第056話-5 合宿 冬 1日目 おやつから夕食
自分達の部屋に戻ってきたけど、まだトキオやダグもまだ戻ってきていない。部屋に独りだけだから、さっさとウェアを脱いで軽くシャワーを浴びて汗を流してから食堂に移動した。
ぜんざいはもう昼食を作る際に冷蔵庫に入れておいた。
今誰もいない調理場に来て冷蔵庫に放り込んでおいた容器を取り出し、別の鍋にぜんざいを移し温め始める。
温まるにつれて甘い匂いが周囲にばらまかれていく。そうしてると調理場の入口から覗いてく人が増えてきた。
「よぉ、何作ってんの?」
「ぜんざいだ。家で作ってきたのを温めてるんだよ」
「いいなぁ」
「余分はないぞ。うちと俺の奥さん達のグループと知り合いの年下の子達のグループ分しかない」
「くそぉ、俺達も準備しとくんだった。
っていうか奥さんって何だ。まだ学生だろ」
まぁ、誰が企画するかでこういうところで差が出る。寒いからと思って準備して持ってくるぐらい誰か考えてやるくらいしないとな。他の人がそんな事をするかは不明だ。
でも、俺はセイラや北斗ちゃんが小腹を空かせてそうだし、身体の中から温めてやらないと思ったからな。風邪ひいて次の日以降楽しめないのも寂しいし。
「レトルトとかなら今頼んでおけば明日食べれるだろ」
「そっか、それなら甘酒とかなんかもいいよな?」
「いいんじゃないか。俺の方は明日は今のところ準備してないけど、夕食作る時にオニオンスープを作るけどな。
小腹が空くならパン乗っけて食べてもいいしな」
「かぁ~、それも美味そうだな。いいアドバイス、サンキュ」
そんな話をしてるとセイラ達と北斗ちゃん達年下の子が調理場に来た。
男の子達が甘い匂いにちょっとはしゃいでる。少し腹が空いてるのか?
北斗ちゃんと女の子達は待ち遠しそうに大人しく席に着いてる。
「待ってろよ。今配るからな」
「「「「「「「「やった〜」」」」」」」」
「熱いから気をつけろよ」
みんなにぜんざいが行き渡り食べ始める。
年下の子達はフーフーしながら熱っ熱っ言いつつ食べてるのが微笑ましい。
セイラ、いっぱい食べてるけどそんなに量はないからな。
エリーやアリーシャも俺もみんなを微笑ましそう見ながら食べる。甘いし温かいし、年下の子達の食べてるところを見ると身体も心も暖まってきた。
「ヤマトぉぉぉ、まだぜんざいは残ってるかっ?」
ようやくトキオが戻ってきたようだ。となるとダグとヨーコさん以外男子2人と他の女子も戻ってきてるのか?
温めてあるから人数分の器を用意しておく。
「ああ、まだあるよ」
「俺にもくれぇ」
「待ってろよ、他の人のもよそうから」
トキオは年下の男子よりはしゃいでるというか慌ててる。
今年もだけど何度か寒い時期に来て、うちでぜんざいを食べて味を占めてるから逃したくないらしい。
そんなに量を作ってないから1人1杯位しかないと思うから我慢してくれ。
トキオ達にぜんざいを配り食べ始めた。
「「「美味い。美味いなぁ?」」」
「「美味しい。セイラちゃん達いいなぁ、こんなの食べれて」」
「セイラ以外、私とアリーシャは年明け以来よ?まだ2回目なのよ」
「美味しいのは確かでまた作って欲しかったんだけどね。ねぇエリー?」
そんなに食べたいならまた作るけどね。
「兄ちゃん、ぜんざいってどうやって作るの?」
「小豆って豆を煮て砂糖と塩で甘くするだけだぞ。ちょっと手間のかかるけど煮るだけで、難しくない。調べればすぐ作り方が分かるから。
他に既に煮てる小豆があるから、それに水を入れて甘みを加えても出来るぞ」
「う〜〜ん、今度母ちゃんに頼んでみる。ダメだったら自分で作ってみる」
「ま、やってみな。あまり火を強くしないようにな」
「うん」
料理に興味が湧いてきたのか、食欲に負けたのか、作ってみたくなったのは嬉しいな。
結局ダグとヨーコさんは帰ってこないまま、おやつの時間は終わった。
まだ滑ってたりするのか?それともどこかにしけこんでるとか?
