第036話 体育実技の授業2
新入生も入りしばらく経った頃、新学期初めての実技系の授業がが行われる。
近くのコミュニティセンターに近くに住んでいる生徒が集まった。
見たところ、新入生の男女が4人いた。
たまに0という年もあるから、今年はいい方だそうだ。
メタバースの学校の方でもいまだに状況があまり変わっていないが、新入生はセイラとアリーシャの方をずっと見ている。
女子は憧れの眼差しという感じだからまだいいけど、男子の方はエロい目で見ている奴が多い。そんな中、他の奴と違う目で見ている奴がいる。経験上ストーカーになりそうな感じだ。
「よう、ヤマト、久しぶり」
「久しぶりだな。夏休みや学期末で実技系の授業がなかったもんな」
「その夏休みはどうだった?あの2人とは」
「3人でじいちゃんの家に行って農作業を手伝ってきたよ、それと2人と結婚するって伝えてきた」
「早えな、お前は。もう婚約なのか」
「両親達にはもっと前に言ってるけどな」
そんな話をしていたら、新入生の方から「婚約だと?」とか「無理矢理襲ったんだろう」とか言ってるのが聞こえた。
一緒に話してた奴が苦笑しながら、「こいつが無理矢理?そんな事する必要ないだろ?」って言ってくれた。嫌がるような事をするわけないだろ、食事以外は。
まぁ、どう思おうが勝手だけどさ。こっちに聞こえるように言わないでほしいね。
そうしてると授業が始まる。今日はフットサルをする事になっている。
上級生が練習メニューを考えながら下級生を指導する形だ。
トレーナーの判断でチームを2つに分け、俺とセイラ、アリーシャは同じチームで、新入生の男子は問題のありそうな2名は別チームになった。
皆半袖短パンといった服装で、それぞれのチームに別れて練習をしていく。最後には両チームで試合をするようになっている。
新入生の男子1名女子1名と、在校生も女子が多めのチームになっている。上級生にセイラとアリーシャがいるからだろう。
先ずはパス練習からだ。
在校生は既に何度かフットサルはここでしているので問題ないけど、新入生はまだやった事がないそうだ。
ボールの蹴り方を教えてから1対1のパス、その後にチーム全員で輪になってパス回しをしていく。
「アリーシャ、サッカーやフットサルの経験は?」
「バスケほどじゃないけどちょっとは出来るよ。ヤマトは?」
「それほど上手くはないけどそれなりにかな」
「ふ~~ん」
何だろう?信用されていないような返事ですが?
新入生のパス回しもさまになった頃に、パスカットをするディフェンスの人を1名入れた。
数分単位で交代しながら15分ほどディフェンスありのパス回し練習してからシュート練習に入る。
最後のディフェンスは俺が担当したけど結構パスカットした。その辺どうパスすればいいかも指導して。
「ヤマト、やっぱりフットサルやサッカー上手いよね?」
「そう?それほどでもないはずだけど」
「そんな事ないよ。ヤマトは小さい頃にうちのお父さんとサッカーやってた時があったから、結構上手いよ」
「やっぱり。ヤマトって自分の事は過小評価するよね」
「うんうん」
そうか?自分の評価をあまり高くして自信満々なのも引かれるだけだと思うんだけど。
次はシュート練習。キーパーは俺。
新入生に教えながら在校生にもボールの蹴り方を教える。
いい加減に蹴ればどうしても変な方向に飛んでしまう。とにかく弱くても狙ったところへ蹴れるところから始める。
ボールを置いてのフリーキック、ドリブルしながらのシュート、パスを出して更に自分に帰ってきたボールのシュート、などいくつかのパターンのシュートをしてもらった。
シュートする時に余裕がないことも多いため狙ったコースに蹴れることはないけど、一応狙うべきゴールの場所は教えておいた。それだけでもボールが転がってくるコースが違う。
