第038話 メンテナンス3
大会の中盤前半戦をなんとか勝ち抜いて今に至る。
最後は完全に負けていたけど、知らないうちに起動した『オーバークロック』で対戦相手のジャイロディーンを倒したという奇跡で勝ち残れた。
しかも、『オーバークロック』はCPUに無理をさせパーツにも無理をさせる機能だが、自動で敵機を倒してくれるはずはないのだが倒してくれたようだ。
本当に運だけで勝てた。
クサナギ自体はフレームに普段ではあり得ないほどの疲労が蓄積されていた。通常のメンテナンスの場合は簡単には回復しないレベルだった。
宇宙戦艦内のメンテブースでメンテを数日行い、フレームの交換などするが修復可能となっている。
一応宇宙戦艦にはファントムの全てのパーツの予備が各100以上あるので、少々大破して修復できなくても問題は無い。
しかし、いくら使ったんだ?ナム・サンダーは。
ついでに、後半戦の構成に今の内に交換してしまおう。
後半戦はバックパックもファントムの物に換装する。シールドバインダーの追加はないが、一応『飛べる』。
飛ぶ予定はないが、更にジェネレーター出力が追加され、ホバーリングの加速も強化される。どこまで速度が上がるかは試した事はない。
これで頭部以外はファントムだ。アーマードギア本体の構成はこれ以上交換しない。
後、ヒートソード、大型ビームサーベルはそのままで、銃火器は威力の高い物に変更する。特にスナイパーライフルは一番高威力の物に替えた。
威力も高いが反動もでかい。が、ファントムの腕部ならなんとかなるだろう。
これで次の対戦でどうにかなればいい。ジャイロディーンくらいのプレーヤーだとどうなるかな……今は自信がない。
今のところこれ以上の事は出来ないか。
後半戦は更に厳しくなるけど、これでどうにかなれば良いんだが。
後はケスカ向けの小型軽量タイプのパーツの確認だ。
宇宙戦艦のサポートAIにリストアップさせておいたが少しはあったようだ。
小型の高出力ジェネレーターと強化ユニット2種があった。
ジェネレーターは、一般的なジェネレーターの約1.3倍の出力の物だ。小型軽量なのに高出力だ。
元々ファントムの補助ジェネレーターとして入手したらしい。
強化ユニットは装甲値が1.5倍、反応速度が1.3倍になる優れ物だ。ただ装備すると特定の装飾が施される。その装飾が我満出来るのであれば使えるパーツだ。それが2種類。
ジェネレーターの方はいいとして、強化ユニットの方は……俺はちょっと考えてしまう代物だ。ケスカのプレーヤー アナビトリアだっけ、が気に入る可能性はある。
『可愛いは正義』とか言いそうだ。
しかし、どこがこんなユニットを作ったんだ?
炎の大剣や他のパーツもフレーバーテキストを見る限り、魔法っぽい機能が備わっている。使えるかは不明だが、これまでこんなパーツはなかったはずだが。
ファントムが行った過去の世界のゲーム中のアイテムだったりするのか?
