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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
序章 300年目の夜明け

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スコールチーム 前編

 何故、こんな事になったのか。

 潤いのある唇の柔らかさに、思考は停止する。

 気づいたら、目前には流れるように長い青髪を持つ全裸の少女がいた。

 と言うか、キスをされていた。


「(何で、私は、こんなガキとキスしてんだ!?)」


 ――――――


「……私は子供が嫌い……ッ!?な、なんだ、夢か(何か、最近多いな)」


 揺れ動くヘリの機内で目を覚ましたアーシャは、先ほど裸体の少女にキスをされていた事が夢で有った事を悟った。


「(妙にリアルだったな……クソ、本当にキスしたみたいだ)」


 唇の甘い感触を想起しつつ、アーシャは腕時計へ目を落とす。

 現時刻は午前三時前。

 今回の任務である夜襲の為に予め睡眠をとったというのに、この醜態だ。

 だがまぁ、奴隷時代の経験で不眠症を拗らせているので、あまり眠れていなかったのも事実。

 緩んだ気を引き締めるべく、水筒の水を軽く飲んだ。


「(クソ、気を引き締めろ、任務に集中しろ、何時も通り)」

「どうしたの?居眠りなんかしちゃって、珍しいね」

「ん、ああ、ちょっとな」


 改めて気合を入れなおしている所で、装着しているヘルメットの通信機から目の前に座るエルフの少女からの通信が入り込んだ。

 このチームの古参メンバーのケフュレスは、首を傾げながら心配してくれると共に、何故アーシャが居眠りをしたのか察したのか、腕を組んで深めに座り込む。


「もう、だから私が添い寝して寝かしつけてあげるって言ったのに」

「テメェに添い寝される位なら永眠した方がマシだ」

「え~、そこまで言わなくてもいいじゃ~ん、それに、別に寝ちゃうのは恥ずかしい事じゃないよ~」

「……」


 ケフュレスと同じ方へと目を落とすと、もはや居眠りどころか爆睡している少女が目に映る。

 椅子に座りながら眠る程度であればまだしも、床に寝そべってイビキまでかいている。

 自分も居眠りしていた手前あまり強く出られないが、隊長の責任を果たすために軽く蹴り起こす。


「おいサーバル!」

「ウミャ!?」

「そろそろ降下ポイントだ、さっさと起きろ」

「ふぁ~、んだよ、もうかよ、後五時間くらい寝かせろ」

「ダメに決まってんだろ、猫人族だからって事で、お前私らより一時間長く寝てんだから」

「ケッ、ケチだな」


 睡眠時間の長い描人族だからと言って、これ以上は容認できない。

 叩き起こされて不機嫌になりなりながら席に座ついた彼女を確認すると、アーシャは被り直したヘルメットのディスプレイを機動させて戦術ネットワークを構築する。


「おし、もう一度作戦を確認するぞ、戦術ネットワークを構築、ブリーフィングを再確認する」

「はいは~い」

「はいよ」


 二人の返事を聞いたアーシャは、今回の作戦に関する情報共有を開始。

 彼女達のフルフェイスヘルメットの内側には、ターゲット本人の写真と、その人物の護衛部隊に関するデータが表示される。


「依頼主は何時ものウィルソン、ターゲットは以前取り逃がした幹部とその護衛部隊だ」


 表示されるデータは、写真から映像に移行。

 潜伏先があるとは思えない一面砂と岩だらけの荒野が映し出される。

 領主の依頼主ですら、何があるか認知していなかった。

 苦労の末に、この何も無いような場所に潜伏可能な旧時代の遺跡を発見したのだ。


「今回は我々スコールのみの奇襲作戦だ、このヘリも備え付けのミニガン以外装備していないうえに、援軍も期待できないが、向こうは別だ、残り二時間ほどで敵の救援部隊が到着し、夜明けごろにターゲットは国境を超える、それまでにかたを付けるぞ!」

