第051話-1 盗賊団退治 始動
年が明けて数日後……今年初めてE.G.G.にダイブした。
いつものように自動でメンテさせて最適な状態にしている。
去年の終わりは海賊団を結成し、急遽参加する事になったエレボスからの特訓で皆地獄を見ることになった。その分、確実に強くはなったが。
特訓でパーツはボロボロになり何度か全交換するような苛烈さだった。
パーツは宇宙戦艦内にいくらでもあるから皆金銭面に負担をかけていないが、それでも精神は擦り切れたようだった。
その上、時々実践訓練ということで海賊行為を行った。
1機で小さい砦を陥落させたり、俺達数機で100機はいる演習訓練に乱入したり……
鬼のような訓練をさせられた。
それでも通常のヒートソードで傷が付かないような装甲で覆われた海賊団のアーマードギアはダメージもほぼ付かず、一方的に斬りつけるような状況になっていた。
かと思えば、テュポーンがこちらの装甲をズタズタにするほどにしごかれ、心を折られたりもした。
そんなしごきの中スナイパーがケスカと合わせて2機に育ち、遠距離射撃で上位プレーヤーを潰せる等近接・遠距離どちらでも戦える機体が揃った部隊が出来上がった。
自分のファントム・セラフも全力のテュポーンと対等に戦えるまでに訓練されたので、この部隊でならそうそう負ける事はないだろう。
『マスター、E.G.G.運営からまた依頼が来たのですが……』
「何の依頼だ?また面倒な事じゃないよな?」
『盗賊団の退治だそうです』
「以前にもヤマタノオロチとエッダで討伐したけど、それとはまた別なんだよな?」
『多分そうだと思いますが、問い合わせしてみます…………別だそうです。
今回はドラゴニクスとタルタロスの国境付近の険しい山に居座ってるようです。ドラゴニクスもタルタロスも大軍勢で攻め込むことが出来ず、少数で攻め込んだ際返り討ちに遭ったようです』
「それは面白そうですね。地の利を活かしているのでしょう。こちらはフライトユニットもありますし、強化していますからそうそう負ける事はないでしょう」
すでにエレボスがアメノミナカヌシの教官兼参謀といったポジションに収まっている。
戦闘を行うかどうかの判断についてアドバイスをしてくれる。
実際、簡単に傷もつかない装甲の今の戦力で、負けそうになると判断される事はないからこれまで避けた戦闘はない。
今回も勝てるだろう。
しかし、どこにでも盗賊団というのは出来るのか。
E.G.G.がPKを認めてるゲームではあるが、倒した相手のパーツやアイテムを奪い取るまでは許容されていない。せいぜいお互いの同意でパーツを譲渡するのがせいぜいだ。
それをほとんど強制して譲渡させる。そこが問題になっている。
プレーヤーが増えれば問題行動も増えるが、直接E.G.G.運営がBANしないでプレーヤーのミッションにして討伐させ、その後BANする事にしている。そのため、その時どんなに無惨な倒し方をしても批判を受けない。
前回の討伐もかなり無惨に倒された機体が多かったらしい。
「じゃあ、その依頼受けるってE.G.G.運営に伝えて。地形や拠点の持ってるだけの情報もこっちに渡すように言っておいてくれ
後、メンバーに依頼内容を送っておいて」
『分かりました。出撃の日程も連絡しておきます』
「頼む」
初見でも今の装甲の硬さから考えれば、どう狙われても簡単にダメージを受けないようになっているはずだ
うちはフラットユニットもあるから地形の影響は軽減出来る。それにどこからでも狙える。飛べない盗賊団に遅れは取らない。
それでも地形の情報は欲しい。隠れている機体を逃がすわけにはいかない。
「タケル、出撃はいつにするんですか?」
「2日後だな。敵の状況があまり変化しないうちに攻めたい」
「私は予定が空いているので参加しますが、他のメンバーは大丈夫でしょうか?」
「今まで俺がラウンジにいるとみんないたからな。大体都合が合うはずだ」
「へぇ~、今まで皆さんと仲良くされてたようですね。へぇ〜」
「別にそれ程仲良くはしていない。最近ちょっと話すようになっただけだ。
基本俺はソロでやってたんだから」
元々他のプレーヤーとは軽い付き合いしかなかったが、ヴァルトラウテは気まぐれで強くして対戦相手にと思っただけだし、静御前はしつこくまとわりつかれてただけだ。
だん吉とマッカーサーはたまたま話すようになっただけで、アナビトリアは対戦相手として面白かったから。
特別仲良くしてはいないんだがな。それでも海賊団を組んでもいいくらいには信用しているからか。
変な装備を渡してもあまり怪しまなかったからっていうのもあるか。
「それでも羨ましいのですよ。もっと早くタケルに会いたかったわ」
「??」
エレボスの言うことが何を言ってるのかよく分からないんだが。
ただの対戦相手だろ?いつどこで会ったところで変わりはしないと思うが?
2日後……欠員もなく皆が揃った。皆、恐怖に怯えることなく平常心でここにいる。
『皆さん、盗賊団の拠点に向けて発進しますよ』
『分かった。盗賊団に見つからないように高度を上げて進んでくれ』
『OKです』
宇宙戦艦を簡単に確認出来ないように超高高度まで浮上させ、ドラゴニクスとタルタロスの国境付近まで飛行を行い、問題の盗賊団の拠点上空まで移動する。
通常のアーマードギアでは1万mも離れたものをスキャン出来ない。こちらは宇宙戦艦の高性能レーダーで盗賊団を確認したが、この距離では解像度が低いため何機いるかまでは分からなかった。
それでも集まっているポイントは4箇所。こちらも4チームに分けて攻めればいいだろう。何機いるかは接近してみないと分からないが、下っ端なら群れていてもうちのメンバーなら負けはしない。
1番手前第1地点をヴァルトラウテのピアレイとアナビトリアのケスカ、
その次第2地点をだん吉のアルカイド、マッカーサーのヴァン・ダイク、静御前のアリスティアに任せる。
盗賊団の拠点の入口に近い位置にいるため、敵機は数が多いだろうが下っ端が大半と思われるためこの5機を振り当てた。
フライトユニットで飛行している分アドバンテージもあるだろうから楽勝のはずだ。
拠点中央付近の第3第4地点2箇所はエレボスのテュポーンと俺のファントムで潰す。
流石に競技大会上位レベルのプレーヤーが居るわけもなく、優勝したテュポーンと全力のテュポーンに負けない程に鍛え上げられたファントムがそれぞれ1機ずつでも大丈夫だろう。
盗賊団拠点攻略の布陣としてはこれでいい。
追加戦力としてそれぞれに支援機を複数貼り付けておくが、たぶん不要だ。エレボスが地獄のような特訓をし、これ以上ないくらいに戦闘技術も強化した。
さて、みんなの機体を投下しよう。
宇宙戦艦の船艇のハッチが開き、フライトユニットに乗ったピアレイ、ケスカの順にそれぞれの拠点付近で送り出され、支援機も飛び出す。
最後に単騎でテュポーンとファントム・セラフがそれぞれ飛び出して行った。
『皆さん、健闘を祈ります。無事に帰ってきてください』
### 続く ###