ただ、シュート練習をしている時に回りの男子がこっちを見ていることが多かった。特にセイラとアリーシャがシュートする時は。他の女子でもほどほど大きい女子は見ていたようだ。
エロガキ共め。
トレーナーがそれに気付いて注意してようやく収まったけど、それでも時々隠れて見ていた奴らがいた。
最後にディフェンスの練習だ。
自分のポジションと、チームメイトの位置を確認してフォローに入れるようにする方法を教えた。
その後でまた輪になってパス回しをし、中にパスカットをするディフェンスの人を2名にしてディフェンスの練習をした。
この練習はディフェンスが考えて動かなければいけないので、なかなか慣れなくて上手くパスカット出来ない人が多かった。
最後にアリーシャと俺の組み合わせで練習したら、どんどんパスカットしてパスが回らなくなった。
これが参考になればいいんだけど……
一通り練習をしたので、最後のチーム同士の試合を休憩後にする事になった。
こっちは女子も多いのであまり強い当たりはしないようにというお達しが出ている。
ただ、セイラやアリーシャ達に意図的に当たりに行く野郎がいるはずだから、それはどうにかしたい。
とりあえず休憩しながら、チームのみんなには勝たなきゃいけないわけじゃないから、無理に頑張らないようにと伝えた。女子も多いし妥当なところだ。
後、なるべく長くボールを持たないようにとも。
そんな話をしていると、さっきも話していたいつもの奴が来た。
「そっちの仕上がりはどうだ?」
「まぁまぁだな。経験少ないから緊張するだろうし、ある程度プレーできるとは思う」
「そっか、こっちは新入生がお前を倒すって息巻いてたよ。無理だろうけどな」
「こっちは無理してまで勝つつもりはねぇよ?」
「お前に勝つつもりだから、そっちに突っかかってくるだろ。セイラさん達に向かっていくかはなんともいえないけどな」
「女子がケガしなきゃいいよ。男は少々ケガしても大丈夫だろ」
奴等が狙ってくるか……まぁいいけどな。
こっちはみんなをまとめて試合をするだけだ。
特にセイラとアリーシャに迷惑がかからないように、あの新入生の心を折るくらいはできるといいな。
話を終わらせ礼を言ってチームの所に戻り、作戦を指示する。
余裕を持った作戦だから、どうなるかは分からないけど運が良ければ勝てるかな。
「あまり無理はしないように。特に女子は。男子は少々ケガしてでも女子のフォローをしてくれ」
「「「はい」」」
ということで試合を始める。
俺がピヴォをすることにして前後半フル出場する。他のポジションは前後半で入れ替えることになった。授業だし全員1度は必ず出なければいけない事になっている。
相手チームのキックオフから始まった。
こちらの作戦はマンツーマンディフェンスでパスコースを潰すだけ。一番分かりやすいし。そして俺がボールを取りに行く。俺の持久力か勝ち負けに大きく左右する。
とにかくボールを持っている選手を追い詰める。追い詰めて直接ボールを取るか、パスボールを味方にカットさせるか、を繰り返す。
こちらのボールになった後は俺の方にパスが回り、そのままゴールを狙ったり、味方の左右のアラにパスを回してシュートさせたりした。
シュートも数打てば当然得点出来るわけで、失点以上に得点が入り前半が終わった。
単純なマンツーマンだからフットサルやサッカーに慣れてない人でもどうにかなる。敵チームの方も慣れてないならそれこそこちらに都合がいい。
後半は問題の新入生が出てくるようだ。どうするかが見物だ。
後半が始まり、こちらのチームにはセイラとアリーシャも出る。セイラの方は正直言って上手くはないから、ケガをしない程度に頑張ってくれればいい。
後半こちらのキックオフから始まる。すぐに俺にボールが回ってくる。
さてどうするか……
ボールを持っているとあの新入生がこっちに向かってきた。たぶん勝負したいのだろう。
当然俺はフリーになっている味方にパスをする。
「なんで勝負しないんだ!?」
