第021話-1 週末は山で 出発
ファントムを手に入れた翌日、セイラの身支度を整えて学校に来ている。
自分のクラスでもE.G.G.をやっている人がそれなりにいるようで、ファントム発見の話をしているのが聞こえる。
俺は自分の席に着くとトキオがやって来た。
「よう、おはよ、ヤマト。お前もE.G.G.やってたよな?」
「ああ、おはよう、トキオ。やってるよ」
「昨日のメッセージ見たよな?あの伝説級のファントムが発掘されたらしいな」
「ああ、見たよ。マジかぁと思ったよ。
当時最強クラスの機体だけど、もう骨董品だよな?使えるのかね?」
流石に自分が手に入れたとは言えないから、こんな事を言ってごまかさないといけない。ファントムは最高なのに。
ただ、メッセージが全プレーヤーに流された時、みんなの反応がどうだったか分からないから情報を入れておきたい。
「昔の機体でもジェネレーター出力が今のパーツと比べても大きいからな、ビーム兵器を使うならまだまだ現役だろ。ただ、ガタイも大きいけどな」
「でもビーム兵器はパーツが高いだろ?」
「まあな、でもシールドバインダーのビームキャノンが標準装備で2門あるし、これの威力も同じ口径なら未だに最高らしいぞ」
「そうか。なら俺も欲しいよ。まぁ、オークションで落とせるような金はないけど」
「ははは、確かに。だからみんな見れればいいなってよ」
「俺も見たいな」
やっぱり未だ一線級の機体だ。
これからどう使うかは決めてないけど、なるべくバレないように使っていきたい。
「なあ宇宙戦艦って何だ?今の所そんな車輛はないだろ?」
「ねえな。宇宙戦艦っていうくらいだから空も飛ぶし、ビーム砲くらい装備してるだろ。宇宙戦艦で空から一国を攻め落とせる戦力があっても面白いよな。
ただ、国を管理してる上位プレーヤーは面白くないだろうけどな?」
「違いない。空を飛べる機体なんかファントムと数機くらいしか話に聞かないもんな。いくらでも攻撃し放題だ」
「大人と子供以上に戦力差があるよな。それにファントムも一緒とか、攻められた国は悪夢だろ」
そんな話をしているとダグが来た。
ダグもE.G.G.やっていて昨日のメッセージを見たらしい。
「お前等も見たか、あのメッセージ。すげぇな、誰が見つけたんだろうな」
「誰なんだろうな。あれ売ればもう一生遊んで暮らせる金が手に入るよな」
「トキオ、そんな堕落したような事言ってるから女子にモテないんじゃないのか?」
「え?ダメなの?」
「女子からすれば働きたがらない男の面倒なんか見たくないだろ」
「そうだな」
今の世の中、男が女の人を食わせてあげなきゃならない時代でもないけど、『遊んで暮らす』とか思ってる人はパートナーとして敬遠されやすい。
トキオも軽口で言ってるだけなのは分かるけど、女子の前では口にしない方が良い。
「プレーヤー名を公表しなかったのは珍しいな」
「遺物を見付けると誰か分かって、インタビュー受けてるもんな」
「ちょっとしたお祭り騒ぎになるからな。どんな機体なのかスペックとか出してな」
「今回はファントムとエンプレスの超有名機体だからな。スペックは分ってるし、目立ちすぎるから嫌なんだろうな」
「分かるわー」
その後授業を受け、放課後は早々に帰る事にする。
明日からの荷物を準備しないと。
「ヤマト、もう帰るのか?」
「ああ、明日から3人で泊まり出かけるから、その準備をするんだよ。
調理道具や野菜や調味料もまとめとかないとな」
「何ぃ、ヤマト、セイラ嬢とアリーシャ嬢と3人お泊りでしっぽりただれた休日を過ごすのかぁ。しかも混浴で」
「「「「「「何ぃぃぃ、ヤマト、そんな事するのか?」」」」」」
する予定だけど、そんな事ここで肯定できるわけ無いだろ。
肯定したらどんだけの騒ぎになるんだよ。
「するわけ無いだろ。学生だけで行くんだし男女別に決まってるだろ」
「ヤマトがそんな常識人の様な事言ってる」
「いや、常識人だからな」
「「「「「「ウソだぁぁぁ」」」」」」
もういい帰ろう。準備しなきゃならないし。
帰ろうするとセイラとエリーがこちらのクラスに来た。
「ヤマト、アリーシャ、帰ろう」
「ああ、帰ろう」
「「ヤマト、明日からしっぽり温泉だもんね。早く帰ろう」」
「「「「「「「ヤマトォォ、やっぱりそうなんじゃねぇか」」」」」」」
うるさくなったのでセイラとアリーシャを伴って、メタバースから落ちた。
そんな前日だったけど、今日は朝から3人でお風呂に入ってあんなことやこんなことをしてから朝食を食べ、出かける最終準備をした。
「泊まるコテージには個別に温泉が引かれてるから、気持ちがいいし肌にいいらしいよ。
合宿の公衆浴場みたいに広くはないけど、5人くらいは一度に入れる広さがあるからゆっくり出来るよ」
「そうなんだ……じゃあ……ゆっくり……しようね。ヤマト、セイラ」
「うん。いっぱいしたいね」
いやいや、そういう意味の「ゆっくり出来る」ではないよ?
