第037話-2 競技大会中盤前半戦 8回戦目
今日は中盤前半戦の2戦目の8回戦目。
前のユウキとの対戦では両腕部に傷を受けたが、まぁ大したダメージではなかった。
いつも通り宇宙戦艦の方で修理と調整をして今日を迎えた。
現状頭部、腕部、バックパック以外はファントムからの流用なわけだが、容積の比率からいけばファントムである比率のほうが高い。
ファントムの特徴であるシールドバインダー4枚ではないからまだバレていないようだが、見る人が見ればもうファントムと言っても過言ではないだろう。
元々ファントムのリバイバルパーツで構成していたからバレていないだけだよな。
対戦前のためラウンジの方で、他のプレーヤーの対戦を観る。
観ると結構皆潰し合いながら戦闘をしている。次の対戦の事を考えていないプレーヤーが多い。勝っても次の対戦相手の状態次第では負けてしまう。
まだ余力を残して勝てるようでないと、中盤後半戦まで勝ち上がれない。
シード権を持ってる上位プレーヤーの一部が中盤前半戦から出てくるが、余裕を持って勝っているのがよく分かる。
そういうことを考えながら対戦を見ていると、だん吉がこちらに来た。
「よう、だん吉。どうだ?調子は」
「今日上位プレーヤーと当たっちまって負けた。ボロボロになって修理代が厳しい。
でも、上位プレーヤーの方もかなりダメージを与えたけどな」
「運が悪かったな。あの盾が使えたら勝てたかもしれないのにな」
「そりゃあ仕方がねぇよ。大会中にもらったんだからよ。それこそ運の問題だろ」
割り切ってくれてるならいい。
でも、もう上位プレーヤーに当たるとはついてないな。
上位プレーヤーと言ってもレベルの低い方のプレーヤーが出てきているが、それでも強いからな。
「タケルの方はどうよ?」
「まだこれからだ。上位プレーヤーではないからまだいいけどな。
調べた限りなら威力の高い銃火器を使うプレーヤーだ。射撃戦になるんじゃないかと思ってるが」
「お前も射撃戦のまま相手の都合の良い戦闘をするわけ?」
「どうだろうな?なんとか近付いて格闘戦に持ち込むつもりだが、ステージ次第だろ。見晴らしのいいステージなんかだと接近は難しくなるしな」
一応こっちも高威力の対戦車ライフルを準備している。
威力はデカいがバレルが長いから取り回しが効かない。市街地だと使いにくいから、アサルトライフルで隠れつつ接近だろう。
その場その場で戦略を替える事になる。
ただ、対戦車ライフルは反動もでかいから、機体にも影響が出そうで怖い。
「まあ、頑張れよ。盾の分ぐらい応援してやるから」
「ああ、頑張るよ」
そろそろ時間か。メンテブースへ移動する。
クサナギ<改>の周辺を回って外観を確認してからコクピットに潜り込む。
動作状況を確認してから、転送される時を待った……
<<<Battle Start>>>
転送されて来た場所は山岳地帯の山肌だった。
俺はその中で1番低い場所に降り立った。周辺は木々はなく岩や砂利ばかりで、隠れる場所も少ない。
上の方から下を見れば大体敵機が見えるという状況だ。崖のように切り立った場所であればいくらか隠れられるかも知れない。
ドガッ
クサナギの目の前に大きな弾痕が出来ていた。
射線を解析すれば上から狙撃された方向が分かり、すぐに上を確認したら相手の機体「夢幻」がいるのが見えた。
距離的にアサルトライフルの銃弾が届くが、威力が落ちて傷も付けられない事が分かっているからだろう。隠れることすらしていない。
『くっそぉ、出現ポイントに差がありすぎる。やり直しを要求する』
そんな冗談を言っても仕方が無いのですぐに移動する。
こちらはアサルトライフルから対戦車ライフルに変更する。アサルトライフルより格段に威力と射程距離があるから、山の上にいる夢幻にも届くし、当たればかなりのダメージになる。
次の相手の射撃のタイミングにこちらも撃ち込む。
かなり距離が離れているため、パイルバンカーを撃ち込める距離まで接近するにはかなりの時間がかかる。
