第044話-2 競技大会中盤後半戦 14回戦目1
ヴァルトラウテとの対戦から2日後、中盤後半戦2回戦 合計14回戦目。
たぶん今日が大会最後の日になるだろう。対戦相手が強い。強過ぎる相手だ。ジャイロディーンのように手も足も出ない可能性が高い。
性能の高いファントムで戦ってもだ。
メンテは完全に済ませてある。ヴァルトラウテ戦ではダメージを一切受けてないし、それほど動いてもいないからフレームに疲労も蓄積されなかったから。
最大性能を発揮出来る状態になっている。
それでも勝てる気がしない。イメージが湧かない。
次の対戦相手はプレーヤー「エレボス」、アーマードギア「テュポーン」だ。
エレボスはE.G.G.に俺と同時期に参戦し始めたプレーヤーだ。直接会った事はないが、現在超有名な上位プレーヤーの1人。
最初の年の競技大会のノービスは3大会全部優勝している。その後の一般の大会も最初からベスト8にまで勝ち残る程の強者だ。
搭乗しているテュポーン自体相当にお金がかかった機体だ。
ノービスの大会の頃から群を抜いてパーツに金がかかっている事でも有名だった。ビーム兵器は使えるし、飛行能力もある。ジェネレーター出力もハンパない化け物クラスのアーマードギアだった。
大会に出てきた当初は金に物を言わせた機体だと言われたが、いざ戦闘が始まるとプレーヤーの戦闘スキル自体も評価され、あっという間に優勝してしまった。
それからノービスの2大会とも優勝した。その後、一般の大会でも中堅プレーヤー等ものともしない活躍ですぐに上位プレーヤーの仲間入りを果たした。
形は違うがビーム兵器も使え、飛行能力がある事を考えれば、ファントムと同等かそれ以上の機体なんだろう。
俺の方は今回は完全フル装備のファントムではないにしても、ビーム兵器は使えるし、空も飛べるが、操縦してる俺の戦闘スキルが見劣りする。
だから勝てるイメージが出来ない……
何を考えてもダメそうだ。
とりあえず騒がしいラウンジで気を紛らわせよう……
ラウンジでポツンと座っているとだん吉、マッカーサー、ヴァルトラウテ、静御前が近寄って来た。
独りよりは気が紛れるか。
「よう、どうした?今日も対戦だろ?」
「対戦相手がテュポーンだぞ。勝てるイメージが出来ない」
「相手がタルタロスのトップエースだもんな?中堅プレーヤーが簡単に勝てねぇよな、マッカーサー」
「確かにな。俺は勝てないぞ」
「そんなもんだよな?」
せっかくファントムを手に入れても、まだ俺が未熟だ。だから勝てる見込みが限りなく小さい。
ファントムは弱くないのに。
「タケル、あたしに勝ったんだ。負けるなよ!」
「無茶言うな。お前は弱点突いて楽に倒せたが、テュポーンは丸分かりの弱点があるわけじゃないしな」
「それでもだ!」
「ああ、分かった。勝つためにせいぜい頑張るよ」
「くぅ」
ヴァルトラウテも励ましてくれたんだろう。簡単には負けないようにしたい。
大会である以上どうしても強い、敵わないぐらい強い対戦相手にあたってしまう事はある。でも、負けるつもりで戦うのもエレボスに悪い。
ほぼほぼファントムだが何処まで食らいつけるかだな。
そろそろ時間になるためメンテブースに戻る。
いつものようにクサナギ<改>の回りを回って外観の確認を行う。
頭部がクサナギのままで、バックパックにシールドバインダーが2枚取り付けられていないだけで、もうファントムと言っていい状態だ。
準備は終わっている。さあ、乗り込もう。
クサナギのコクピットに潜り込み、最終確認を行う。よし、問題ない。
今日は全力を出そう。と言ってもオーバークロックは使わない。というか今回も使えるのか分からない。
とにかくやれるだけやるだけだ。
…………時間だ……
<<<Battle Start>>>
今日のステージは平原だった。
これまで通り多少の凹凸はある平地で、草原や灌木等がまばらにあるステージだ。目視だけでかなり遠くまで見通せる。テュポーンも見えるだろうか。
先ずは索敵だ。相手に気付かれない内に見つけたい。
パッシブスキャンに反応があった。
ん?近い?でも見えない。
……ということは?
上を見上げるとテュポーンが浮かんでいた。
飛行能力がある事は知っていたが、目の前で体験しない事には実感出来ない……
すぐに後方に全速でホバーリングし、その場から離れる。
テュポーンが撃ってこないから助かったが、ビーム兵器を撃ってきてたらもうアウトだった。
後方に下がった俺の前にテュポーンが静に降りてきた。
『クサナギのプレーヤー、タケル。今日はいい勝負をしよう。
オーバークロックは使ってもらえるのかな?』
『テュポーンのプレーヤー、エレボス。オーバークロックを使う予定はない。前に使った時も無意識で使ったから起動の仕方がわからない。それに勝手に動いたんだ。それは対戦ではないだろ?』
『あら、真面目な方ですね。自動で倒してくれれば楽ではないですか?』
『楽だが面白くはないだろ?せっかくゲームをしてるんだ。自分で相手を倒さなければ意味がないだろ?
