第040話-2 旅行 観光から旅館まで
豪華な昼食を腹いっぱい食べ終え、少し離れた場所にある原爆資料館の方に行く。
この辺は昔自治体の中心地だったコミュニティで、すぐ近くに2つも比較的大きいコミュニティがあるからなかなか人が多い所。
過去の戦争中に原子爆弾を落とされ、もう人が住めないだろうと言われた事がある所だ。それでも復興して大きな都市になったらしい。人口が大きく減った今でも地元よりは人が多く住んでいる。
そんなコミュニティに原爆資料館は昔からある。
資料館に入る前に公園の売店で飲み物を買って一休み。
「ここも公園が大きいね。緑も多いし、ゆっくりできそう」
「向こうに慰霊のモニュメントがあるし、もう建物はほぼないけど、原子爆弾が投下された時の建物があった場所が残されてる。壁が残ってるくらいだけど。な、セイラ」
「寂しい感じであんまり好きじゃない」
「たくさん人が亡くなった時の建物だからな。一応見とく?」
「……うん」
しばらくこの辺の昔の話をした。俺もじいちゃんや先生に聞いた話をしてるだけで、それほど詳しくはないけど。
それから資料館の方に入っていった。
建物は何度か建て直されてるらしいからきれいだ。
ただ、中は見学の人も少なく静かで静謐とした空間になっている。
高熱で変形した金属やガラス、血がたくさん付いた衣服、爆風で壊れた壁、等現品で保存され、当時の市街地の被害写真や被災者の火傷の写真等はデジタル映像で表示されていた。
どちらもかなりの被害があったことを俺達に教えてくれる。
更に原子爆弾投下後どのような状況になったかが分かるシミュレーションの立体映像もあった。
単純な熱戦や爆風だけでなく、被爆した塵が風や雨で離れた所に落ち、塵から発せられる放射線によって更に被爆するという被害についても語られていた。
そのため後日亡くなる人も多くいて、その子供や孫などが影響を受けた人も多くいたということだった。
原子爆弾のような核兵器は直接的な被害だけでなく、放射線により遺伝子に被害を与える。場合によっては世代を超え長期に被害を与える。そんな悪魔の兵器なんだと思い知らされる……
「大昔にそんな酷い兵器を作ったんだね?」
「そうだな。こんな兵器はあってはいけないんだ」
「そうだよね、こんな怖いことはないよね。だから小さい頃泣いちゃった」
「うん、ダメだよね。こんなの使っちゃあ。戦争も人が死なない方がいいな」
「大昔にスポーツで戦争の勝敗を決めたって話があるんだよな。ならゲームで決着つけるのもいいよな」
「E.G.G.なんかでいいんじゃない?戦争と同じような事が出来るよ」
「ああ、あれなら人が死なないもんな」
しかし、展示している品自体ももうかなり古い。
メタバース用に高精細なスキャンをしてデータとして残してはある。が、リアルにはやっぱり敵わない雰囲気というものがあると思う。写真はまだいいけど、いつまでもきちんと遺して欲しいものだ。
しっかり資料館で学んで、もうかなり朽ち果てた原子爆弾が投下された時にあった建物を見て、あの時どうだったかに思いを馳せこの地を後にした。
エアーモビリティのポートまで戻り、預けてあった荷物を受け取って宮島に向かった。
モビリティでフェリー乗り場まで行き、フェリーを待つ。それまで海を眺めていた。
今日は天気もよく風も波も落ち着いてて海面は穏やかだった。穏やかに波が寄せては返していた。
「「いい風景だね」」
「ちょうどこの間話したように宮島も紅葉が見頃で真っ赤になってるな」
「へぇ~、これが紅葉なんだ」
「紅くなる葉にちなんだお菓子があるぞ」
「もみじ饅頭だよ。美味しいよ」
フェリー乗り場にももみじ饅頭は売ってるんだけど。買うのは向こうに渡ってからな。
しばらく待ってるとフェリーが来た。セイラが嬉々としてアリーシャの手を引っ張ってフェリーに乗り込む。
俺はそれに続いて乗り込む。別に始めてというわけではないし、子供じゃないからあんなにはしゃがない。
「セイラ、海に落ちるなよ。アリーシャ、しっかり見ててくれ」
「ぶぅ~、落ちないよ」
「セイラ、大丈夫だよ。私もいるから落ちないよ」
「あと、風に当たりすぎて体を冷やすなよ」
「「ぶぅ~」」
10分程すると宮島に着く。そんなに離れてないからすぐに着いた。
宮島のフェリー乗り場に降り外に出ると……鹿がいた。そんなにたくさんではないけど鹿がその辺を歩き回っていた。
