第017話-4 合宿 夕飯を作ろう
風呂に入って汗も洗い流したし、着替えもしたし帰ろう。
夏だからまだ結構日が高い。でも、幾分気温が下がっていて、吹く風が凉しい。
来た道を宿泊施設へ戻っていく。
女子と男子の一部は仲良くなったようで並んで歩いていた。
部屋に戻り荷物を片付け、少し休んでから夕飯の準備をする。
今日は合宿やキャンプの定番カレーだ。
「カレーが嫌いな奴はいるか?」
「「「「「いないだろう」」」」」
「じゃあ、どんなカレーでもいいのかな?宗教的に肉に問題のある奴は?」
「「「「「ない」」」」」
「どんなカレーを作るかな?」
片付けも休憩も済ませ調理スペースへ移動する。
セイラ達女子も合流して調理を始める。
合宿ということで屋外に面した場所にある。その方が気分が出るだろうということなんだよな?多分。
ちょっと離れた所にはテントも張れるスペースがあるので、キャンプの炊事場所と兼用だ。
流しと広い調理台があり、まな板と包丁、ピーラーを取り出して、じゃがいも、人参、玉ねぎの皮をみんな剥かせる。
その間に俺は米を研いで炊飯器にセットする。
「すぐに炊かないのか?」
「米に水を吸わせる時間が必要なんだよ。しばらくおいておいてからだ」
「玉ねぎの皮は剥けたぜ」
「剥きすぎてないな?よし、半分に切って1cm幅ぐらいで切ってくれ」
「「「OK」」」
人参とじゃがいもはピーラーで皮を剥いているが、慣れてないから皆苦戦している。セイラには剥きやすい人参を担当させてるが、ほとんど進んでいない。
俺はじゃがいもの皮剥きを手伝って、どんどん皮と芽を取り除いていった。
「速えぇ。これが普段からやってる奴との違いか。うちの母ちゃんももう剥いてるのを買ってるからな、ヤマトみたいに出来ねぇよ、きっと」
「こんなのは慣れだ。やっていれば出来るようになる。
セイラ、人参の皮は剥けたか?」
「剥けたけど、人参嫌い」
「大丈夫だ。これは家から持って来たじいちゃんの人参だから美味しいぞ」
「そう?なら食べる」
よし。これでセイラも人参が食べられる。
じゃがいもは芽も取れているし大丈夫だ。人参もちゃんと切ってある。
後はカットして、電子レンジで火を通しておこう。
肉は宗教的に問題の少ない鶏肉にしよう。一応女子にも確認したが大丈夫。
「じゃあ、作り始めるか」
「「「これでヤマトの手料理が食べれる」」」
「みんな去年とか食べてたんじゃないの?」
「去年は不幸な事故があって他の所にヤマトを取られた。
具合が悪くなったグループが出て、そいつらが食べられる料理を作るのにヤマトを持っていかれたんだよ」
「そんなことがあるんだ。
あっ、でも調理実習の講師にもヤマトが突然呼ばれてやってたよね?」
「あいつはそんなこともさせられたのか?大変だな」
調理だからまだするけどな?
