第037話-1 競技大会中盤前半戦 7回戦目
新入生が入ってきてちょっとトラブルになったが、あの新入生も改心したようで何もしてこなくなった。
でも、他の新入生がセイラとアリーシャに近寄って来なくなったわけではないが、その內落ち着くだろう。まだ少し時間がかかるだろうけど。
E.G.G.の方も競技大会中盤戦に今日から入る。
序盤戦よりレベルの高いプレーヤーが出てくる。ここからは簡単にノーダメージで勝つということも出来ない。
ということで、今回もファントムからのパーツの移植を追加する。
今回の移植はシールドバインダー(ビームキャノン装備)、両脚部。
シールドバインダーの装甲強化、反応性に加えて、ビームキャノンの打撃力を加えれば攻撃力、防御力の大幅アップが見込める。
脚部も高性能なファントムのパーツからの移植のため、機動性も格段にパワーアップしている。
バックパックを交換すれば空も飛べるはずだが、まだそれは出来ない。
今回の大会では使う予定はない。
使う必要もないはずだし、中盤前半戦は突破するだろうが後半戦はたぶん厳しくて負けるだろう。
それまでは少ないダメージで勝たなければ……
順調にメンテも終わらせ、中盤前半戦初日。
ラウンジに座って他の対戦を眺めている。今日はアレの事を考えている暇はない。前半戦初戦は精神集中して迎えたい。
今日の対戦相手のグラスホッパーはなかなかの強者だ。序盤戦の対戦相手のような弱い者はいない。序盤戦ではスピードで対戦相手を翻弄する戦闘スタイルで完勝していた。射撃主体の構成だが、スピードを活かしたヒートソードによる攻撃もなかなか強かった。
今回も同じ戦いになる可能性が高い。こちらも脚部を強化しているからスピードで負けはしないだろう。
他の対戦を見ながらあれこれ考えていると、ヴァルトラウテと静御前が連れ立ってこちらにやってきた。
仲良くなったわけではないようだが、いろいろ話をしながら歩いている。
こちらとしてはどうということはないけど、姉妹弟子くらいにお互いに強くなってくれればと思う。
「タケル、この後対戦だよな?頑張れよ?」
「それはヴァルトラウテも一緒だろ。この先、炎の大剣だけで勝てるつもりでいるのか?ちゃんと戦略を練ってるのか?」
「うるせぇ。まだまだ大剣だけで勝てるんだよ」
「タケルはヴァルトラウテが勝てないと思ってるの?」
「ああ、中盤戦に入ったんだ。相手の戦闘レベルも上がってる。射撃が上手い奴もいるし、あの大剣を使ってても格闘の上手い奴はヴァルトラウテに勝てる」
相手の戦闘レベルがあがれば、武器や機体性能だけでは勝てなくなる。
それが上位プレーヤーだ。
ファントムに俺が乗っても、勝てない上位プレーヤーはいくらでもいるだろう。それだけに怖いんだ、上位プレーヤーは。
俺も戦闘スキルを磨いて、もっと強くならないといけないんだ。
その後もいろいろヴァルトラウテに戦闘時の問題点の指摘をした。
根拠のない反論をしてくるヴァルトラウテ相手に揉めていると対戦の時間が来た。
「時間が来たから行ってくる」
「負けんじゃあねえぞ!お前はあたしが倒すんだからな」
「ああ、せいぜい頑張るよ」
俺は足早にメンテブースに向かった。
「ああ、ヴァルトラウテはタケルにアドバイスもらえていいなぁ」
「んあぁ?いちゃもん付けてるだけだろ。細かいとこ突きやがって」
「それでもいいよ。私はまだチュートリアルやってろって言われるだけだし」
「あたしも散々やったぞ?」
「……」
メンテブースに入り、クサナギ<改>の様子を確認してからコクピットに潜り込む。
後は時間になるのを待つ。
この時間が一番緊張する。対戦相手が分かっているにも関わらず、心拍数が跳ね上がる。普段のフィールドでの作戦の方がよっぽど楽だ。
<<<Battle Start>>>
開始のメッセージと同時に戦闘エリアに転送された。
今回も荒野ステージだが、岩場のような隠れる場所のないおおむね平坦な荒れ地だ。荒れ地の砂埃で煙り、平坦なのに遠くが見通せない。遠距離射撃には向かないステージだ。
こちらはホバーリングで移動しながらパッシブスキャンで対戦相手のアーマードギアを索敵する。