まぁ、夕食の時間までには戻るだろう。
みんなに夕食の準備をする時間を伝えて、一旦解散する。
夕食までは特にすることもないし、アリーシャ達と施設内のその辺をぶらぶら歩いて散策することにする。
まだ自分の部屋と調理場、道具のレンタル店しか行ってないからじっくり回ってみる。
地下のアイススケートのリンク、図書室、大浴場、卓球台とかがある遊技場……
屋上に上がると……全面サンルームになっていた。
そろそろ日が沈みそうな時間で、空や周囲がオレンジ色になり始めていた。
普段あまり夕日を眺めることも無かったから、4人でくっついてゆっくり眺める。更に屋上に人がいないのをいいことに3人とキスをした。
「これなら夜ここで夜空が観れるな。外より温かいから楽だろう」
「流星群とか観れるの?」
「いや、この時期はないな。普通に天体観測するぐらいだな。流れ星が観れたらラッキーくらいだ。
でも、この時期は空気が澄んでるから綺麗に観えやすい」
「じゃあ、夜に北斗ちゃん連れて観に来よう」
「ああ、いいぞ」
そのままイチャイチャしながら夕日が沈むのを眺め、夕食の準備をするのにいい時間になってきたから調理場に向かった。
夕食は鍋だ。じいちゃんのところから白菜やネギ、椎茸等と猪肉を送ってもらった。途中エアーモビリティのポートの土産物屋のところでブリやタラ等の海産物も仕入れてきた。結構豪華な鍋になる。
土鍋とカセットコンロ、包丁を準備して、みんなを待つ。
その間、玉ねぎをたくさんスライスして、飴色になるくらいまで炒める。明日の温かい物、オニオンスープ用だ。
それと鍋用の出汁を取っていた。
「お兄ちゃん、何やってるの?」
「兄ちゃん、美味いのか?それ」
「鍋の出汁を作ってるのと、明日ぜんざいの代わりのオニオンスープの玉ねぎを炒めてるんだ。
出汁は料理の基本だし、玉ねぎを飴色に炒めるのはよくやるぞ」
「へぇ~」
大体料理を作る時の基本的な作業だから覚えておいてもいいと思うけど、市販品でどうにかなるんだけどな。
興味があるなら見ていてもらおう。
出汁は事前に鍋に水を入れ昆布を浸けておき、ゆっくり10分くらいかけて沸騰するくらいの火にかける。沸騰する前に昆布を取り出してから、次は鰹節を入れてしばらくしてから鰹節を濾し取って完成。
手間はかかるけど添加物を使わないいい出汁が取れる。
「北斗ちゃん達のは市販の鍋つゆ使ってもらうから、こんなことはしないけどな。とりあえず味見」
「「なんか美味しいかも」」
「市販の出汁もあるからここまでしなくてもいいんだけどな。」
北斗ちゃん達に講釈を垂れながら下準備が終わった。
その頃には他にも年下の子も集まって来ていたので、味見させてみる。それぞれ美味しそうな顔をしてたり、よく分からなかったような顔をしてたり、いろいろな子がいたけど目の前で料理をしてみせる事で興味を持ってくれるといい。
さて、夕食の準備を始めよう。今日は鍋だから具材を切って煮込むだけだ。
みんなが集まって来たところで、年下の子達には交代で野菜や肉や魚を切ってもらうことにする。
猪肉はもうスライスして送ってくれてるからそのまま使う。魚も内臓や骨はもう取り除かれてるから適当な大きさに切るだけだ。
白菜は茎の所と分けて食べやすい大きさに、ネギは斜め切りに、椎茸は大きさに合わせて食べやすい大きさに、豆腐も適当な大きさに切ってもらった。
セイラに様子を見てもらいながら、時々指導してもらってみんな楽しそうに野菜とかを切っていた。
俺達の分はもうほとんど俺が切り、アリーシャとエリーがいくらか切って準備は終わった。ちなみに椎茸は飾り切りしてある。
後は土鍋に盛り付けて、市販の鍋つゆや出汁をベースに作った醤油や味噌、塩の鍋つゆを入れて煮込む。
煮込んでいると当然匂いが周囲に漂うわけで、回りで夕食の準備を始めているグループの目がこちらに向き始めた。よだれを垂らしそうな奴もいた。
ただ、セイラももうよだれを垂らさんばかりに食べたそうにしていた。もうちょっと我慢してくれ。
やはり寒い時の鍋の匂いは魅力的なのだろう。
やっと野菜や肉などが煮えたのでみんなで食べ始める。
そこに北斗ちゃんが自分が切った鍋の野菜を器に盛ってトキオの所に来た。
「トキオお兄ちゃん、これ」
「ん?何だ?俺にか?」
「うん」
「じゃあ、いただこうか……ありがとな」
トキオは何も感想を言わずに北斗ちゃんに器を返していた。
多分自分が切った食材を盛って来たんだろうけど、トキオは何も気にしていなかったのだろう。ただ、食べて終了だと思ったようだ。
北斗ちゃんがせっかく自分が切った野菜を盛ってきたのに、一言も言ってくれないから涙ぐんでるのが見て取れた。
トキオ、一言くらい感想を言ってやれよ?
「トキオ、せっかく北斗ちゃんが野菜とか切って作った鍋なんだから、もうちょっと感想くらい言ってやれよ」
「「「「「そうよ。もうちょっと優しく褒めてあげなさいよ」」」」」
「え?」
まぁ、女性陣はセイラを筆頭に北斗ちゃんの味方だから、現在トキオは総スカンを食らってる。
左欄に女性陣は追い打ちをかけるように……
「ほんとに気が利かない、お兄ちゃんよね?トキオは」
「そうそう。こんな小さい子の女心も分かってあげられないなんて……」
「だから私達くらいの女子の事も分からないのよ」
「「「ねぇ」」」
結構散々な言われようにトキオがうなだれている。北斗ちゃんを泣かせたんだから自業自得だよな?
### 続く ###




