第020話-3 大発見 ついに
『おめでとうございます。お客様で1万人目のお客様になります』
「マジか?マジに1万人目か?」
『いえ、違います。冗談ですよ』
「はあ?何だそりゃ」
落ち着いて周囲を見回すといくつかのコンソールがあり、ここが管制室の一つである事は間違いなさそうだ。
しかし、今のアナウンスは何だ?サポートAIか?
そのまま中に入り、回りが見渡せる位置に移動した。
正面には大型モニターが複数あり、今は監視カメラの映像を分割表示していた。見た事のある武器弾薬庫や整備ドックの映像もある。
ずっと監視されていたのだろう。その割にはセキュリティロボットの攻撃が甘かったが。
「ずっと見ていたのか?」
『はい。マスターがいなくなって始めて来られたお客様ですから』
「その割には攻撃されたけど?」
『こちらからお招きしたわけではありませんし、この程度クリアして頂かないと次期マスター候補としては話になりませんので』
「次期マスター候補?」
今、誰も所有者がいないのか?
それでAIがコントロールしていると。攻撃は甘かったし、武器補給やメンテナンス出来るとかゆるすぎるだろう?
マスターの選定としてはダメだろう。
『はい、その通りです。前マスターからの指示で、あの難易度になってます。
もっと難しくできますが、強さだけで選んではいませんので』
「強さ以外の所でも俺は認められたのか?」
『そうですね。メンテナンス時に戦闘スタイルなど確認しましたが、問題ないとの判定です。基本的に悪党でなければ大体合格ですけど』
「いいのか?そんな程度でこの宇宙戦艦のマスターにして」
こちらとしては嬉しい限りだが、こんな宇宙戦艦持ってたらゲームバランスが崩れるだろ。
メンテナンスもしてくれるし、武器弾薬も十分、取り付けられそうなパーツもたくさんあった。これらを使い放題なのか?
まぁ、いきなり全部投入してどこかの領地を攻め落とす気はないし、バランスを見ながら使うならいいだろう。
『どうしますか?この戦艦および搭載されている兵器のマスターとなりますか? YES/NO』
「どう使ってもいいんだよな?」
『はい。構いません』
「ならYESだ」
メンテナンスの時のようにクサナギにコネクタが接続され、俺の情報が読み取られているようだ。
しばらく時間がかかり、登録終了のメッセージが表示された。
その後はこの宇宙戦艦の装備と搭載されている兵器の概要がサポートAIによって説明された。
ただ、大量にあるパワードスーツが人が乗れないため無駄になる事が決定した。それとセキュリティロボットは戦艦外での運用は出来ない事も分かった。
武器弾薬、各種パーツ、戦闘機、宇宙戦艦の砲門は使えるが、大体自分が指示しないといけない事が分かった。
どこかを攻め落とす気もないし、十分か。
最期に前マスターからのメッセージが流された。
どこの誰とも知らない白衣を着た研究者風のおっさんとバイザーで顔を隠し戦闘用スーツを着込んだ若そうなプレーヤーっぽい人が現れた。
見たことはないが、何か記憶にあるような感じがする。何だろう?誰だろう?
『ようこそ、この宇宙戦艦へ。
私は神田。E.G.G.と過去の別のゲームを繋ぎ、世間を混乱させた男。
こちらは私のAIアバター ナム・サンダーだ』
ナム・サンダー?確かファントムのプレーヤーだったはず。
なんでここに?
『この宇宙戦艦は、また別の世界線のゲームから私の欲望のために呼び出し使ったものだ。私の欲望の残滓だ。好きに使ってくれ。
愛する女性を失い狂った私の凶行で、このゲームに迷惑をかけてしまった。
君もそういった人がいるなら後悔がないように生きてくれ』
『ナム・サンダーだ。
こいつに使われ、どういう訳かいつの間にか片棒を担がされた。
こいつの愛する女性は同じ時代で生まれ変わっていたのにな。見てる奴が誰だか分からないがちゃんと自分の回りを見て、そういう存在に気付いてやってくれ。
俺はもう活動を停止するが、ファントムとエンプレスがこの先の整備ドックにある。これも好きに使ってくれ。
じゃあな』
どういう事?
50年以上前のあの事件が愛した女性に会うために起こしたものだって?
そんな話は世の中に流れてきてなかったんだけど。
でも、ちょっといい話は聞けた。俺もセイラやアリーシャを大事にして、泣かしたりしないようにしないとな。
今日はここまでにして、お楽しみは明日に取っておこう。
今日の夕食は何にするかな?照り焼きチキンバーガーでも作ろうか。
後、サラダで野菜を摂って、コンソメスープを出そう。
ヤマトSide
「ただいま。今日は照り焼きチキンバーガーにするぞ」
「「やった~」」
「サブミッションも明日でケリがつくから、週末は3人で遊ぼう」
「ヤマト、どうしたの?何かいつもとちょっと感じが違う気がするけど」
「ん~~、ゲーム内でちょっとな。
愛する女性がいるなら後悔しないように構ってやれって言われたから、そうだなと思って」
「「ほんとに浮気してない?」」
そんなことはしてないんだが。ゲームに集中してたよ。
それにいつも2人の事を考えてるんだけどな。
今日も優しく可愛がってあげる予定なのに。
「してないよ。先人にアドバイスされただけだ。
そうだ、週末にどこかに出かけるか?合宿で海に行ったから山の方にとか。
メタバースで買い物でもいいけど」
「「あまり人がいなそうな山の方がいいかも。3人でしっぽり出来るし」」
「……うん、2人が良いなら。よく行く釣り堀のあるコテージがあるからそこでいいか?