ただ、砂埃のせいかあまり反応が良くない。金属粉でも混じっているのか敵機の反応がはっきりしない。
アクティブスキャンをしても少しマシな程度だろう。
今回は有視界戦闘になりそうだ。
とにかく相手の機体を探すため、地形の把握のため移動を続ける。
移動している途中、風で転がる草タンブルウィードを見かけた。荒野ということで、ご丁寧に細かいとこまで再現している。遠くの方にも転がっているのが見える……
しばらく移動していたが、敵機グラスホッパーを捕捉できない。
ダダダッ カンカンカン
シールドバインダーが自動で防御した。
しかし、こちらの目視範囲にはいない。砂埃のせいで遠くまで見渡せない。
アサルトライフルの銃弾が飛んできた方向へこちらもアサルトライフルを撃ち込む。
当然もう移動しているだろう。
移動方向を変え、撃ってきた方へクサナギを進ませた。
パッシブからアクティブスキャンに切り換え進ませたが結局捕まえられなかった。
グラスホッパーSide
砂埃の向こうに微かにアーマードギアが確認できたからアサルトライフルを撃ち込んでみた。
敵機に当たる音がした。でも、音が軽い。弾かれたはず。
逃げないと……
すぐに移動を再開した。
直後、それまでいた所にアサルトライフルの銃弾が通り過ぎた。
『反応がいいな、クサナギのプレーヤー』
これは長引きそうだなぁ。
タケルSide
『くっ、やっぱり逃げたか。しっかり捕まえないと戦闘に入れないな』
相手もそれなりに高速で移動しているから、すぐに捕まらない。
このまま追っかけるしかないか。
アクティブスキャンしている分向こうの反応を確認しやすいが、砂埃のせいで逃げた方向がかろうじて分かるくらいだ。
その反応を追っかけるが常には追いかけられず、見失った後にはアサルトライフルを撃ち込んできた。
『狙うタイミングが上手いな、もう分かるけど。
同じタイミングでこっちも射撃してみるか。ただ、どっちから撃ってくるかなんだがな』
更に追いかけっこを続ける。
グラスホッパーSide
『何発撃っても弾かれる。クサナギってシールドバインダーを持ってたよね。
それで弾いてるにしても反応もいいし、装甲が硬すぎるんだけど。
どこのパーツを使ってる?』
ダダダッ カンカンカン ダダダッ
『何っ?』
弾かれたけどクサナギが間髪入れず反撃してきた。
タケルSide
さらに何度もアサルトライフルの撃ち合いをしていると、ようやくこちらの銃弾が当たるようになった。
弾かれたようではないから、いくらかダメージを与えられてるはず。
そろそろ捕まえられるか?
グラスホッパーSide
どんどん近付いてくる。もう追いつかれるか。
そろそろ接近戦に切り換えようか。
『うわぁぁ!?』
そう思っていた所にとうとう追いつかれた。
くそっ、こっちも一気に懐に潜り込むぞ!
タケルSide
捕まえた。
アサルトライフルを連射しながらグラスホッパーに接近し、超高硬度ヒートソードを抜いて叩き付ける。
ガキッ
グラスホッパーもヒートソードをすでに抜いていて、こちらの懐に潜り込まれる前に更にヒートソードを打ち込んだ。
相手の動きを止め、次の一撃を打ち込む。
相手もこちらに合わせるつもりのようだ。その後、何度もヒートソードを打ち付けあった。
ガキッ ガキッ ガキッ ガキッ
パワーはそれほどの違いはなく、剣のスキルレベルは向こうが少し上か。
一旦後ろに引いて間を取る。
さて、どうするか……
このままでは時間をかければこちらが傷だらけになるか。
ただし、こちらにはもう一つの手がある。
また、お互い一気に距離を詰める。そのタイミングでヒートソードを打ち付け合う。
何度も打ち付け合う内に剣で受けきれなくなり、シールドバインダーでも受けなければいけなくなった。
もう少し耐える。耐える。
更に打ち付けてくるが向こうは乗ってきているようだ。どんどん打ち付けてくる。
こちらも無傷ではいられない。腕部に傷がかなりついている。
向こうも止められない状態のようだった。
くっくっくっ、どんどん打ち付けてこい。
よしっ、ここだっ!
