第044話-1 競技大会中盤後半戦 13回戦目
今日は競技大会中盤後半戦1回戦目、合計13回戦目。
クサナギ<改>のメンテも完全に終わり、これから対戦となる。
この間、宇宙戦艦を「国」としてしないかとE.G.G.運営の方から打診があった。そのせいで悩み事ができ今一つ集中できない。
リアルではエリーがうちで生活するようになり、嫁が増え序列としてはセイラの姉という位置付けに収まった。学校でもそうだったしな。
そのおかげでセイラの世話の手間がいくらか軽減され楽になった。その分みんなを可愛がる時間や体力を回せる。
後何回戦進めるか分からないが、この後半戦が終わったらじいちゃんの所へ収穫に行くのにいい時期だろう。後で話しておかないとな。
さあ、今日の対戦相手は……ヴァルトラウテのピアレイだ。
もう攻略法は検討してある。
というか、師匠として弱点をはっきりさせるのだ。説明はしているにもかかわらず聞いてくれないのであれば、身を持って理解させてやろう。
ヴァルトラウテの方も俺が対戦相手だということは知っているはずだ。
どう攻撃してくるかは分かっているはずだが、どうだろうな?
ヴァルトラウテの炎の大剣はもう完全に無効化しているから接近戦でもいいが、自分の弱点を理解させるために徹底的に遠距離攻撃をする。
手も脚も出ない事が実感できるはずだ。
今日は心を鬼にして血も涙もなく叩こう!
そう作戦を練っているとヴァルトラウテがやって来た。
随分自信満々なドヤ顔をこちらに向けてきた。
何を思ってるんだろうな?
「タケル!今日こそ勝つからな!」
「そうか、頑張れ」
「何?その余裕な態度は!?大剣のサビにしてやるからなっ」
「出来るならな?クサナギの装甲にあの大剣は効かないぞ?」
「うっ」
ようやく気付いたようだ。シールドバインダーに炎の大剣は止められたのは覚えてるはずなんだが。
なのにヴァルトラウテは勝てるつもりでいるようだ、勝った事ないのにな。
更にこっちはピアレイの弱点を把握してる。
まぁ、楽勝とまではいう気はないが負ける気がしない。
「タケル!覚えてろよ!!ギッタギタにしてやるからな!!」
「『ギッタギタ』って……ははは」
「くっそー、絶対勝ってやるぅ」
そう言って走って逃げていった。面白い奴だ。
絶対に俺が勝ってやろう。
そろそろ時間になるからメンテブースに移動しよう。
メンテブース内にクサナギ<改>が鎮座している。メンテも完了し、ほぼ新品同様ピカピカに仕上げてある。
回りを歩いて最終確認を済ませ、宇宙戦艦のサポートAIを呼び出し仕上がり具合いをチェックし万全に調整が出来ている事を再確認した。
この仕上がりならピアレイに勝てる……
……時間だ。
<<<Battle Start>>>
……メンテブースから転送された……
転送された場所はまた荒廃した市街地だ。ケスカ戦と同じステージだ。
まだ倒れていないビル群があるから、ちょうどケスカ戦の再現だ。立場が逆だが。
ピアレイに見つかる前にさっさとビル群に入ってしまおう。
ホバーリング全開で移動する。
ビル群に入り込み、その辺で一番高いビルを登り屋上に立つ。屋上でスナイプの準備をする。
屋上に比較的重量級のクサナギが居ても崩れずにビルは形を保っている。普通ならあり得ないのだが、今日のクサナギは問題ない。
しゃがみ込んで標的を探す。
パッシブスキャンを併用しながらカメラをズームして索敵する。
パッシブスキャンには引っかからない。目視にも。
こっちが見つからないからと、ビルを壊しながら移動してたりしないだろうな?
今のところビルが倒れたりもしていないから、そんな分かりやすいことはしないのだろう。
……と思っていたら、しばらく索敵しているとビルが倒れる音がした。
ドガーーーン グシャッ
音のした方を見ると、砂煙の中からピアレイが出てくるのが見えた。
わざわざビルを倒して見つけやすくしてくれるとか普通はないだろう。
……捕まえた。
スナイパーライフルを構え、ピアレイに照準を合わせる……
シュート!
