第050話-5 年末年始 元日2
エリー達の着付けや髪のセットが終わったので初詣に出かける。
これだけ綺麗な3人を連れてとなると危なくて行きたくないのだが、楽しみにしている3人のために行かないという選択肢は却下するしかなかった。
そんなに遠くないから歩いて行ってもいいのだけど、今日はモビリティで神社まで行く事にする。
モビリティに乗って5分もしないうちに到着した。
「セイラ、アリーシャ、エリー、回りに気をつけろよ?後、はぐれないように」
「ヤマト、心配し過ぎですよ。子供ではないのですから」
「そうだよ。着物を着てるからそんなに動かないし、ヤマトが見える範囲にしか移動できないよ、たぶん」
「そうそう、そんな無茶はしない。ちゃんとヤマトのそばに居る」
「そのセイラが一番心配なんだけどな。今まで着物を着させてるのにどれだけ見失ったと思ってる。
屋台に行ってるだろうから見つけやすかったけど」
「ぶぅ~」
セイラは屋台が集合場所のようなもんだからまだいいが、ここが初めてのアリーシャとエリーはどこに行ってしまうか心配だ。
今話したから屋台の方に行ってくれてればいいけど、他の所に行ったらすぐに見つからないだろう。
そんな事を考えていると離れた所から俺を呼ぶ声がする。誰だ?
回りを見ると、こっちに手を振る子連れの2人組がいる。こっちに声をかけてるんだよな?
そのままこっちに向かって歩いて来る。
う〜〜ん、誰だろう?子連れとかそんな知り合いはリアルにいないはず。スーパーの店長なら子供がいてもおかしくはないけど、体型が違いすぎる。
「お〜〜い、ヤマト。いい加減気付けよ」
「おお、トキオか。こっちに来るとは聞いてなかったが?」
「親と親戚が、俺と夏休み明けに言った従姉妹の子を見捨てて旅行に行っちまいやがったんだよ。
それで暇だし、こいつの面倒を見なきゃいけないからヤマトを頼ってきたんだよ」
「それぐらい1人で面倒見てやれよ。光源氏計画はどうした?」
「そんな事する気はねぇって言っただろ!」
確かにこんな小さい子を10年以上自分に気持ちを向かせておくなんて事は無理だろう。同年代の子を好きになったりするのが落ちだ。
余程好かれてないといけないしな。
しかし、今日俺達が初詣に来なかったらどうするつもりだったんだ?特に行くとは言ってなかったはずだけど。
前にうちに泊まりに来たことはあるから、うちに直接来ることも出来たはずなんだが。
「何でここで待ってたんだ?」
「アリーシャ嬢が初詣は初めてっぽかったから。ヤマトなら初めての子を連れてくるだろ?」
「まぁ、確かにな。着物を着たいって言ってたし、連れて行かないって選択肢は最初はなかったな。でも……」
「ああ……確かにあの破壊力なら俺も躊躇うな……絶対に回りの男が寄ってくる」
「だろ?
とりあえず分かった。参拝が終わったらうちに行こう」
「助かるわ~。
そうだ。こいつは従姉妹の北斗だ。よろしくな」
既にセイラ達3人がトキオの従姉妹、北斗ちゃんを可愛がっていた。
これまで身近に年下の子が居なかったこともあって、抱きついたり頬をスリスリしたりしていた。北斗ちゃんもそれほど嫌がっていないからまあいいけど。
とりあえずトキオと北斗ちゃんを連れて参拝に。既に参拝の列が結構伸びている。30分以上は待たされるか。
セイラとアリーシャは北斗ちゃんと手を繋ぎ、エリーは俺の手に自分の手を絡めて、トキオはその反対隣を歩く。
流石に小さい子を連れているセイラとアリーシャに声をかける奴はいなかった。俺の手に絡みついているエリーにも声をかける奴はいなかった。
それでも参拝が済んでも俺達の後ろにまた並んで3人を眺めてる奴らがいるのが邪魔だった。
「それにしてもやっぱり凄ぇ破壊力だな、セイラ嬢達の着物姿は。参拝の終わった奴が横を通りながらずっと見てて、更に後ろに並んでる」
「だから着物を着た3人を見た時点で初詣に来たくなくなったんだよ。髪を整えたのは俺だけどさ。
絶対ヤバいことになるって思うんだけど」
「ははは、そりゃ仕方ねぇな。3人共嫁にするんだから諦めろ」
「「「「「「「何ぃぃぃ?」」」」」」
「は?何事?」
トキオの一言から周囲の野郎共が突然声を上げた。何だ?