それにパーツの消耗が激しいんで使いたくはないんだよ』
『仕方がないですわね。では、戦いましょう』
『ご希望に添えるかどうかは分からんがな?』
離れていたテュポーンから更に距離を取り、アサルトライフルを乱射しながら反時計回りに移動を始める。
テュポーンは飛行せず後方にホバーリングで下がり、銃弾を避けた。
テュポーンSide
相変わらず真面目ですわね、ヤマト。
オーバークロックの使い方なんて調べれば分かるのですけどね。
それにパーツなんていっぱい宇宙戦艦にあるのでしょう?隠したいのは分かりますけど、私は知ってますよ。
さあ、私と2人だけの舞台を楽しみましょう?
タケルSide
くそっ、やっぱり反応するか。
今は距離を取りながらアサルトライフルで牽制するしかない。
ダダダッ ダダダッ ダダダッ
テュポーンは飛行して上に移動する気はないようだ。こちらを舐めているようで、こちらに合わせて地上での戦闘をするようだ。
こちらの射撃をスルスルと回避して、こちらに近付き始めた。俺も更に加速しテュポーン背後を取るように接近させる。
超高硬度ヒートソードを引き抜き、テュポーンとの激突に備える。
その間にアサルトライフルの射撃を加えていく。
テュポーンはそれをジャンプしてかわし、こちらにお返しとばかりにアサルトライフルを撃ち込んできた。
クサナギはシールドバインダーで銃弾を受け、テュポーンを追う。
エレボスは回避するのに、俺はシールドバインダーで受けるとかやはりレベルが違うか。
テュポーンSide
お互いのアーマードギアの性能差はそれほどないはずですけど、ヤマトと私では操縦能力に差がありますわね。
まぁ、見つけてまだ数ヶ月で全力動作した状態での制御には慣れてないですからね。仕方ないわ。
全力を出す対戦相手もいませんでしたから。
こちらは徐々に回転を上げていきましょうか……
タケルSide
クサナギの速度を上げ、周囲を回りながら接近したりしつつ攻撃していく。
接近した時はヒートソードを叩きつけ、同時にアサルトライフルを脚元に撃ち込む。テュポーンは分かっていたのか、ヒートソードを受けずジャンプし1回転してクサナギの背後に着地した。
すぐさま脚のピックを地面に打ち込み、機体を反転させその勢いも合わせて更にヒートソードを叩き付けた。
しかし、テュポーンも同じく脚部のピックを地面に打ち込んで反転しヒートソードで受け止めた。
しばらく鍔迫り合いになり、アサルトライフルとビームキャノンの同時射撃をしたが、テュポーンは空いた腕でシールドバインダーを反らし、機体を捻ってアサルトライフルを躱した。
直後、後方に飛んで離れていった。
くそっ、これも避けるのか?
テュポーンSide
フフフ、まだまだですわね。
ファントムならもっとパワーがあるでしょうに。まだクサナギの感覚で扱ってるようですね。
ヤマトの反応は悪くはないですが、ファントムの性能ならもう1段ぐらい平気で上げられるはず。あなたの大好きなファントムの性能は、そんなものではないのですよ?
タケルSide
加速…………加速…………加速…………
ホバーリングの速度をさらに上げテュポーンに突っ込む。アサルトライフルで牽制してからグレネードを撃ち込む。
ドオォォォン
爆煙が上がり土を巻き上げ周囲が見えにくくなる。テュポーンも同様だ。
アサルトライフルをありったけ撃ち込みながら爆煙の中に突っ込み、テュポーンの反応にある所にヒートソードを叩き込む。
ガシッ
接近しようやく見えたが、テュポーンはこちらのヒートソードをシールドバインダーで受け止めていた。
なっ?何ぃ?
今までの映像に肩の盾が可動した映像はなかった。
肩に固定されていただけで、実際は可動するシールドバインダーだったのか?
『どうされました?あなたもシールドバインダーを使ってますよ?
私が装備していてもおかしくはないでしょう?普通に購入できる装備ですから。
でも、シールドに傷がつきましたわね?今まで購入できるヒートソードでは傷がつきませんでしたのに。
特殊なヒートソードのようですね?』
特殊といえば特殊だが炎の大剣程特殊じゃない。硬いだけだ。
それでも盾に傷をつけるだけか。しかもそれほど大きくない傷だ。
これだと他のパーツにも大した傷はつかないのか?
テュポーンSide
テュポーンのシールドに傷がつくなんて……一番硬いシールドなのに。
ヤマトはいろいろいいパーツを見つけているようですわね。さあ、他にどんなパーツがあるのかしら?
こちらからも攻めて見ましょうか……
### 続く ###