ガシュッ
スナイパーライフルの銃弾がピアレイのバックパックを深く抉った。
その衝撃でピアレイがよろめいた。
俺はピアレイに見つからないよう、ピアレイがいる側の反対側に飛び降りた。下に着く前にファントムの飛行機能を使って落下速度を制御する。ゆっくり地面に降り、別のビルへ移動しまた屋上へ登る。
また屋上でしゃがみ込んでピアレイに照準を合わせる。
実はファントムの飛行機能を使って屋上に留まっていた。
そうでなければケスカくらいの機体でないとビルが倒壊する。現状のクサナギの重量だと屋上やフロアの床が踏み抜いてしまうのだ。それをファントムの飛行機能で重量を軽減させ、屋上にいた。
クサナギ程の重量級が屋上から狙ってくるとは思うまい。
これが今回の作戦のポイントだ。
またピアレイに銃弾を撃ち込んだ。撃ち込んではすぐに別のビルに移動を繰り返していった。
カメラで確認しても、まだこちらを見つけてないようだ。
ヴァルトラウテSide
クサナギはどこにいるの?
スナイプされてるけど射線を追いかけてもビルの屋上の方。あの機体で屋上にいられるわけがない。ビルが崩れるはず。
ガシュッ
あっ、また撃ってきた。今回も掠って結構装甲が削られた。
撃ってきた方を見たけどいない。ビルがあるだけ。
このままピアレイの装甲を削るだけのつもり?接近戦はしないってこと?
もう何発も銃弾を食らって装甲が削られた。まだクリーンヒットが無いから動けるけど、脚に食らったらお終いだ。
タケルSide
相変わらず接近戦しか考えていないようだ。未だ何処かに隠れようともしない。こちらはどんどん装甲を削っていくだけだ。
撃っては移動し撃っては移動。居場所も特定出来ないようにしている。
それでも射線は分かってるはずなんだから、隠れるなり逃げるなりすればいいだろうに。ビルの中に入る事も出来るんだが。
ヴァルトラウテSide
確かに今回の大会、この大剣の性能だけで戦ってきた。アサルトライフルも装備しないで。
流石に今日はそんな状態で勝てるとは思っていない。でも装備しているアサルトライフルにしても、相手が見つからなければ意味がない。
どうしよう?これまで勢いだけでミッションでも戦ってきた。
考えないと……考えないと……考えないと……
先ずは隠れよう。
タケルSide
ようやく隠れたか。
さて、こちらも隠れながら狙撃ポイントを探そうか。
一旦ビルから降り、さっきピアレイがいた辺り周辺を索敵して回る。パッシブスキャンでは反応は出にくいと思うが周回して探る。
やはりピアレの方から動く気はないようだ。
隠れるとなるとある程度大きいビルの中だろう。移動中、大きいビルを見つけてはビルの中にグレネードを撃ち込んでいく。これで出てくるかどうかだ。
いくつかのビルにグレネードを撃ち込んでみたが、今の所反応無し。
ヴァルトラウテSide
隠れている所の回りのビルで爆発音がする。スナイパーライフルの音じゃない。グレネード?
とにかく見つからないように隠れていないと……
でもこの攻撃はクサナギがやってるんだよね?
ということは……隠れてスナイプしてるわけじゃないってこと?
それなら近くにいる?
タケルSide
もう少し索敵範囲を広げよう。少し離れて隠れているのかもしれないし。
このままグレネードをばら撒きながら周回していった。
グレネードの発する爆音がし、ばら撒かれる砂煙で周囲が煙ってはっきり見えない。
落ち着くまで待機しておこう。
近くの高いビルの屋上に登り待機する……
……ステイ……ステイ……ステイ
砂煙が落ち着き始めた頃、やっとピアレイがキョロキョロしながら出て来た。
……獲物が出て来た……
スナイパーライフルを向け、ピアレイをスナイプする。今度はじっくり脚部に狙いを付ける。
シュート!
