第049話-3 クリスマス イブ2
みんなでコテージに戻ってから、釣ったイワナの下処理だ。
ヌメリとウロコを取ってから三枚に下ろし、塩を振ってしばらくおいて水分を拭き取り、最後に酒を振って臭み取りをする。
さて本格的に夕食の準備をする
鶏肉を1羽丸ごとのお腹に、野菜と生米を炒めたものをいっぱいに詰めてからしっかり穴を塞いでからオーブンで焼く。
イワナはポワレにしてレモンバターソースをかける。
他にサラダと野菜のゼリー寄せを出す。ゼリー寄せはもう家で作っておいたものを持って来た。
これらを鶏肉の焼き上がりに合わせて、他の料理とバゲットをスライスしたものと出していった。
鶏肉はテーブルで切り分けて、それぞれ皿に乗せてみんなに配っていく。
これで夕食の出来上がり。
「いただきます」
「「「いただきます」」」
「どうだ?鶏肉の丸焼きは?」
「美味しいよ。中のご飯が鶏の味を吸収してて、普通のピラフよりすごく美味しい」
「鶏肉の皮もパリッと焼けてて、しかもちゃんと味付けしてて北京ダックみたいに仕上げてていい味よ」
「鶏肉もご飯もいっぱい食べれて嬉しい。毎年作ってくれてたチキンより美味しい」
「なら良かった。作った事なかった料理だからな。鶏肉の方は本当は塩コショウくらいなんだけど、中華系のタレを付けてみた。
中のご飯に鶏肉の旨味を持っていかれるから、別に味付けした方が鶏肉も美味いだろ?」
「「「うん、美味しい」」」
手間はかかったけどうまく出来たようだ。
元々ヨーロッパの方の料理だったと思うけど、それに中華というか照り焼きチキン風と合わせてみた。
北京ダックみたいに元々出がらしになる鶏肉は食べないという話もあるくらいだ。だから、せっかくの鶏肉も美味しく食べたいからちょっといじってみた。そうしないとセイラの腹も満たせないからな。
イワナのポワレはポワレ自体何度も作ってるから問題ないし、野菜のゼリー寄せも同様だ。セイラに野菜を食べさせるために覚えた。失敗はない……はず。
サラダは普通にシーザーサラダにしてみた。セイラが一番野菜を食べてくれるから……
「ポワレの魚は今日私が釣り上げたものですか?」
「今日釣ったばかりのイワナを三枚に下ろして作った料理だ。
釣り上げたばかりの魚だから旨味という点ではちょっと足りないかもしれないけど、自分で釣り上げた魚は美味いだろ?」
「はい!釣りはなんというか楽しいですね。また釣りをやってみたいですわ。……ただ、虫の餌は嫌ですけど」
「ははは、ここは釣り堀だから冬でも釣れなくはないけど、またそのうちに来るか?
後、じいちゃんとこの川は夏になれば鮎釣りが出来る。鮎釣りも虫の餌は使わないから大丈夫だろう。ただ、難しい釣りになるけどな」
「いいですわね。やってみたいです」
自分達が釣った魚だからか、エリーはいつも以上に魚をパクパクと食べている。やっぱり野菜もだけど自分が取ったものは美味しい。
エリーは釣りにちょっとはまったみたいだ。ただ、鮎釣りはなかなか難しいかもしれない。
鮎は漁協で管理している魚だし、釣りに興味が出て来たならじいちゃんに相談して漁協の手伝いなんかもさせてみてもいいかもな。
セイラとアリーシャは自分で釣った魚を食べるのは2度目だけど、イワナは美味しく食べている。気に入ってるみたいだ。
「ヤマト、このポワレって難しいの?」
「慣れればそれほどでもないぞ、ムニエルとか焼き方の一つだから。料理を教える時にその辺もしっかり教えるよ」
「よろしくお願いしま~す」
「セイラとエリーにもちゃんと教えるからな」
「私も作れるようになりたいですね」「むぅ~」
「上手く出来なくてもただの焼き魚になるだけだから気にしなくてもいいぞ、セイラ」
その後もクリスマス・イブの夕食が進み、大きかった鶏1羽の丸焼きも主にセイラの腹に収まった。
野菜のゼリー寄せもアリーシャとエリーにも好評で、また何かイベントの時に作って欲しいと言われた。
ふう~、これで夕食も無事終わった。今日のクリスマス料理は全体的に好評だったようだ。
次の正月料理はうちの父さん達の担当なので、雑煮担当の俺はいくらか気分が楽だ。
でも、来年のクリスマスや誕生日の料理は、また何かいい料理を出せるように考えておこう。
後は教会のミサに参加するだけだけど、まだまだ時間もあるのでゆっくりお茶を飲みながら待つことにした。
まだ、セイラのお楽しみのケーキもあるし、ゆっくり話をする。
「ヤマト、教会のクリスマスのミサの時間が随分遅いんだけど何で?」
「それは俺も知らない。ここの社長のおじさんからの情報だから。