自分で調理も出来るから、美味しいものも作れるよ」
「「それがいい」」
タケルSide
7日目……
今日は宇宙戦艦の起動と、奥の整備ドックにあるはずのファントムとエンプレスの確認と起動チェックだな。
今日は艦橋からスタートだ。
まずはコンソールを起動させた。
これで起動準備に入れるわけだが、その前にどこまで操作出来るのか確認だ。サポートAIに確認しながらコンソールの動作確認行った。
うん、問題ない。
戦艦のメインコンピューターの起動を行った。
俺のマスターとしての情報を確認し、起動シーケンスに入った。
しばらく待つ……
………………
…………
……
起動したので、これでこのコンソールだけで戦艦の全てが掌握出来るようだ。
今の所戦艦自体を飛ばさないから、内部の制御だけ行う。
まずはファントムとエンプレスの所に行きたい。
コンソールから入れないようになっているその2機が格納されている整備ドックのロックを解除した。
それからクサナギで格納されているはずの整備ドックへ移動する。
もうセキュリティロボットは出てこないので、特に警戒することもなく整備ドックに着いた。
整備ドックのドアを開ける。
ゴゴゴォォ
徐々に開いていくドアに期待が膨らんでいく……
これであのファントムを見ることが出来る。手に入れる事が出来る。
憧れのファントムに会える。マジで嬉しい。
ゴゴゴォォ ゴン
整備ドックのドアが完全に開いた!
中に入ったがかなり広いスペースに、アーマードギアがポツンと2機と置かれていた。
片方は俺のクサナギと同じ蒼の機体。もう片方は金色の機体。
ファントムを真似て決めたクサナギの機体の色。どっちがファントムなのかは分かる。
蒼の機体に近寄り、クサナギから降りて乗り換える。
開いていたコクピットに潜り込み、ファントムの起動を開始する。
「これがファントムのコクピットか……特別変わりはしないか。
でもここに座れるとはなぁ。嬉しいよ」
座れるとは思っていなかったファントムのコクピットに座り、起動作業を行っていった。
起動シーケンスが順調に進み、消された搭乗者情報に代わり新たな搭乗者情報を入力する。
パイロットスーツのコネクタにケーブルを繋ぎ、情報を送る。
しばらく待っていると書き換えが終了し、ファントムが俺のものになった。
ついでにエンプレスの方も同時に書き換えられたようだ。
<<<ファントムの搭乗者がタケルに変更されました>>>
<<<ファントム、エンプレス、宇宙戦艦の所有者が確定しましたので、全プレーヤーに告知されます>>>
<<<プレーヤー名を公表しますか?>>>
「公表はしない。他のプレーヤーに妬まれたくはないし、徐々にバレるだろうからその時まで黙っている」
<<<分かりました>>>
これでファントム、エンプレス、謎の宇宙戦艦を所有することになった。
今の所所有する事は隠す事にする。
ファントムのパーツは全部1度に使わず、部分的に交換して強化していこう。元々クサナギのパーツはファントムの廉価版リバイバルモデルだから、形状もかなり似ている。
そうそうバレはしないだろう。
ファントムという遺物の所有者が決定した時点で、ゲーム内の全プレーヤーにメッセージが送られた。
<<<ファントム、エンプレス、宇宙戦艦の所有者が確定しました>>>
このメッセージが全プレーヤーに送られた途端、ゲーム内全域で騒然となった。
伝説のアーマードギア ファントムが発掘され、誰かが所有している。
誰が手に入れたのか、今一番の話題となった。
オークションにかければ天文学的な金額になると言われ、出品するかもプレーヤー達の関心どころとなった。
その上、『宇宙戦艦』というE.G.G.内では有り得ない物も遺物として発見された話も話題になり、いつ目の前に現れるかみんな期待していた。
ヴァルトラウテSide
どこの誰が手に入れたんだ?
ファントムか、見てみたいもんだ。
確かタケルがファントムのファンだったよな?見たいと思ってるんだろう。
しかし最近、全然ラウンジにも戦場にも現れないがどうしてるんだ?
大渓谷で大破してもう止めたのかな……
「マッカーサー、最近タケルを見たか?」
「いや、見てないな。この間の盗賊団のミッションの時からだ」
「あたしも同じなんだけど、何か知らないか?」
「大渓谷に落ちたんだよな。まだ出れないのか?
もしかして、今流れたメッセージのファントムを見つけたのかもな。
なら大儲けだよな、ははは」
「……」
やっぱりタケルを見ていないのか。何やってるんだ、タケル。
静御前Side
最近タケルを見ないんだけど、どうしたの?
私嫌われてる?
さっきみんなにメッセージが通知されたけど、あれはどういう事なのかな?
教えてもらいたかったんだけどなぁ。