小型軽量タイプのパーツが見つかったということで、ケスカのプレーヤーにメッセージを入れておいた。
ちょうどE.G.G.にダイブしているということで、ラウンジで待ち合わせる事にした。
ラウンジで待っていると、だん吉、マッカーサー、ヴァルトラウテ、静御前が何故か集まって来た。約束とかしていないはずだが。
「タケル、この間は大丈夫だったか?」
「この間?」
「オーバークロックってのをやっただろ。お前もクサナギも大丈夫だったのか気になってたんだよ」
「それなら大丈夫だ。クサナギもメンテが終わったし、次の対戦に向けて構成を替えた所だ」
「ならいいけどな。あんな技は初めて見るしな。話題になってるんだよ」
昔からあった機能なんだけどな。制限されてて出来ないだけで、本来はみんな出来る事なんだが。
制限されているのを知らなかったから、やらないだけだと思っていた。
でも、こいつらは存在すら知らなかったようだ。
ファントムの事をちょっとでも調べれば分かるはずなんだが。
「で、タケルはラウンジで何してんの?」
「この間対戦したケスカのプレーヤーに小型軽量タイプのパーツが見つかったからやるんだよ。それで待ち合わせてる」
「え〜、2人だけ何するつもりだったんですか?」
「何もしねぇよ。ナンパ目的でパーツをやるつもりじゃないからな?」
「タケル、ホントだろうな?」
「ヴァルトラウテにもパーツをやっただろう。ただの支援活動だ」
「私はもらってません」
「静御前はあんなパーツをやるレベルじゃない。もっとちゃんとチュートリアルをこなせ」
「ぶ〜~」
だん吉、マッカーサーはいいとしてうるさい奴らに捕まってしまった。
ケスカのプレーヤーに迷惑にならないと良いが。
「久しぶりね。クサナギのプレーヤーさん」
「面倒だからタケルでいい」
「じゃあ、こちらもアナビトリアで。呼びにくかったらアナでいいわ。
で、この方々は?」
「知り合いだ。ここで待ってたら捕まった」
「そうなの。で、どうしましょうか。こっちのメンテブースでパーツを見せてもらいましょうか?」
「それでいいなら。こちらも確認しておいた方がいいからな。使えない物を渡しても仕方ないしな」
とりあえず挨拶も終わり、パーツの確認のためアナビトリアのメンテブースに移動することになった。
が、ヴァルトラウテと静御前が付いていくと言い始めた。
俺のメンテブースではないからなぁ。
「いいですよ、別に秘密があるわけではないですし。男のプレーヤーと2人っきりになるのは、やっぱり怖いので」
「一応安心な部類の男だと思うが、俺は」
「「じゃあ一緒に付いていきます」」
「「あの~、俺達は?」」
「いいですよ。でも大人しくしていてください」
「「……はい」」
ということでアナビトリアのメンテブースに来た。
中に入ると……凄かった。
何が凄かったかといえば飾りがだ。
ぬいぐるみやレースを被せたソファーや椅子などがあり、おおよそ少女趣味というか可愛い物好きの人の部屋だった。
プレーヤー本人は美人系のアバターなのだがギャップが大きい。
これには静御前が反応し、キャアキャア言いながら見て回り、許可を取ってぬいぐるみを抱きかかえていた。
俺達男3人唖然とした顔をしていた。
俺はまだ可愛い物が好きなんだろうくらいには思っていたが、レベルが違った。だん吉達もそう思っているのだろうか。
「何よ?いいでしょ、可愛い物が好きなんだから」
「そうは思っていたが、あまりのレベル違いで……」「「うんうん」」
「みんなそういうわ。リアルでもね」
とりあえずメンテブースのことは置いておいて、渡すパーツの方に集中する。
先ずはジェネレーターだ。
「これが手持ちの小型軽量タイプのジェネレーターだ。
小型軽量でも一般的なサイズの普通のジェネレーターの出力の1.3倍はある。今使ってる小型のジェネレーターと比べれば、1.5倍以上は出力に差があるはずだ」
「これって超高級品じゃないの?普通に買ったらいくらするのよ?」
「いくらするんだろうな?マッカーサー、知ってる?」
「俺も小型機用のパーツはチェックしてないけど、今使ってるモデルの3倍4倍はするんじゃないか?」
「そんなにするのか……でも、こっちも使わないしな。好きに使ってくれ」
「……ありがたく使わせてもらうけど、後から返せって言われても返さないわよ?」
「いいよ、別に…………(ぼそぼそ)いくらでもあるから」
「え?何か言った?」
実際まだまだ在庫がある。壊れてもまた無料で上げても惜しくないくらいある。何なら10個まとめてあげてもいい。