ヒートソードを打ち込んできた直後に、カウンターとばかりにパイルバンカーを撃ち込んだ。逃げる暇もなくパイルバンカーはグラスホッパーの胴体に吸い込まれた。
グシャ ドガッ
グラスホッパーはパイルバンカーを食らった後後ろに吹き飛んだ。
クサナギを追撃させ、グラスホッパーにのしかかりヒートソードをコクピットに突き刺した。
<<<Battle End>>>
ふう〜、今日は時間がかかった。しかも、腕部が傷だらけになっている。
まぁ、傷だらけなのはわざとといえばわざとなんだが。
相手を調子に乗らせるための囮だ。弱味を演出してみた。
シールドバインダーで受けてれば一切傷つかずに済んだが、それではこちらが弱ったようには見えない。当然、向こうも仕切り直したり、戦略を変えてくるだろう。
それだと更に時間がかかっただろう。流石に疲れてしまう。
向こうが疑り深くなかったのが助かった。
さて、次に向けて修理しないとな。
ラウンジでゆっくりしていると、ヴァルトラウテと静御前が来た。さっきまで対戦していたようだ。
「ヴァルトラウテの方はどうだった?」
「勝ったよ。楽勝だ!」
「そうでもないですよ。これまでの対戦よりは苦戦してました。
離れて射撃してきてなかなか近寄らせてくれませんでした」
「そうだろう。そういう戦略は普通に取ってくるんだから対応できるように作戦を練っとけよ」
「くぅ~。そういうタケルはどうだったんだ?」
こっちのことが気になるのか。他人の事を気にしてる暇はないはずなんだけどな?
そんな事を考えていたら、横から割り込んでくるプレーヤーがいた。
「いや〜、負けちゃいましたよ。クサナギは強いですね。乗せられて攻撃し続けちゃいましたよ」
「どちら様で?」
「さっき対戦したグラスホッパーのプレーヤーのユウキです」
「ああ、さっきの。俺はタケルだ。
砂埃に隠れての射撃戦は良かったよ。なかなか捕まえられなかった」
「タケルさんのシールドバインダーも硬いですね。どこのパーツですか?」
あれは正直に言えないやつだな。適当に誤魔化すしかないか。
まぁ、いずれはバレるはずだがな。
「ファントムのリバイバルパーツだ。ただかなり昔に出たパーツで、良い物なんだ。もう手に入らないと思うけど」
「そうなんだ。いいなぁ。
射撃戦メインでやってるから、硬いシールドが欲しいんだよね」
「シールドバインダーは自動で防御したりするから、慣れないと使いづらいかもしれない。
うちのとは違うシールドバインダーもあるから」
「そうですか。探してみようかな」
仲良くパーツの話をしていたら、ヴァルトラウテと静御前が不機嫌な顔をしてじーっとこっちを見ていた。
なんだ?パーツの情報交換をしていただけだがどうしたんだ?
「そちらのお二方はタケルさんの彼女さんでしたか?」
「いや、指導している2人だ。1人は中盤戦に残ってるんだ。もう一人はノービスで2回戦で負けたけどな」
「ちゃんと指導してくれてないからじゃあないですか。チュートリアルをもっとやれとかって」
「チュートリアルはしっかり何度もやった方がいいよ。私も何回もやったよ」
「えーー」
そうだ、チュートリアルは大事なんだよ。
しかし、2人が彼女に見えるとかどうなんだ?
### 続く ###