でもしたくないわけじゃないけどね。
さあ、出かけようか。
そんなに遠くにあるわけではないので、モビリティを呼んで乗り込む。
1時間半かからないくらいで着くので、いろいろコテージ周辺の設備の話をしながら、お菓子を食べつつゆっくりとした時間を過ごす。
これから行くコテージは、川魚を養殖している業者さんが運営している。
そのためニジマス以外にもイワナ、ヤマメといった川魚を放流した釣り堀があり、釣った魚を料理して食べる事ができる。事前に頼んでおけば料理もしてくれるので、料理ができない人も釣って食べる事ができて人気がある。
そのまま川を下ると泳げるスペースがあり、釣りができない小さい子でも遊べるようになっている。川なんで水温が低いのが難点だけど。
先に言ったけど、各コテージに温泉が引かれていていつでも入れる露天風呂がある。家族全員で入れる大きさの湯船があり、外の景色の良い風景が見れてここも人気だ。新婚さんにも大人気だったりして、裏の口コミでも評価がすごく良い。
その他ラフティングやキャニオニング、キャンプもでき、アウトドア好きに人気があって静かだけど結構人が来ている施設だ。
ついでに養殖の職業体験も出来て、遊びに来た子供が大きくなって就職する事もあって、人手が足りないということがないらしい。
そんな話をしていると施設の入口に到着した。
荷物を下ろして、受付に向かう。
両側には樹木が鬱蒼と茂り、4mくらいの幅の砂利道を降りていく。
ここは標高が高いし近くに川が流れているので元々涼しく、土の地面のため熱が籠りにくく過ごしやすい。
夏には天国のような場所だ。冬はかなり寒いけど。
「いらっしゃいませ。おや、ヤマトくん、よく来たね」
「いつもお世話になってます。今日は彼女2人連れて来ました」
「ヤマトくんに彼女が出来るなんて。しかも2人も。大きくなったね。
夜は頑張るんだよ」
「おじさんまで言うか!」
「ヤマト?知り合いなの?」
小さい頃から何度も来てるから知り合いといえばそうだ。
でも、それだけじゃない。
「いつも行くあのスーパーの店長の親戚だ。それで教えられて両親と来るようになったんだ。だからセクハラ発言するんだよ」
「「へぇ、じゃあ珍しい食材があるんだ」」
「川魚は今じゃあ珍しい食材だな。結構高値で売れるんだぞ。
イワナやヤマメ、アユは夏場人気食材だ。アユは昔からの夏の風物詩だからな」
「そうなんだ。養殖だけでも結構儲かってるんだぞ。他は趣味や川魚に慣れてもらうのにやってるんだ。
だから、普通に楽しんで行ってくれ」
しばらく話をして、鍵を受け取ってコテージに向かう。
コテージは結構大きいもので2階建てで、雑魚寝するなら10人くらいは泊まれる。
外には回りから見えないようになってる露天風呂があるし、調理スペースもあり冷蔵庫があるから持ってきた食材を放り込んだ。
### 続く ###