もらってくれれば倉庫のスペースがいくらか空くから助かるくらいだ。
「次が目玉パーツだ。汎用の強化ユニットだ。
装備すると装甲値が1.5倍高くなり、反応速度も1.3倍速くなるという代物だ。
二つの内どちらか使ってもらえればと思うけど、一つはヒートソードや銃火器の威力も1.3倍になる。もう一つの方はそれがない。
ただし……装備した状態に不満がなければだが。一応フレーバーテキストは確認して選んでくれた方がいいと思う」
「……うん、いいねぇ。両方もらって気分で切り替えたいね」
「両方欲しいならそれでもいいけど」
「タケル、何なんだそれって?」
「じゃあ、装備してもらってみてみるか。いいか?」
「いいよ」
先ずはタイプA機体の強化のみの方を装備させてみた……うん、可愛いな、うん。
タイプAはメイド服バージョンだ。ケスカの機体にメイド服状の装飾が装備された。
パフスリーブ風の肩パーツに短いスカート状のパーツが目立つ。フリル風のパーツが各所に配置され、ミニスカメイドの出来上がりだ
装甲値は今不明だが、腕や脚を動かした所以前よりも高速に動き反応が速い。
ただ……この状態がいかがなものかということなのだが……
「……いい……いいね」
「そうだね。可愛いよね。私もこの装備が欲しい」
「「「「…………」」」」
いいのか……まだあるが、アリスティアは巫女服状態だろ。メイド服にしてどうする。
アナビトリアと静御前が意気投合しあれこれ装備について話していた。
この装備でアナビトリアの反応がいいから、次のもそう問題はないだろう。だん吉とマッカーサーがドン引きするかもしれないが。
「じゃあ、次行こうか。これだ」
装備をタイプBに変更した。こっちは更に凄い、まぁ可愛いとは思うが。
タイプBは魔法少女を模した装備だ。メイド服バージョンより更にフリフリでミニスカ状態だ。
無駄に多くのリボンで飾られ、腰部にも大きいリボンがあり後方に伸びてひらひらしている。
メイドバージョンのカラーリングが白と黒に対し、魔法少女バージョンはピンクや黄色のパステルカラーでカラフルな配色になっている。
戦闘中あれは目立たないだろうか……普段隠れるように戦闘しているのに。
「凄い凄い、凄くこれいい。絶対これにする」
「私もこれがいいよ。タケル、私にも頂戴」
「まだ武装の確認をしていないだろ。こっちは武装も強化されるんだ」
ヒートソードを出すと……魔法のステッキだった……一応フレーバーテキストを読んでいたが、実物を見るとくるものがある。
更にスナイパーライフルを構えさせると……魔法のステッキではないが、戦闘系魔法少女の方に出てくるような槍に似た形状になっていた。
「「「「…………」」」」
「凄い、凄すぎる。私の理想の形だよ。これ、本当にもらっていいんだよね?」
「……え?あ、ああ、大丈夫だ。そのまま使ってもらってかまわない。こんなので良ければ、また見つけた時に提供しよう」
「次は私に頂戴よ」
「静御前、お前はまだ今の機体も使いこなせていないのに、こんな強化ユニットなんか使わせられるわけないだろう?
きちんとチュートリアルこなしてもっと基本を身につけて、今の機体を使いこなせるようになったら探してやるよ」
「本当に?本当だよね?必ずだよ?」
またうるさい奴が現れてしまった。
アナビトリアは十分満足したようで、タイプBの装備のままチュートリアルでテストするために出ていった。
静御前はそのチュートリアルの状況をモニターで確認し興奮している。
ケスカのような小柄なあの機体があのひらひらとした装備をまとい戦闘しているところを観ると、伝説の魔法少女アニメを彷彿とさせるものがある。
「おい、タケル。大丈夫なのか?あんなの渡して」
「大丈夫だろ?だん吉」
「いやいや、アレじゃあ目立ちすぎるだろ?元々隠れてアサシンみたいな事してたのにあれじゃあ隠れられないだろ」
「そうは言っても本人が気に入ってんだからどうにかするんじゃないか?これまでみたいに。
あの強化ユニットがあれば装甲も硬くなるし、反応速度も上がるから簡単に掴まらないだろうし、なんとかなるさ」
「でも、ヤバイ物を世に放ったような気がするのは俺だけかな?だん吉、ヴァルトラウテ」
「あたしもそう思うよ」
あれだけ気に入っているし、今更返せとも言えない。使いこなしてもらうとしよう。
ただ、静御前がうるさくて困る。
その後E.G.G.内で妖精が出たとか魔法少女を見たとかという噂が聞こえるようになった。
その妖精や魔法少女に一部でファンクラブが出来たとか。
とりあえず掴まらないように頑張って下さい、アナビトリアさん。