「……鹿が放されてるけどいいの?」
「奈良の鹿と一緒で神聖な動物として保護されてるんだよ。ただ、あんまり触るなよ?誰かが世話して身体を洗ったりしてないからな?」
「ヒィィ、ノミとかいるよね」
「ああ、いるはずだ。小さい頃セイラが触って大変な事になったから」
「小さかったんだから仕方ないじゃん」
あの時は鹿が珍しくてセイラがベタベタ触ってたからな。
それでノミかなんかもらってホテルで髪の毛を散々洗わさせられた。
大人は皆酒飲んでグダグダになってて、もう俺が洗ってあげるしかなかったんだよ。
ここでは鹿は見るだけにして、土産物屋等の通りに入ってもみじ饅頭とかのお菓子を買い込んで旅館に行くことにする。
あんこ以外のもみじ饅頭があるので2人がどれにするか悩んでいる間に、俺は他のお菓子を選んでいた。求肥餅や柚餅子、煎餅とか選んで買う。
セイラとアリーシャは何種類か入っている箱のを2つ持ってきたので買っていった。帰りはまた買う事になると思うけど。
そこから旅館まではしばらく歩くと到着する。少し高台の所にある旅館だ。
入口の所からも海が一望でき、2人はその光景に目を奪われていた。夜は対岸の灯りもあり、更に綺麗に見えると母さんが言ってた。
「いらっしゃいませ」
「予約した両国なんですが」
「お待ちしておりました、お連れ様が先にお一人お待ちになってますよ」
「はぁ?3人のはずですけど。母さんが来てる?
セイラとアリーシャは何か聞いてる?」
「「知らない」」
「いえ、両国様ではなく、そちらのお嬢様方と同じ歳くらいの方ですよ?」
母さんからも聞いてないんだけど誰だ?
予約は3人でしてるはずなんだけど。
「予約は3人ですよね?母さんに任せたんだけど」
「いえ、両国様からは4名様で承っておりますが……」
はい?どういう事だ?
後ろに居るセイラとアリーシャの方を見たけど、2人共大きく首を横に振っていた。
予約人数的に問題ないなら支払いは父さんだからいいけど、誰なんだ?
セイラとアリーシャを夜にいっぱい可愛がれないんだけど。
母さん、どういうつもりなんだ?
今ここで話していても仕方がないから、鍵をもらって部屋の方へ向かう。
上の階に登り海側の方の部屋の1つの前に到着する。
後ろにいる2人に確認してからドアをノックする。中から「はぁ~い、どうぞ」と声が聞こえたのでドアを開けて中に入る。
中に入ると……
「来ちゃった」
「来ちゃったじゃねえだろ?」
中にはエリーが1人いた。何で居る?
遠縁とはいえ親戚だから母さんに頼むことは可能だろうが、セイラとアリーシャの3人でしっぽりと仲良くするつもりだった事は知ってたはずだから、エリーも一緒に来てそんな事はさせないというような無粋な事はしないと思いたいんだけどなぁ。
くそぉ、仕方がないか。
とにかく中に入ってくつろぐ事にする。
4人が寝るにしても十分な広さのある部屋で、窓から海が見える眺望はなかなか素晴らしい。
セイラとアリーシャは荷物を置いてから、もみじ饅頭等のお菓子を広げてエリーと話し始めた。俺は手持ち無沙汰なのでみんなにお茶を入れて出した。
「エリーは何でここに来たの?」
「2人がヤマトと宮島に行くって言ってたじゃない?エリス叔母様に確認したら一緒にいってらっしゃいって部屋を取ってくれたの」
「じゃあ、明日も明後日も一緒に遊べるね」
「セイラ、一緒に遊べますけど、3人のお楽しみの時間を邪魔してるんですよ?」
「エリーも混ざればいいよ。ね、アリーシャ?」
「うん、エリーもヤマトが好きなんでしょ?いいんじゃない?」
セイラさん、アリーシャさん、俺を無視して何を進めてるのかな?
エリーにまで手を出したらマジに学校で吊るされるだろ。
とにかく旅行中は大人しくしていよう?
エリーが一緒に泊まるというのは予定外だったが、遊ぶくらいは拒否するほどのことでもない。親戚だし小さい頃から知ってる仲だし。
ただ、旅館の人達はどう思ってるんだろうな?
男1人に女の子3人とか、それもまだ学生で一緒の部屋に泊まるというのは世間的に良くないだろう。もしかして、母さんが何か吹き込んでるのか?
3人が話しているのを、横でお茶のおかわりを出しながら考え事をする。
……なんというか、そんな事まで母さんは旅館のスタッフに話すのか?恥ずかしいだろ?
今日明日と3人は俺の嫁という感じだ。エリーは本当にそれでいいのか?
### 続く ###




