第040話-5 旅行 水族館にて
セイラに引っ張られ売店でソフトクリームやアイスを買っていく。
ちょっと肌寒い季節にはなったけど、日中日が当たれば少し暑い。今日もそうで冷たいものはちょうどいい。
水族館に入る頃には食べ切れそうだしな。
水族館への一本道をアイスを食べながら歩いていく。
セイラはみんなのアイスとかを一口もらいながら楽しんでた。しかし、俺はセイラがソフトクリームを落としそうで怖い。
落とすなよぉ。
「あそこにあるのが水族館だ。ここも海面上昇で一旦休館してたのを、厳島神社の移築に合わせて建て直したんだと」
「じゃあ、この辺りも海に沈んでたの?」
「そうらしいな。昨日行った売店も高い所に移ってたみたいだしな.。
さあ、入ろうか」
水族館の中に入りチケットを買おうと受付に行こうとしたら、エリーがチケットを出してきた。
なんでもこの水族館はエリーの家の会社が出資しているとか。普段はチケットをもらったりしないのだが、今回は宮島に来るからと伯父さんに渡されたらしい。
普通に支払っても大した金額ではないけど、せっかくなので使わせてもらう。
「エリーのとこってこういう所にも出資してたのか」
「そうね。子供が楽しめそうな所は結構出資してたわ。使わないけど結構チケットをお父様がもらってきてたから」
「すごいね。でもなんで『子供が楽しめそうな所』なの?」
「他の所にも出資してるけど、『子供が楽しめそうな所』は重点的に出資して運営に協力してるわね。どうしてかは聞いたことはないけど」
「それな。伯父さん達の会社の人って皆忙しいだろ?子供のことを構ってあげられなかったから、親と子供が遊べるような所に出資してるとかって父さんに聞いたことがある。
それで小さい頃はチケットをよくもらって、セイラとマイケルさん達と動物園とかに出かけたことがある」
「へぇ、エリーの所はいい会社なんだね」
「身内としては大変だけどね」
という事でチケットを使って中に入る。
水族館は主に魚の展示を行っていた。瀬戸内を中心とした海域にいる魚を展示しつつ、よく食べるマグロやカツオのような比較的大きな回遊魚や可愛い感じの熱帯のカラフルな魚やクラゲなどの展示もしている。
クラゲは昔も人気があったとかで、ライティングなど工夫して展示すると凄く綺麗だったり可愛かったりでアリーシャが食いついていた。
セイラはマグロやカツオ、アジ、サバのよく食べる魚の展示に食いついていたけど……
エリーはみんなでいることが楽しいようだ。独り寂しくしていた分セイラやアリーシャと一緒に居て楽しそうにしてる。
俺はセイラと同じかな。食べる魚に興味があるのでそんな魚を重点的に見てる。
魚の水槽以外は今はペンギンはいるけど、イルカやシャチのような哺乳類はいなくなった。条約や法律の問題で飼育できなくなっている。
ただ、ここも動物園と一緒でケガをしたイルカやウミガメなどを保護し、その様子を見ることが出来る。
そのタイミングで集客のため宣伝をし、多くのお客さんが見に来ている。ただし、保護している動物の方からは見えないように配慮し、見物客も静かにしてもらうようにしている。
今回はそういった動物のいるタイミングではなかったので、ペンギンを眺めることにする。
ペンギンの飼育スペースにみんなで移動した。セイラとアリーシャが一番楽しみにしていたスペースだ。
決まった時間にペンギンの散歩が見ることが出来るということで、旅行が決まった後に調べて見たい見たいと盛り上がっていたのを覚えてる。
ちょうどそろそろという時間だったのでもうみんなスタンバイしている。小さい子達が最前列にいて、大人は後ろの方で見ている。セイラ達も後ろの方で待っていた。
そして……ゲートが開き、スタッフと一緒にペンギンが10羽ほど出て来た。
出てきたのは身体が小さい種類のフンボルトペンギン。ゲートを出てヨチヨチ歩きながらペンギンのスペースの周囲を散歩し始めた。
わぁぁ わぁぁぁ
回りにいる人達の歓声が聞こえた。セイラとアリーシャは2人手を握り合ってバタバタしているのが見える。よほどペンギンが可愛いとみえる。大声を出さないだけの分別はかろうじてあるみたい。
「エリーはもっと近くで見ないのか?2人と一緒に」
「いいわよ、ヤマトを独り占めできるし」
「そうか?それでいいならいいけどな。でも、2人と一緒に観るほうが楽しかったりしないか?」
「うう~、観たいけどいつも大人っぽくしてたから、2人と同じようにするのは恥ずかしい」
「学校じゃないし、リアルなんだからいいだろう?それくらい」
普段のエリーがデカい猫を被ってるのかもしれないけど、俺達といる時は素のエリーでもいいんじゃないのか?
はしゃいでるエリーも可愛いぞ、きっと。
散歩するペンギンを子供達が追いかけ、その後ろをセイラとアリーシャが追いかけ、そこにやっと覚悟を決めたエリーが加わっていった。
俺はそれを微笑ましく眺めてることにした。
20分ほど散歩に付き添い、ペンギンのフリフリするお尻をセイラ達が眺め満足したところで散歩は終了した。
「「「はぁぁ、可愛かったなぁ」」」
「おねえちゃん、ペンギンかわいかったね」
「そうね。持って帰りたいくらい可愛かったね」
「ペンギンって飼えないの?」
「難しいね。あんまり暑いのはダメだし、お水もたくさん必要だから」
「お父さんがいっぱいお金を稼がないといけない。忙しくなっちゃう」
「パパがいそがしいとやだなぁ。あそんでもらえないよ」
「じゃあ、見に来るだけで我満ね」
「うん」
今日も小さい子と仲良くなったようだ。いいお姉さんというかいいお母さんになれそうだな。動物園の時もそうだった。
その後もペンギンのスペースで、スタッフが餌を与えているのを小さい子達とセイラ達3人がキャッキャ言いながら見てる。
将来的にはこんな感じに子供と一緒に来て楽しむ日が来るんだよな。そんな近未来の情景が今目の前に展開中だ。
まぁ、お母さんらしくということでは、3人に少しくらい料理を仕込んでおいた方がいいのかもしれないけど。
セイラ達3人と子供達がペンギンに満足したところで、ちょうど昼食に良い時間となり解散となった。
子供達の両親達と砂浜の方に向かうようだった。お弁当でも持って来ているのだろうか。
「ばいば~い」と言って子供達が親と離れていく。
エリーが羨ましそうに、セイラとアリーシャは微笑ましそうに、その光景を眺めていた。
そしたら突然……
「「「ヤマト、早く子供が欲しい」」」
「無茶言うな。まだ学生なんだし、卒業してたからだ。偶発的に出来たりしたら別だけどな」
「パパ達は子供が早く出来て欲しいって言ってたよ。ね、セイラ」
「うん、うちのお父さんもそう言ってた」
「お父様も頑張れって言ってたわ」
「けじめの問題だから、後2年くらいは我満だ」
「「「むう〜」」」
と、子供の事を話しながら歩いてると、会話が聞こえていたのか若い野郎共が鬼のような形相で睨んできた。しかも、中指おっ立てて。
知らない奴等とはいえ、リアルで集団にあまり睨まれたくないな。
ケンカは強くないし、一応平和主義者だし?
### 続く ###




