第024話 家族でメタバース 買い物に行こう
うちの両親が帰って来た次の週末、母さんが「買い物に行きます」とセイラとアリーシャを連れて買い物に行くことが決定した。
2人は事前に話をしていたみたいだから特に反対はないみたい。
父さんの方が逆に「聞いてないよ」って言ってた。俺もだけど。
まぁ、娘と買い物に行くのが夢だったと言われれば、息子で母さんの夢を叶えられない分反対も出来ない。
それにセイラとアリーシャも嫌がってないとなれば、それこそ俺が反対も出来ない。
ということで、家族でメタバース内に買い物に行く事になった。
何もすることはないけど、父さんと俺は一緒について行って何かで時間を潰すしかない。
母さんの買い物の目的はやっぱり2人を着飾らせること。
娘がいればいろいろ着せ替えして楽しむつもりだったようだけど、俺が生まれて予定が狂ってしまったというわけだ。
若いんだからもう1人生めばいいのにと思うところだが、俺がセイラと会った6歳ぐらいから仕事が忙しくて父さんといろんな所に行っていたので作らなかったらしい。
今回1ヶ月ほど休み取ったんだし、仕事のサポートしてくれる人もいるのだろうから、この際もう1人子供を作ってみては?女の子が生まれるかは分からないけど。
それでメタバース内のファッション関連の所に行ってみる。
セイラはファッション関係には余り関心が無いから、どんなお店があるかはあんまり知らないだろう。
アリーシャの方はセイラよりはよく知ってるんじゃないかと思う。前にみんなで行った時は、行きたいお店の話をしていたみたいだし。
今回はセイラやアリーシャくらいの学生向けブランドより、先に大人っぽいブランドのお店が多くある建物に入っていった。
セイラもアリーシャも背も高いし胸も大きいから大人っぽく見えるし、そういうコーデをそろそろ身につけるのはいいだろう。
当然俺はそんなブランドはよく知らないので、母さんにお任せする。仕事でいろんな所を回ってるから、フォーマルなのから仕事着、カジュアルなのまでよく知っているようだった。
それぞれの装いに合わせていろいろ着せていった。
「セイラちゃん、いいわね。仕事の出来るお姉さんみたいよ」
「アリーシャちゃん、モデルさんみたいね。手も足も長いし腰もキュッとくびれて」
いろいろなのを着せてはコーデのデータを保存して、次から次へとお店も移っていく。
そのテンションあげあげの状態に俺はついて行けそうにない。
「父さん、母さんの買い物はいつもあんな感じなのか?」
「いつもは落ち着いてるよ。今日は娘が2人も出来たからテンションが上がりまくってるだけだよ」
「ごめんな、俺が息子なばっかりに……」
「そんな事はないぞ。娘を2人連れて来たんだから。母さん、大喜びじゃないか」
「1人は前から隣にいるセイラだけどな。前から可愛がってたし」
「それでいいんだよ」
見てて母さんが喜んでいるのは分かるし、セイラもアリーシャも楽しんでるのが分かる。2人共こっちに手を振ってるし。
それを母さんが微笑ましそうにしてる。
俺も手を振り返した。
嫁姑が仲良くしてるなら、こういう家族関係もいい。
しかし、何着着せるつもりだ?しかも結構買ってるっぽいんですけど。
父さん、うちの家計は大丈夫か?
「父さん、いっぱい買ってるみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫だ。しっかり稼いでるからな。でも、ちょっと抑えてほしいかな……」
「母さんに言ったほうがいいよ」
「あんなに楽しそうなのに止められないだろ。はぁぁぁ」
その後はアクセやバッグなどを合わせて見ていた。
父さんは自分の分口座の残金を見ていた。その背中がちょっと悲しそうだった。
「ヤマト、似合う?」
「そうだな、セイラはそういう大人っぽいのが似合うな。露出は控えめだし。
格好いいお姉さんみたいだぞ」
「ヤマト、こっちは?」
「アリーシャはモデルみたいなスタイルだから、結構なんでも似合う。綺麗だな。
でも、フリルとかある可愛い系が好きなんだろ?」
「うっ、そうなんだけど。好きなのと似合うのが違うんだよね」
「何かワンポイントで入れてみるとかしてみたら?アクセとか何か」
「探してみるよ。ありがとう」
この間のフリフリなのを喜んでたからね。ああいったのが好きなんだと思ってたが、やっぱり好きらしい。やり過ぎると似合わなくなってくるんじゃないかな?