ドガッ ドーーン
ピアレイの右脚部のバーニアを貫通し、バーニアが爆発した。
ヴァルトラウテSide
ぐぁあああ
右脚のバーニアが壊れて吹っ飛んだ。そばのビルにピアレイが激しくぶつかった。
痛たたた。くそぅ、やられた。
近くにいても接近戦出来るとは限らなかった。砂煙が舞ってる間に別の場所に隠れててればよかった。
もう右脚が動かない。どうしよう?
更に左脚も関節に銃弾が貫通して左脚が取れた……
クサナギは何処にいる?上の方から撃ってきたみたいだけど。
見上げるとビルの屋上にクサナギがいるのが見えた。
何でそんなとこに居られる?クサナギの重量なら屋根が崩れるはず。
何で?
クサナギが飛んだ。
逆行でよく見えないけど…………天使みたい。
2枚のシールドバインダーが天使の羽根のよう……
目の前にクサナギが降りてきた。しかもほとんど音もしないで。
何?あの高さから飛び降りたら音がするはずなんだけど?
それに関節に負担がかかるからバーニア吹かして降りてくるはずなんだけど。
それがそのまま降りてきた……
どうなってる?
『言っただろ?出来るならって。
遠距離射撃の対策が全然出来てないヴァルトラウテにならいつでも勝てる』
頭がカッとなった。くそぉぉぉ、これでも喰らえ!
大剣をクサナギに叩き付けた!
クサナギは左腕で大剣を受けた。受けた?斬れない?
前はシールドバインダーで受けたのに、今度は腕で?
『……終わりだ』
クサナギのパイルバンカーがあたしを刺し貫いた……
<<<Battle End>>>
タケルSide
よし、勝った。
やっぱりピアレイは遠距離射撃戦には手も足も出なかったな。
炎の大剣を渡したのは良くなかったか……
あれに頼った戦闘ばかりしたせいで、銃撃戦の勘が鈍ってるんだろうか。
いや、元々接近戦メインだったか。
「タケル氏、またインタビューをお願いします」
「大した対戦ではなかっただろ?遠距離射撃だけでもう勝敗は分かってたし」
「いえ、あの『大剣のオーガ』を一蹴されてましたけど。
しかも腕であの大剣を受けて斬られてないとかどうなってるんですか?」
「ああ、あれか。あの大剣をやったのは俺なんだよ。前に遺物を見つけた話をしたろ?あの中にあった大剣だ。
当然大剣の対策をしたパーツが遺物の中にあってもおかしくはないだろ?」
「あんな強力な大剣をあげるとか、なんで自分で使わないんですか?」
「自分の戦闘スタイルに合わないからやったんだよ。それに心配をかけたからな」
その後も大剣の話やヴァルトラウテが弟子のような関係だという話もした。
だからヴァルトラウテの弱点を知ってたから勝てた、ということにしておいた。
それでインタビューアーは納得して帰ってくれた。
しかし、その後ヴァルトラウテが来た。
「タケル、クサナギはどうなってるんだ?」
「どうとは?特に何もないだろ?」
「絶対飛んでたでしょ?着地もほぼ音がしなかったし、ビルの屋上にいたし」
確かに飛んではいたけどな。でも知られたくはない。誤魔化そう。
遺物にあったパーツでどうにかしたことにしよう。
「飛んでねぇよ。遺物にあった重力軽減ユニットで重量を軽くしてたんだよ」
「そんなパーツ聞いた事ないんだけど?」
「炎の大剣だってそうだろ」
「そりゃあそうだけど!そうかもしれないけど絶対飛んでた、絶対に」
「そう思いたければそう思ってればいいさ」
誤魔化されてはくれないらしい。
まあいい、どっちだって大した差はないか。飛んでても、浮かないまでも軽くなってもここでは珍しい事にはかわりない。
言いふらさないでくれればいいし、何かあれば今のところ遺物のせいにしてしまえばいい。インタビューアーにも遺物を手に入れた事は話してあるしな。
「ボロ負けした。遠距離射撃戦で話にならないことは分かった。
次は射撃戦で勝ってやるからな!」
「まぁ、頑張れ」
それから、ヴァルトラウテが当分大剣を封印し、大剣に頼らないことにしたそうだ。で、射撃戦強化を目指して再修行に入ったらしい。
強化がうまくいけばいいな。
### 続く ###