とにかくランダムに蛇行しながら登っていき、相手の射撃を待つ。
ドガッ
撃ってきたが当たらない。銃弾の射線から敵機の位置を確認し、急停止して対戦車ライフルを撃ち込む。
ドオォォン
対戦車ライフルの反動も大きく、機体が後ろに押され体勢が崩れる。
しかし、すぐに移動を再開する。向こうも警戒している間に距離を詰めたい。
夢幻Side
ドオォォン
対戦相手のクサナギからの反撃が来た。音と衝撃波からするとかなりの威力のある銃弾のようだ。アサルトライフルではないかなり威力のある銃火器だ。
クサナギはよくスナイパーライフルも使っていたようだが、あれではこちらにダメージを与えるには威力が足りない。
こちらにこの距離でダメージを与えられるそんな銃火器を、動きながら使えば命中率は格段に落ちる。そうそう当たらんだろう。
こちらは別の場所に移動してまた落ち着いて狙撃すればいい。
まぁ、こちらも威力がありすぎて、移動する標的にはなかなか当たらんがな。
タケルSide
『くぅ、簡単には当たらないか。向こうはほとんど動いていないのに』
とにかく距離を詰めていくしかない。
今の状態で射撃していれば対戦車ライフルの反動にクサナギの腕がいつまでも耐えられはしないはず。フレームや関節にかなりのダメージが蓄積される。
接近してもヒートソードやアサルトライフルが使えないのはさすがによくないし。
ドガッ
ドオォォン
いつまでクサナギの腕が保つか考えていても相手は容赦なく撃ってくる。すぐさまそれに反撃をして対戦車ライフルを撃ち込むしか今の所手はない。
接近するまでなんとかクサナギの腕を保たせなければいけない。
更に移動し、数発お互いに銃弾を叩き込む。相手の着弾位置がかなり近付いてきた。そろそろ当たることを覚悟しないといけない。
まだ距離は半分も詰めていない。一度どこかで休憩したい。
目の前に上からでは見えなくなる切り立った崖のような岩場があった。一旦そこに移動し隠れる。
夢幻も隠れたことは把握しているだろうが、どちらから出るか分からない分少しだけ相手を惑わせ時間を稼げる。
『ふう、対戦車ライフルの反動が強すぎる。ファントムの腕部に換えとけば問題は無かったはずなんだけどな』
対戦車ライフルの残弾は後9発。バレルも加熱してきているから冷ましながら撃たないとダメだろう。
こういうときに何か冷却できるパーツでもあれば、移動中に冷ます事も出来るのだが。
少し休憩を取り、対戦車ライフルのバレルもいくらか冷えたところで移動を再開。
これまでと進行方向を逆に移動を始める。向こうも読んではいただろう、気にしない。
今まで以上にスピードを上げて隠れていた岩場から飛び出す。
夢幻Side
向こうの出てくるタイミングで狙う。どちらから出るか次第だが、まっすぐ出てくれば当てやすい。
ドガッ
これまでの移動速度で狙いを定めていたら、それ以上のスピードを出して出て来た。
クサナギの背後に着弾した。
『何ぃ、クサナギはあんなに速度が出るのか?なら、なぜ今まで出さない?持久力があるのか?
相手のスペックを把握し損ねた』
かなりの時間、クサナギの行動を観察していたがあれだけの余力がまだあるのか?
それなら舐められてたようだ。
こちらも全力以上を出して墜としてやる。
タケルSide
更に加速させ山肌を駆け上がる。
夢幻の射撃は続き、徐々に精度が上がり、敵機の銃弾がクサナギに届こうとしている。今はかろうじて当たっていないだけだ。
ガシュッ ドガッ
ドオォォン
ついにこちらの機体に掠った。まだ破損はしていない。戦える。
ただ、こちらの射撃は当たらない。
もっと加速させる。更に加速させる。
ランダムに蛇行しながら走らせ、夢幻の未来予測を裏切る。
ドガッ
ドオォォン
夢幻Side
『また外れた。そろそろ当たれよ。墜ちろ!墜ちろ!』
クサナギの加速が更に上がってる。どこまで速くなるんだ?