「なんで勝負しなきゃいけないんだ?勝負する意味はないだろ」
「お前はあの先輩に無理矢理従わせてるんだろ?それを解放するんだ」
「??なんだそりゃあ?」
そいつとの会話を打ち切って前に出る。
アリーシャに回っていたボールをゴール前に蹴り出し、それに走り込んで俺が合わせてシュートした。
相手のゴレイロは反応できず、ゴールに突き刺さった。
ゴーーール
俺とアリーシャはハイタッチして喜びを分かち合った。セイラも俺の方に飛び付いて来たので抱きしめた。ちょっとアリーシャが不満気だったけど。
他のチームメイトもハイタッチしにきた。
その後もあいつは何度も俺に挑戦して来たが、ドリブルで抜こうとしてボールを取られ、こっちのドリブルを止めようとしたが俺は味方にパスを回した。
「逃げんな!!」
「逃げてねぇよ。フットサルは個人戦じゃあねぇだろ。チームで戦ってんだよ」
「先輩の弱みを握ってやりたい放題やってるんだろ。勝って先輩を自由にするんだ」
「??何言ってんだ?弱みを握ってるとか」
「飯を作らせたり、着替えの世話をさせたり、顔まで洗わせてるんだろ?先輩は奴隷じゃないんだ!!」
「はぁ?何言ってんの?」
審判をしているトレーナーにもこの会話が聞こえたようで、「お前、そんな事させてんの?」って顔で見られた。
させてねぇよ。しかも逆だ。
俺の所にボールが回ってきて、またあいつが来た。
もう、直接抜いていくか。
俺はドリブルに緩急を付け、特にターンを使ったフェイントもかけず抜き去った。
そして、あいつだけに聞こえるように……
「下手くそ」
そのまま敵陣左奥まで入り込み、ゴール前の味方にふわりとしたセンタリングを上げシュートを打たせる。
なんとかシュート出来たけどゴレイロに止められた。
「ナイシュー。おしいおしい」
得点にならず落ち込んでた味方だったけど、元気になってまたプレーを続けた。
結局問題の新入生の心を折って、その後は一方的にこちらが攻める展開で結構な点差で勝った。女子も多かったからそんなに点差はつかないと思ったけど、最終的にはこの結果。みんな喜んでた。
セイラとアリーシャがあの新入生の所に行くのが見えた。
しかも随分怒ってるように見えるんだけど。
「ヤマトにいろいろ言ってたけど、私達、別に弱味なんか握られてないんだよ?好きだから一緒にいるんだよ?」
「え?」
「そうそう。それにヤマトがご飯を作ってくれてすごく美味しいし、コーデを選んでくれたりするし、顔も洗ってくれる。ね?アリーシャ」
「うん」
「え?え?」
「「それに夜もいっぱい可愛がってくれるんだよ」」
「え?え?え?」
そこまで大っぴらに言わなくてもいいと思うけど……
隣にいたいつものやつが「2人とそこまでしてるのか、羨ましいねぇ。しかし、顔まで洗ってあげてんの?」って呆れられた。
確かに、顔まで洗ってやるとか普通ねえよな。
近くにいたトレーナーも「お前が弱味を握ってるとかは思わなかったけど、そこまでやってるのか。ほどほどにな」って言われた。
まだ話をしていたようで……
「あいつが料理出来るとか信じられないです。本当は先輩達が作ってるんでしょ?」
「私達は……ほとんど出来ないよ……」
「次は調理実習だから分かるよ。ヤマトの調理スキルが」
「へ?」
ということで、体育の授業も終わり、調理実習の時間まで持ち越しとなった。
隣でいつものやつが笑ってるけど。
「調理実習で目にもの見せられるな?笑える」
そして、調理実習の時間……
授業が始まり講師の先生が挨拶を始め、更にこう続ける。
「サブ講師として両国ヤマトくんがサポートに入ってくれます。
分からなかったり難しいと思ったら質問してあげてね?」
また、サブ講師というポジションに就く事になった。まあいいけどな。
「え?え?え?え?」
問題の新入生は思い知ったようだ。他の新入生も驚いているようだった。
その様子を見てセイラとアリーシャはご満悦のようだった。




