複雑な操作を感覚で行っている事も有って、教え方が抽象的すぎる。

 それを指摘され、ケフュレスは改めて教え方を考える。


「そだねー……じゃぁ視点を変えて、こっちの方に目を向けよっか」


 魔力の球体を軽々と片手で作ったケフュレスは、その球体をあえて霧散。

 アーシャの時とは違い光は消える事無く、ケフュレスの手の平の上で輝き続けている。

 その光の正体は、アーシャが入隊する際の講習で聞かされている。


「……パーティクル粒子、転生してきた勇者が見つけたって話だな、確か、メイジギアなんかの制御にも使われてる」

「そ、因みに勇者の元居た世界の言葉で訳すと、粒子粒子になるみたい」

「それずっと気になってたが、何でそんな名前に?普通発見者の名前つけるだろ」

「私が聞いた話だと、自分の名前つけるのが恥ずかしかったとか」

「何でそんな事に?」

「まぁそれは置いといて、とにかく、魔法は魔力も大事だけどこっちも大事なの」


 ケフュレスは、集めた粒子達を操りだす。

 もう一度集まったと思えば、形を変え、うごめき、まるで躾の行き届いた動物であるかのようだ。


「……相変わらず上手いな」

「人の意思に反応して活性化する性質が有るから、二つが合わさる事で初めて魔法を実体化させられる、だからこそ、この粒子をどれだけ制御できるかが大事なの」

「ああ」

「付与できる属性や扱える魔法も、基本的にその脳波の性質に寄る所がある、私の場合は風とか、後は色々だね」


 遊んでいた光をもう一度集めると、光はケフュレスの思考に従って形質を変化。

 ただの光から、優しいそよ風と化して二人の肌を撫でる。

 回復魔法以外にケフュレスが使えるもう一つの属性魔法である風、それを軽く見せた後で説明を再開する。


「上手く操ればさっきのペットみたいに可愛く動くし、今みたいに優しい風も起こせるけど、指向性を利用して目標へ飛ばせる事もできる」

「……それは解っている」

「頭でわかってるだけじゃダメ、心から解らないと……まぁでも、貴女に適性が有るのは種族単位で得意とされている身体強化、今練習している奴よりそっち伸ばした方が良いと思うけど?」

「……」


 アドバイスを受けたアーシャは、目を逸らして黙り込む。

 ケフュレスの言う通り、アーシャに一番適性が有るのは身体能力を水増しする魔法。

 そのおかげで、アーシャは気配の探知や力の抑え方、メイジギアの扱いは評価されている。

 今では効率こそ悪いが、その気になれば遠距離への攻撃なんてフィジカルでどうにでもなる。

 それでも隣の芝生は青く見える。


「……全く意固地なんだから、まぁ、炎とか風とかの適正は無くても、純粋な魔力を撃ちだす位の事はできる筈だしね、一緒にがんばろっか」

「ああ」

「だから、自分の魔力だけじゃなくて、この粒子たちも信じてあげて、それが、願いになり、貴女が求める力をもたらしてくれる」

「……求める力、か」


 アーシャの願い。

 それを一番よく知っているのは、この傭兵団の中で一番付き合いの長いケフュレス。

 その事はアーシャ自身も認めており、なによりその願いを示したのはケフュレスだ。

 彼女に再度示されたアーシャは、右腕の火傷痕を軽く撫でる。


「……アイツ等を、必ず殺す(その為になら、強化人間とか言う奴にだってなってやる)」


 アーシャの脳裏にチラつく、全てを奪った傭兵達。

 奪い返す事は出来なくても、燻る報復心をぶつける事はできる。


「……私の持論だけど」

「……何度も聞いてる、結果より過程だろ?」

「そ、復讐は一向に構わないし、私が教えた力も貴女の望む通りに使って良い、けど、その為に何でも投げ捨てた結果の先なんて、何も無いんだからね」

「……」


 拾われてからずっと言われて来た、ケフュレスの座右の銘。

 それを再び言い出したケフュレスは、アーシャの右腕の火傷痕に手を置いて来る。


「でもね、貴女が進む為にどれだけ大事な物を投げ捨てても、何が有っても、私は最後まで貴女の味方で居るから」

「……何で何時もそう言う?」

「貴女には生きて欲しいから、貴女に戦い方を教えたのも、魔法を教えたのも、誰かを傷つける為なんかじゃなくて、貴女の生存を望んだからなんだから」

「……そいつはどうも」


 今でも思い出す、ケフュレスに助けられた当時を。

 拳銃とナイフだけで、次々と敵を制圧していた彼女の姿。

 そんなケフュレスの姿は、アーシャが強さを求めるキッカケとなった。


「……ん」


 色々と脱線してしまったが、アーシャは実践してみる事にした。

 言われた事も、しっかり実行しながら。


「……」

「そう、そう言う感じ、粒子を集めて集めて」


 意識を研ぎ澄ませるアーシャの手で、先ほど同様に光の玉が形成。

 しかも先ほどまでよりも形は確かな物となり、維持も上手くできている。

 ケフュレスのマネはできそうになくとも、一旦成功はした。


「……やった」

「うん!上手!上手!上手く行ってるよ!」

「……ふぅ」

「今の感覚を忘れないで、焦らず一歩ずつ前進して行こうね」

「……ああ」


 ケフュレスのお墨付きを得られ、アーシャは口角を上げながら光を霧散させた。

 今回ばかりは、彼女のおかげで一歩進む事ができた事に変わりは無い。

 サーバルが起きそうな位騒ぐケフュレスの方へ、アーシャは振り向く。


「……ありがとうな」

「うん、どういたしまして(……その調子、どんどん強くなって、成長する貴女を見せて、人間として、ね)」


 銀色の瞳から光を無くしたケフュレスは、込みあがってくる感情に身体を震わせる。

 また一歩進んだアーシャへ、綺麗な笑みを向けた。



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