アクセのお店に入って、アリーシャは可愛い系のを選んで合わせてみていた。
「アリーシャさんにアドバイスしてたけど、ヤマトはファッションに詳しくなったのか?」
「そんなことはねぇよ。この間、ショッピングにみんなで行った時に2人のコーデをしたんだよ、ちょっとフリル多めの」
「へぇ~、それでどうなったんだ?」
「コーデサンプルとしてショップに飾られることになった。マンガやアニメにあるようなのを参考にコーデしただけなんだけど」
俺にファッションセンスはない。マンガやアニメのキャラのコーデを参考に組み立てただけだ。
オリジナルのコーデではないんだけど、何故か受けた。それだけだ。
ついでに出来たファッション研究同好会については黙っておく。言ったらどれだけ追求されるか分からない。
「ヤマト、そのお店はどこかしら?案内しなさい」
「へ?」
母さんに言われたら案内しないわけにはいかなかった。
前に行った学生向けブランドの建物内のショップに向かった。途中、何度となく寄り道し、またセイラとアリーシャの着せ替えをして気に入った服を母さんが買っていった。
「ヤマト、私達のために服をいっぱい買ってるけどいいの?」
「父さんの懐具合が心配だけど、大丈夫じゃない?母さんが自分の夢を叶えてるんだから奢られてあげて」
「セイラは慣れてるみたいだけど?」
「昔何度かやったからね、母さんのストレスが溜まった時に。
母さんが喜んでやってる事だし、このぐらいの出費は問題ない位には母さん達稼いでるから。それに俺と結婚してくれるならもう家族だよ」
「それでも、なんか悪い気がするけど」
「なら、母さんに娘として甘えてあげてよ。俺には出来ないし」
母さん達の休暇の間楽しませてあげてよ。
思春期の息子としては、両親とあまり仲良すぎるのもどうかと思うしね。
息子では出来ない事をしてあげてほしいかな。
そしてとうとうセイラとアリーシャをモデルにしたコーデサンプルが展示されているお店に着いた。
もう1か月位経つと思うけど、まだ展示してあった。移り変わりの激しいファッションの世界でまだ別のに替えていないとは。
「まだ展示されてるな」
「「恥ずかちい」」
「ははは、2人してかんでんの?」
「セイラちゃん、アリーシャちゃん、すごく可愛いわ。今度うちで着て見せてね?
しかし……このコーデをヤマトが選ぶなんて。2人の特性をよく理解してたのね」
「違うから。最初にセイラが選んでたブラウスに合わせるように、マンガの似たキャラのコーデに近いのを選んだだけだよ。アリーシャはセイラが白だし、髪がブロンドだったから黒系で似たデザインのにしたんだ。
俺にセンスはない」
「でもよく似合ってるのは確かよ。自信持ちなさい」
母さんが褒めてくれたけど、素直に受け取れない。
誰かのオリジナルがあってのこのコーデだから。似合うように選んだのは確かだけど。
そのまま母さんは2人を連れて、ここでも取っ替え引っ替えして着せ替え人形にしていた。
楽しそうにしていたから、俺と父さんは離れたベンチで座って待つことにした。
そのまま2人で話をする。
「ヤマト、セイラちゃんとアリーシャさんとはやっぱり……してるのか?」
「ベッドの状況を見たと思うから分かると思うけど……してるよ。ちゃんと結婚するつもりでいるから子供が出来ることをしてる、一応避妊はしてるけど」
「そうか。なんというか俺によく似てるんだな、お前は」
「そうなの?」
あまり顔を合わせてないし、一緒にいるわけじゃないからよく分からないけど。
顔の事を言ってるわけじゃないんだよな?
「母さんと会ったのは学生の頃だけど、お前達と同じぐらいか。学校で仲良くなって、結構近くに住んでるから合宿も一緒だったんだよ。会えばイチャイチャしてた。
それが突然夏休みに俺の所まで来て、それからずっと一緒に暮らしてた。
当時は俺の両親も忙しくて今と同じように学生の俺一人で生活してるような状態だったから、やりたい放題してお前が出来た」
「……まぁ、確かに今とほぼ変わらない状態だな?父さんも避妊はしてたんだろう?でもできたんなら運の問題だろ」
「だから、お前も出来た時に動揺して2人を泣かせるようなことをするなよ?」
「父さんは泣かせるような事をしたんだな?」
父さんは両手を顔に当ててうつむいた。かなり後悔するような事をしたらしい。
ダメだろ、父さん。
「……ああ、凄く後悔している。だから、今も母さんだけを大事に愛してる」
「惚気話か?これは。
俺もある人から後悔の無いようにって言われたから、2人の事は後悔しないように大事に愛してる。泣かすようなことはしないつもりでいるよ。
まぁ、若いんで『出来た』と言われれば動揺もするけどな」
ちゃんと覚悟は出来てる。いざとなると動揺しない保証はないけど、学生なんだし。
でも『出来る』ことをしているのは分かっているから、ちゃんと対処出来るようになりたい。
それに、少々動揺してもそれで2人は泣いたりしないと信じたい。
そんな話をしているとファッション研究同好会に来ている後輩の女の子が挨拶に来た。
俺がファッション研究同好会に入っていて主導的な立場にいる事に父さんが非常に驚き、母さんを呼んできていろいろ尋問された。
成り行きで出来た同好会で、男のメンバーのほとんどがマンガやアニメのキャラのコーデを市販の服で再現しようとしてる集まりだと説明した。
女子はそれが可愛かったり綺麗だったり、自分の希望に合うようなのを着て楽しんでいるだけなんだよな。
それでも母さんは非常に興味を持ったようで、後輩の子達も連れてセイラとアリーシャも一緒にお店に戻って行ってしまった。
みんなが楽しそうにしているからいいけど、これはまだまだ終わりが見えなさそうだ……
そんな俺を微笑ましそうに父さんが見ていた。




