第051話-6 盗賊団退治 頭目
『おい、終わったぞ。次はお前だ。出て来い』
『うるせぇ!これから出る!!待ってろ!』
地下の空間からようやく出てきたが、はっきり言ってデカい。やはり1.5倍はある。
腕部はパワー重視型のパーツが使われている。脚部は大型バーニア、バックパックも大推力のバーニアがありかなり速度が出そうだ。ただ、重量もあるからどのくらい出るか分からないが。
胴体も大きい分ジェネレーター出力も大きいだろう。ビームサーベルが使えるかもしれない。
『これでも、喰らえ。牙王の大型ガトリング砲だ!』
『ほう、撃ってみろよ』
あの機体、牙王と言うのか。まぁ、付けそうな名前だけど。
ガトリング砲を撃ち始めるタイミングで、こちらはシールドバインダー4枚を前方に展開した。
ドガガガガガガガガガガガガガ ドガガガガガガガガガガガガガ
カンカンカンカンカンカンカンカン カンカンカンカンカンカンカンカン
1分後、ガトリング砲の一斉射が終わった。
『何ィィィ、普通のアーマードギアなら粉砕出来るだけの威力があるんだぞ?
削れもしてねぇ。どうなってるんだ?』
『お前、ファントムと宇宙戦艦を誰かが手に入れたアナウンスを聞かなかったか?』
『ああ、あれな。聞いたぜ。世の中ボロ儲けしたやつもいるもんだよな』
『俺だよ。これがそのファントムだ』
『何ィ。そんな幸運野郎が俺達の邪魔をすんな』
『面白いんだからいいだろ。しかもE.G.G.運営から問題視されないし、強い奴と戦えるかもしれないとか、面白すぎるだろ?』
『くそぉ』
次はこちらから行こうか。
シールドバインダーのビームキャノンをガトリング砲に撃ち込む。
バシュ ドガッ
『くっそ、なんて事しやがる。特注品で高かったんだぞ』
『悪かったな。BANされなかったら代わりのガトリング砲をくれてやるよ。
次行くぞ』
俺はアサルトライフルを仕舞い込み、ヒートソードのみで牙王に突っ込んで行く。牙王の懐に入り込みコクピットにヒートソードを突き込もうとした所に、巨大なヒートアックスを打ち込むんでくる。
そのヒートアックスをくるっと外側に回りながら回避し、その遠心力を利用し右腕部から脇腹を斬りつけた。そのまま背後に抜ける。
背後に抜けたところでバックパックにも一撃入れる。
『弱いな。盗賊団の頭目とかいいながら全然弱いな。過去の競技大会の優勝者と聞いたが』
『ああ、確かに優勝したよ。他に強い奴がいなかったからPKに走って、盗賊団の頭目になっちまったがな』
『そんなだから弱くなっちまったんだな』
『ぬかせ!』
牙王はヒートアックスをこちらに向かって横一閃振り抜いたが、ファントムはヒートアックスのギリギリ届かない距離まで下がり回避する。
その後も牙王はヒートアックスをファントムに向けて振り回す。それをアックスが届かない距離で回避し続けた。ただ、こちらのヒートソードは長さは普通サイズなので巨大なアックスの間合いでは牙王の胴体や脚部には届かない。
単調な攻撃だから掻い潜ってコクピットにヒートソードを突き刺す事は出来る。でも、それでは面白くない。それなりの報いを受けてもらわないと。
ヒートアックスを振り回しているのを回避しながら、ヒートソードで腕に傷を傷を付けていく。すぐに破損はしないが機能低下してるし、いずれは切断出来る。そう傷を付けてる。
『クソぉぉぉぉ、当たれ、当たれよぉぉ、何で当たらないぃぃ』
『鈍いんだ、お前の機体はパワーや重量ばっかりで鈍いんだよ。無駄にデカい使い慣れてない機体が動けてないんだよ。
それなら躱せる。死角に入れる。当たらないんだよ』
『そんなわけあるか!俺用にチューニングしたんだ。使い慣れてないわけねぇだろ』
『どんだけ使ったんだ?何回対戦したんだ?