『押忍!』


 二人の返事と共に、チーム全員はシートに変形させていた鎧『メイジギア』が目を覚ます。

 装甲は全身を包み込み、元の身体と共に呼吸を行い、鼓動する。

 両肩の武器も唸りを上げた。

 機械音声がヘルメット内に木霊する。


『バトルシステム起動します』

「よし、メイジギア起動、起立(スタンドアップ)!」


 号令と共に三人は立ち上がった。

 手持ち式の武器を手にする最中で、輸送機のパイロットから通信が入る。


『モンスーンよりスコールへ、間もなく投下地点に到着する、ハッチ開けるぞ』

「了解」


 輸送機のパイロットのセリフと共に、機体後方のハッチが解放。

 気圧差で冷たい風が機内に入り込み、辺り一面砂だらけの光景が三人の目に映る。


「よし、降下するぞ!」


 手に持った軽機関銃に弾帯と呼ばれる弾丸の連なるベルトを装填し、グレネードランチャーを担いだアーシャは戦闘態勢へ移行。

 サーバルは愛用のショットガンをコッキングすると、左腕に格納されているブレードを伸ばし、再び格納して出撃準備完了をその身で表す。

 しかし、ケフュレスは武器を抱えながら右手をピンと上げる。


「質問!敵傭兵に女の子が居た場合!何人までお持ち帰りして良いですか!?」

「よぉし!行くぞ!」

「押忍!」

「時間を合わせる!秒読み開始!」


 気持ち悪い事をぬかすケフュレスの事は完全に無視し、アーシャとサーバルは予定通りの行動をとる。

 作戦は時間との勝負であるため、タイムリミットを正確にするべくアーシャ達は時間をしっかりと計る。


「はぁぁい!しつもぉぉん!二人!二人でどう!?」

「だぁぁ!テメェは何時もうるせぇんだよ!!」

「ニュエッ!」


 もう任務を妨害しているとしか思えなくなり、アーシャはグレネードランチャーでケフュレスの事を殴り飛ばした。

 自慢のパワーで吹き飛ばされたケフュレスは、開放されたハッチより一人だけ先に降下、というより落下する。

 彼女を尻目に、アーシャは自分の役割を果たす。


「タイマースタート、今度こそ降下!」

「降下!」


 情けなく落ちていくケフュレスとは異なり、二人はタイマーの時間を合わせた後で、正規の方法で降下。

 訓練で染みこませた動きを行い、スラスターで減速しながら一面砂だらけの荒れ果てた大地へと足を付ける。


「(降下完了、砂上で動く為の魔法陣も機能しているな)」


 流動する砂の上で足を取られる事は無く、地面に食いつく。

 先に落ちていたケフュレスは頭から砂に突っ込んでもがいているが、もう彼女の事はノータッチ。

 代わりに、アーシャは自分の肩程度の身長のサーバルへ視線を落とし、サーバルは自分より身長のあるアーシャを見上げた。


「(やっぱりいい動きだ、流石私の一個先輩だけある)」


 アイコンタクトを送り合った二人は加速し、一気に目標ポイントへの移動を開始。

 先頭に立つポイントマンを足早なサーバルが引き受け、その後ろにアーシャが続く。

 波打つような高低差を持つ砂漠地帯のせいで遠方への視界は悪いが、サーバルは軽い坂道を昇りきると共に大ジャンプを行う。


「行くぜ!」

「(……相変わらずのジャンプ力だな)」


 敵からの発見を防ぐべくスラスターを吹かずに飛んだサーバルは、夜目の利く種族柄を活かして上空から数秒の偵察を開始する。


「どうだった!?」

「歩兵の数はメイジギアがたっぷり!後は移設型砲台四門!デカブツ二機だ!」

「了解!先行しろ!援護する!」

「任せろ!」

『はいは~い!』


 ようやく復活したケフュレスの声が聞こえると共に、サーバルは一気に速度を上げた。

 チームの中で最軽量である装備を活かし、限界まで前傾姿勢をとって猛獣のように敵陣へと切り込んでいく。

 彼女の援護を行うべく、アーシャは左手武器の安全装置を解除。

 ヘルメットとリンクして照準をアシストさせ、弾倉に込めた全ての榴弾を発射。

 彼女の砲撃に続くように、ケフュレスの装備であるミサイル群が降り注ぐ。


「弾着……今!!」


 アーシャの言葉に合わせる様にして、砲撃の初弾が炸裂。

 爆発が爆発を呼ぶ地獄絵図を前に、アーシャは左肩の武装を起動させながら通信を入れる。


「私も前に出る!スコール3!援護射撃!」

『は~いっと!』


 スコール3こと、ケフュレスへの指示を終えると共に、左肩の特殊アームに繋げられている大型の盾を前方へ展開。

 グレネードランチャーの代わりに腰に下げていた手斧を装備。

 戦闘中のサーバルの援護と攻撃のために、右手で機銃掃射を行いながら接近していく。


「(負ければ地獄だ、だから勝つ、あんな目に遭うのは、もうゴメンだ)」


 一瞬だけ脳裏を過ぎる、奴隷になる前の地獄。

 目の前で殺された両親。

 別の場所へ連れていかれた友人。

 もし力が有れば、戦場で銃なんか握って居なかった。

 力強く握られる斧の柄が、少しきしんだ。


「破壊する!」


 その叫びと共に最も近い敵兵士へ向けて手斧を振り下ろし、全身を卵のように砕き割った。

 自分から全てを奪った憎き傭兵共と姿を重ねながら。



本日は続きを二本程投稿いたします

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