その直後から俺への野郎共の視線が痛い。更に何かブツブツ言ってる奴もいるし怖すぎる。
北斗ちゃんもその雰囲気を感じ取ったのか半泣き状態だ。
早く帰りたい。
そのまま20分ほど参拝の列の中で俺はいろいろと小声で何かを言われ続け、狂気の視線を向けられ続けた。
覚悟はしていたけど流石に怖い。刺されたりすることはないにしても心地が悪い。
こんな美少女3人を嫁にするとかいう優越感などありはしない、ここでは。じいちゃんとこの若い衆に妬まれる方がまだ気が楽だ。
そんな参拝もなんとか終わる。
アリーシャに一応知ってはいるだろう「二礼二拍手一礼」の作法を教えて、その通りにアリーシャが実行する。
イメージトレーニングをしていたのだろうか随分様になっていた。
セイラとエリーは何度も参拝しているから問題はなかった。更に着物姿と相まって眩しいくらいに綺麗な所作だった。
更にセイラが北斗ちゃんに作法を教えていた。
珍しい。小さい子の面倒を見てる。
ちゃんとお姉さんしてるなぁ。やっぱり身近に小さい子がいるとセイラもちゃんといいお姉さんになるんだなぁ。
「セイラ、いいお姉ちゃんっぷりだな。普段もそんな感じで」
「ヤダ」
「そうか、まあいい。屋台を回ろう。北斗ちゃんも好きなの買っていいからな」
「いいの?」
「ああ、トキオがそのうち払ってくれるから、いっぱい食べてもいいぞ」
「そんなに金はねぇ!」
「冗談だ。母さんから結構軍資金を貰ってるから。
ただ帰ったら昼食はお節料理があるから、それなりに腹は空かせておいた方がいい」
「お節料理ってヤマトの親父さん達が作ったやつだよな?いくら払えば食べれるんだってやつ。
屋台のも食いたい。けど、お節料理も食べたい。悩む」
そうだな。俺も屋台の焼きそばとかたこ焼きとか食べたい。でも、父さん達のお節料理も普通に食べるからいくらか腹を空けとかないとな。
みんなで屋台を回るけど、セイラが北斗ちゃんの面倒を見ながら回ってるとか驚きだ。食べさせてあげたりソースで汚れた口元を拭いてあげたり。
よっぽど北斗ちゃんが可愛いんだろう。
エリーやアリーシャも可愛がってる。俺は放って置かれてる。まあいいか、セイラ達3人が楽しいなら。
いくらか焼きそばやたこ焼き、お好み焼き等を買い込んで帰ることにする。
父さん達やマイケルさん達、アムロさん達にいいお土産になるだろう。
セイラ達も屋台を満足したみたいなので、トキオと北斗ちゃんも連れてモビリティで帰って来た。
帰り着くともう父さん達はマイケルさん達やアムロさん達とお節料理を肴に飲んでいた。
マイケルさん達は毎年やってる事だけど、アムロさん達は今回初。うちの父さん達のことを知っているからか、お節料理がいくらになるか悩みつつも食べていた。マイケルさん達も最初そうだったけどな。
「ヤマト達、おかえり。おや、トキオくん、久しぶり。そちらのお嬢さんは?」
「どうも、お久しぶりです。俺の従姉妹です」
「北斗です。はじめまして」
「トキオが光源氏計画してる子だ」
「へぇ~、頑張ってね」
「そんなことしてませんよぉ」
トキオ達のあいさつも終わり、取り皿を渡してお節料理を食べ始めた。
父さんの方には屋台の焼きそば等を回しておいた。
「うめぇ~、やっぱりムサシさんたちのお節料理は美味い」
「今年は洋風もあるからな。北斗ちゃんはそっちの方がいいだろ?」
「私が取ってくる」
「お姉ちゃん、ありがとう」
「セイラがお姉ちゃんしてる。ヤマトくんに甘やかされてた、あのセイラが……」
「ぶぅ~、私だって年下の子の面倒くらい見るよ!」
今までのセイラの事を考えると、そりゃあマイケルさんも驚くだろう。俺も神社で驚いたし。セイラだってやれば出来る子なのは知ってるけど、実際目の前で見れば驚いてしまう。母性本能とかが強いのかもしれない。
いいお母さんになりそうだ。
昼食にお節料理を食べ、父さん達はそのままお酒を飲みながら宴会を続けていた。
俺達は、エリー達が北斗ちゃんと遊び、俺はトキオと話をしながら時々父さん達の要望でつまみを作った。
他にもおやつにホットケーキを焼いた。この時、セイラが「私も焼きたい」というので教えながら焼いた。何度も焼けば上手くなるもので、上手く焼けたものは北斗ちゃんに、普通に焼けたものはアリーシャ達に、ちょっと焼き過ぎで失敗したものは俺とトキオで食べた。
それでもトキオは「巨乳美少女が焼いてくれたホットケーキ!」という事で喜んで食べていた。俺も喜んで食べたけどな。
今日はトキオも北斗ちゃんも泊まって行くことになった。
それについてセイラが非常に喜び、甲斐甲斐しく北斗ちゃんの面倒を見ていた。お風呂も一緒に入り、頭や身体を洗ってあげていたそうだ。今も髪を乾かしてあげてるし。
俺はトキオと風呂に入ったが、そんな面倒は見てやらない。
「悪いな、急に押しかけて」
「まあいいよ。特にセイラが喜んでたから」
「そうか。でも、セイラ嬢がうちの北斗の面倒を見てるのは新鮮だったな。学校じゃあ見てもらってたからな」
「そうだな。回りに年下の子があまりいないからそういう所はなかなか見れないな。
でも、動物園や水族館なんかでは小さい子に優しくしてたから、ちゃんとお姉さんらしくは出来るんだよ」
「ふ〜〜ん、子供が出来たら可愛がり過ぎて甘やかしそうだな」
「確かにな」
そんな話をしながら風呂に入り、今日1日の疲れを洗い流した……
これで今年1年の始まりだ。セイラが今日みたいにお姉さんやお母さんみたいにしっかりとした女性になってくれますように。