これが他の事だったらやってない。
去年は体調を崩しただけでまだ食事を出来るレベルだったから、おじやとかパン粥とか食べさせて回復してたっけ。
結局、夕飯、次の日の朝食、昼食と3食作った。喜んでたけど、やっぱりせっかくの合宿なのにと泣いてたな。
最後の夕食はBBQで自分達で好きに食べれるようになってたけど、あいつらは肉は胃がほとんど受け付けず俺らの所に回してくれた。
でも、今年はしっかり俺が作ることになった。
といってもカレーだしな。
鶏肉を焼き目が付くまで焼いてから、野菜を入れて炒める。じゃがいもと人参は電子レンジであらかじめ火を通してあるから、玉ねぎが透明になってばらけるくらいまで炒めたら塩コショウ。
粉末のコンソメを使って作ったスープを入れて煮て、市販のカレールーを入れて溶けてとろみが付いたら完成だ。
ただ、一度しばらく冷ましておく。その間にご飯を炊き始める。
「ヤマト、何でしばらく置くの?」
「まず、カレーが乳化が進んで美味しくなるのと、具に味が染みるからだ。
ただ、常温で放置しすぎるとウェルシュ菌が増殖して食中毒を起こすから要注意な?」
「へぇ。料理って単純に作れば美味しいとは限らないんだね」
「まぁな。時間をかけて味を馴染ませた方が美味しい料理もあるし、すぐ食べた方が美味いものもある。料理次第だな。
刺身も身を熟成させる方が美味い場合もあるからな」
「食べ比べてみたい」
「そのうちな」
ご飯が炊けるまで下の学年の調理の様子でも見てこよう。
アリーシャが付いてきて、その後にセイラも来た。来てもそれほど面白いことはないんだけど。
いろいろと見て回ると、一番多いのは野菜の皮剥きが上手く出来ないというのかな。
包丁どころかピーラーすらまともに使えない。
トキオが言ってたけど、自分の母親も皮剥きは上手く出来ないんじゃないかって。それじゃあ、子供も出来ないよな。
とりあえず周囲の学生にピーラーと包丁の使い方を説明して、皮剥きの実演をしてみせる。
後はゆっくり切っていけばいいが、セイラやアリーシャの胸が気になって手元がおろそかになるとケガをするぞ。包丁使う奴は特にケガしないようにな?
他、火加減がひどいのも多かった。最大火力で炒めたり煮たり。
焦げてたりとかじゃがいもなんか煮崩れて原型をとどめていない鍋もあった。それはそれでそういうカレーということでもいいけどさ。
一番凄かったのは鍋の油に引火して盛大にファイヤーしていたところがあった。すかさず野菜クズを一気に放り込んで沈下させた。火事にならなくて良かったよ、マジで。
火加減の方もいろいろ状況に合わせて調整することを教えて、ようやくまともに作れるようになった。
火加減は最大火力にしないようにみんなに注意して、巡回は終わった。
ご飯は炊けて蒸らしも終わったので、カレーを温めて食べよう。
温めている間にトッピングとして、薄くスライスしたかぼちゃやさつまいも、パプリカ、ナスなどをグリルで焼いておいた。
カレーの上に好きに乗せて食べてくれ。
「うん、普通に上手く出来たな。じゃがいもが多少煮崩れてるのは御愛嬌ってとこか」
「「ヤマト、美味しいよ。いつも通り」」
「そうだぞ、見た目は流石にみんなで野菜を切った以上仕方ないよな」
「ヤマトくんはそこまで気にするんですか?」
「ん?料理人は見た目も美味しくするのは当然だからな。訓練としてそこまで目指してはいるよ」
「そうだね。家で作ってもらってる時は見た目も綺麗だよ」
「うん、昔よりすごく綺麗に盛り付けられるようになった。ヤマト、凄い」
「ありがとな」
前は味をメインに考えてたけど、ある程度完成したら次は見た目だ。
これは先が見えない。いつまでもいつまでも自分の技術を磨かなきゃいけない。
でも、プロになるか分からない自分が、どこまで見た目美味しそうに作るかは決めてない。今の所趣味の範囲で頑張ってるだけ。
「美味けりゃあいいんだよ。美味けりゃ正義だ。家庭料理だし合宿の料理だぜ?」
「そうだな。美味けりゃいいか」
「ああ、美味いぜ、このカレー。トッピングもいいな。好きな野菜を付けられて」
トキオは割と敏感で落ち込んでる俺の事を励ましてくれたりする。
今回は特に俺のせいではないけど、調理してると気になってしまう。
性格の問題だからどこかで割り切ればいいんだけどな。親の教育もあってかなかなか割り切れないんだよな。
みんなが満足して美味しそうに食べてるんだから、いいよな。
みんなが笑ってるんだよ。それでいいんだよ。
片付けはみんながしてくれたので、その間にまだ調理の済んでないグループの面倒を見る。
セイラは片付けの役に立たないと放り出されたので付いてきた。そばで見ているのかと思いきや、小さい後輩の女子と話をしていた。
小さい子と何を話しているのかは知らないが、いつの間にか胸を鷲掴みされてた。俺はぎょっとしたけど、セイラは恥ずかしそうに我慢していたから放っておく。ただ、回りの後輩の女子が引き剥がそうとしてたけど。
トキオ達が片付けも済んだぁと声をかけてきたので部屋に戻った。
### 続く ###