やっぱりイベント的なミサだからじゃないのか?イエスが夜、特に深夜に生まれたとかって話から企画してるんじゃないか?」
「そうね。全世界が統一されてかなり時間も経ってるし、宗教色もだいぶ薄まってるから、日本ではイベントとして教会に来てもらう感じになっているからじゃないかしら?」
「日本は元々宗教が厳格じゃないからな。クリスマスなんかそれこそイベントだからこっちの教会もそれに乗ってる感じだ」
「商業的で緩いんだね。前居た所だと信じられないよ」
ここはどこかの宗教に偏ってないので、あまり厳しいと来てくれないから。
仏教自体も懐事情が大変で、どこかが一人勝ちしてるわけじゃないからイベントを開催して来てもらおうとしてるんだよ。
そのおかげで今日夜遅い時間にミサを開催してくれて、俺達は雰囲気を楽しめるわけだ。
信心深くなくてごめんなさい。せっかくなので楽しませていただきます。
ケーキを1ホールみんなで食べていると、そろそろ教会に出かける時間だ。
モビリティの手配は済ませてある。もう来る。
みんな着替えて準備は済ませてあるので、道路の方へ向かった。
周辺はかなり真っ暗になっていた。一応、月と星の光が回りを薄く照らしていたが、足元は見えづらい。
ランタン型のライトで照らしながら歩いていく。
みんなが俺にくっついてモビリティの待つ道路に辿り着き、乗り込んで教会まで。
モビリティでしばらく走れば教会に到着した。
今日のミサに参加する人が教会の周りに大勢いた。意外に人気らしい。コテージのおじさんも奥さんらしい人と来ている。こっちに気付いて手を振ってきた。
こっちも手をあげて応えた頃、ちょうど開けられた教会のドアから中に入る。中は長椅子が並べられていて、その一つに4人で座った。
正面には十字架が飾られていて、神父様が立っていた。
「いろいろ言ってたけど教会はちゃんとしてるね」
「そりゃあ、建物くらいはそれなりにちゃんと様式に則った造りになってるだろ」
「そうね。昔から建物は立派なのを作ってるわよ」
「そうなんだ。でも、建物を立派に作れるなら、中身も立派にして欲しかったぁ」
「無茶言うな。日本の神父様も大変なんだ」
それから教会の営業にまつわる話をしていると、ミサが始まる時間になり回りが静かになった。
そして、開祭の儀から始まり、讃美歌を歌い、聖書の朗読が行われた。
アリーシャ以外は初めてのミサで緊張しつつ、神父様のありがたい講話を聴く。セイラはもう微妙に舟を漕ぎ始め、アリーシャは久しぶりのミサで神妙な顔で神父様の話を聞いている。
なかなか興味深い話をしていて、将来のために考えさせられた。もう俺独りの人生ではないんだから、これから4人で頑張っていかないとなぁ。
今日は来て良かったと思う。
最後に閉祭の儀を行ってミサは終わった。
アリーシャは随分感動していたようで、未だにこちらの世界に戻ってきていない。しばらく放っておこう。
セイラは夢の世界の住人となっていて、すぐには起きそうにない。
教会前は帰る人でいっぱいのため、モビリティを手配しても邪魔になりそうだ。まだしばらく教会は開けていてくれるそうなので、エリーと話をしながら待つことにする。
「今日のミサはどうでしたか?」
エリーと話をしていると神父様が声をかけてきた。まだ学生の俺達が気になったのかもしれない。
「初めて来ましたけど、興味深い話が聞けて良かったです。年に一度くらいはこういう所に来るのもいいかと思いました」
「そうですね。私もこれから皆で過ごしていくために大事な事が聴けたと思いますわ。厳かな雰囲気でクリスマスにいい感じで過ごせたというのもありますけど」
「それは良かった。若い方にもっと教会に来てほしくて、深夜にクリスマスのミサを始めてみたのですが……」
「日本はイベント好きですからいいと思いますよ。今日も結構な人数の方達が来られてたみたのですし、初めて来るにはいいかもしれません」
神父様も悩み事はあるようで、見ず知らずの若い俺達にいろいろ話してくれた。解決策が出るわけではないけど、俺達くらいの年の人達の思うところが聴けて参考になったそうだ。
そろそろ教会の前も人が少なくなったようだし、アリーシャもこちらに戻ってきたので帰ることにした。
神父様に「また来てくださいね」と言われ、来年もまた来ようかと思う。
寝ていたセイラを起こし、手配したモビリティに乗ってコテージに戻る。
遅い時間だけどお風呂に入り、4人仲良く温まった。
そして……いつものようにみんなでスキンシップをしながら愛を確かめ合った。更にベッドに移って2回戦が始まり、明け方まで激しい激戦が繰り広げられた。
俺はただただ愛する人達を愛棒で刺し貫いて、天国へ逝かせ続けた……