こっちはここ2ヶ月くらいで100戦以上俺より格段に強い奴と対戦したぞ。
どれだけゲロ吐きそうになったと思ってるんだ。ゲームだから吐かないが』
こっちはエレボスの鬼の特訓をさんざん受けたんだぞ。
それにどんだけあのファントムの習熟訓練をしたと思ってる。
そんな見かけ倒しで、大して使ってないアーマードギアに負けはしない。
更に速くヒートアックスを振り回して攻撃してくるが、全てをことごとく回避した。テュポーンの攻撃の方が速く鋭く、その攻撃に慣れた俺には簡単に回避できる。
そろそろ避けるのも飽きたし、攻撃するか。
振り回してるアックスをこちらが片手で持つヒートソードで受け止める。
牙王が更に力を込めて押してくる。しかし、こちらのヒートソードは微動だにしなかった。
『ぐぅぅぅ』
どんどん力を込めてきてるがこちらは変わらず微動だにせず、代わりに牙王のヒートアックスの刃にヒートソードの刃が食い込んでいく。
こちらも力を入れて……アックスの刃の部分を切り飛ばした。
『なっ!?何で刃が斬れる?硬さも切れ味もそんなに変わるもんじゃねぇだろ!!』
『そんなわけないだろ。こっちのは宇宙戦艦内で手に入れた代物だ。普通なわけないだろ』
『くっそぉぉぉ、これならどうだ!』
牙王がファントムに向けて右パンチを撃ち込んでくる。
俺は避けもせず左手で受け止めてみせる。掴んだ牙王の右腕は全く動かせなくなった。ファントムのパワーが牙王を遥かに凌駕しているからだった。
牙王は右腕を引き戻そうとしても、それすら出来なかった。
『どうなってる!?デカい分、パワーもジェネレーター出力もそこらのより上のパーツを使ってるのに』
『どっちもデカけりゃあ数値が上になるわけじゃねえよ。まあ、そういうパーツが多いのは確かだけどな
小さくても数値が上のパーツはあるんだよ、格段に価格が高いけどな。
それにファントムはジェネレーターを2機搭載してる』
次の瞬間、ヒートソードで捕まえている牙王の右腕を肩から斬り取った。
引き戻そうとしていた状態で斬り取ったため、その反動で後ろにひっくり返った。立とうとするが、片腕を失い上手く立ち上がれない。
ようやく立ち上がった。
『くそっくそっくそっ、次はこれだ!』
脚部のバーニア全開で高速移動し、背後に回ったところでジャンプしキックしてきた。見るまでもなく大した攻撃でもない。
ジャンプする事で機体の重量もキックに乗せて威力を上げるつもりだろうが……シールドバインダーで受け止めた。シールドバインダーのショックアブソーバーで衝撃は全て吸収され、ファントムは揺るぎもしなかった。
『ふざけんなぁぁぁぁ、俺は強いんだぁぁぁぁぁぁ』
『他人の金やパーツを掠め取って作った機体で強くなれるわけもないだろ。
それに弱い奴とばかり戦って、お山の大将を気取って強くなったつもりでいただけだ。おまえの腕はもうとっくに錆びついてボロボロなんだよ』
『そんなことはねぇ。俺は本当に強いんだぁぁぁぁぁぁ』
『オーバークロック フルブースト!』
せっかくだから必殺技の練習台になってもらおう。オーバークロックも使い慣れておきたいしな。
牙王の周囲を高速移動し回っていく。
加速…………加速…………加速……加速……加速……
牙王が近付いてパンチやキックを仕掛けてくるが当たらない。撃ち込んできた時はもう別の場所にいる。
更に加速し残像が見えるまでになる。1発も当たらないこの時点で牙王は攻撃を諦め呆然としていた。こちらはまだまだ加速する。
ゲーム内とはいえを擬似的にGを再現している。加速するごとに自分の身体にかかる圧力が上がり身体が軋む。
ついに残像見えるレベルではなく、見えなくなるまで加速した……
『…………消えた?』
消えてはいない。表示する処理が間に合わないまでに加速しただけだ。
ここまで加速してから一気に四方から攻撃する。
右からヒートソード、左からパイルバンカー、正面からパンチ、背後からキック、四方から同時攻撃を加える。1機しかいないのに同時にだ。
牙王からも4方向に突然ファントムが姿を現したように見えただろう。
そのままなす術もなく攻撃を食らい…………沈黙した。
最後にヒートソードをコクピットに突き刺し討伐完了だ。
ナム・サンダーがエンシェントドラゴンに対して使い倒した技とされている。ライブラリで読んだファントムの情報にあった。
いつかファントムを手に入れたらやりたいと思っていたのを、エレボスに特訓してもらい実現に至った。
これも鬼のような特訓で胃にダメージを受けることになった。
『ふぅ~、これで終わりか。
サポートAI、みんなの状況は?』
『マスターがのんびりやってたせいで、とっくに皆さん終了してます。皆さん、暇なので周辺の捜索と掃討をしてもらってます。
こちらでも支援機やドローンでも索敵していますが、もう見つかっていません。完全に終了ということで大丈夫でしょう』
『みんなに撤収してもらって、E.G.G.運営にも報告しておいて』
『分かりました』
他のメンバーも無事作戦終了し、掃討戦をしてくれていたようだ。
こっちがゆっくり頭目と側近を討伐してたからな。悪いことした。
後は頭目と側近の機体にビームキャノンを何発も撃ち込んで去る事にした。
バシュ バシュ バシュ バシュ