それでも掠るまではいくが直撃しない。
でも、いくら速くなっても蛇行していれば、いくらか速度が落ちるタイミングがある。そこを狙う。
バギィ
やった!クサナギの左腕に当たった!
タケルSide
左腕が弾け飛んだ!?夢幻の銃弾が当たったか……
後もう少しで夢幻に辿り着くところなのに。
右腕一本で対戦車ライフルを撃ってみるが、とんでもない所に飛んでいく。
照準が固定出来ない。
元々牽制ぐらいのつもりだったからまあいい。後4発。
更に当たらないように、今よりもっと大きく蛇行しながら夢幻に接近する。
ドガッ
当たらない。もう少し、もう少しで辿り着ける。
ドオォォン バギィ
今度は対戦車ライフルが吹き飛んだ。
でもこの距離ならアサルトライフルでもダメージはつく。アサルトライフルを引っ張り出した。
アサルトライフルを乱射しながら、更に更に加速させる。
この加速ももう限界だ。俺の身体が保たない。
ダダダッ ダダダッ
夢幻も回避し移動する。移動した先でまた撃ってきた。
しかし、狙いが定まらなかったようで外れた。
今度は止まって射撃。
ドオォォン バギィ
右腕がアサルトライフルと一緒に吹っ飛んだ。
これを見た夢幻は勝ちを確信したようで、動きに警戒心が感じられなくなった。
当然かもしれない。両腕が破損しメイン火器の使えない機体で闘えると思っていないのだろう。
しかし、夢幻までもうすぐだった。
俺の身体の事など無視して更に加速させ、夢幻に辿り着いた。そのまま回りを周回し始める。
夢幻はヒートソードを取り出し斬りつけてくるが、そこにはもうクサナギはいない。
斬りつけてくる夢幻を躱し、夢幻の背後でクサナギをジャンプさせ攻撃する。
『必殺<仮>』
夢幻に対してパイルバンカーを撃ち込む!
しかし、夢幻も背後から攻撃されるだろうと予測していたようだ。左から来るパイルバンカーに左腕を突き出し、シールドバインダーごと止めた。
『クサナギ、これで俺の勝ちだな?』
『まだ終わりじゃねぇ!!』
時間差で左のシールドバインダーを夢幻に突き出す。
これをまた夢幻は右腕で止める。
『もう終わっただろ?』
『どうかな?喰らえ』
左のシールドバインダーのビームキャノンをぶっ放した。
夢幻の右腕は融解し、撃ち出されたビームはそのまま胴体をも貫通した。
貫通したビームはコクピットをも焼き尽くしていた……
<<<Battle End>>>
終わった……
左のシールドバインダーはビームキャノンにしておいて良かった。
パイルバンカーだと止められていた。
でも、ビームキャノンよりパイルバンカーで止めを刺したかった。パイルバンカーは男のロマン。
しかし、両腕を持っていかれて、夢幻が油断してくれて助かった。それがなかったら負けてたと思う。逃げながら射撃をしてれば良かったのだから。
それを考えれば、腕ぐらい安いものだろう。
修理は腕部の交換だからすぐ済む。
一旦気分を変えるためにラウンジに出る。そこにはまだだん吉がいた。
「随分やられたな?タケル」
「出現位置が悪すぎだ。向こうは狙い放題だったぞ」
「運だから文句を言っても仕方ないだろ」
「勝ったからまだいいけどな?負けてたら運営にクレーム入れてたよ」
「意外にクレーマー気質だったんだな、お前」
そりゃあお金も心血も注いで鍛えた機体がやられるとか、黙って見てられないだろ。あそこまで状況に差があったら。
まぁ、交換パーツもあるからまだいいけどな。
「次の対戦は大丈夫なのか?」
「交換パーツがあるから問題はない。交換して調整すればいいだけだ。
それに交換パーツの方が性能がいいから」
「そうか、なら大丈夫だな。
でも……お前はビームキャノン使えんの?」
それには答えず、そのままだん吉と対戦の感想を話した。
その後は宇宙戦艦の方に移動しパーツ交換と調整を指示して、今日はもうE.G.G.から落ちた。
### 続く ###




