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TRIPLE-私の知らないあいつは私の知ってるあいつ-  作者: EPO


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第045話-9 収穫・秋祭り 農場見学

 秋祭りも無事終わり、朝の畑仕事が終わってから屋台の片付けに参加した。

 設営も大して時間がかからなかったが、撤去も大して時間がかからなかった。鉄板とかの機材は昨日粗方綺麗にしておいたので最後の洗浄くらいで終わった。


 いつも声をかけてくれてるあの人の名前を聞いてなかったから、また声をかけられた時に聞いた。

 「そういえばお互い名乗ってなかったよな」ということで名前を教えてもらった。ファミリーネームは比婆さんだそうだ。ファーストネームまではまだ教えないって。

 こっちは父さんにも会ったそうで「両国」なのは知ってるから、ファーストネームの「ヤマト」と伝えた。


 これでここでの知り合いが増えていく。それもいい。

 こうやって俺達の生活圏が確立されていくんだな。

 まだ、これから知り合いを増やさないとな。


 早々に片付けも終わり、舞台はまた別の日に業者さんが片付けてくれるそうだ。

 ということでこれで終了。午後は農場見学だ。昼食を食べに戻ろう。


「じいちゃん、帰ろう」

「ああ、ちょっと待ってろ。舞台の片付けの打ち合わせしてくる」

「分かった。じゃあ、他のとこ手伝ってる」

「先に帰ってていいぞ。昼飯の準備もあるだろ?」

「昼食はセイラ達が作るみたいだから、時間を潰して帰る方がいいんだよ。もうちょっと手伝っていくよ」

「分かった。すぐに終わらせる」


 他の所の機材の片付けを手伝い、ついでにアリーシャ達3人の事でいろいろ突っ込まれからかわれた。まぁ、もう少しすればもっと身近な付き合いになるし、このぐらいは仲良くなるための許容範囲だ。

 からかわれてる最中にじいちゃんが来て、連れて行かれた。




「いつの間に嬢ちゃん達が昼飯を作るようになった?」

「昨日の昼だよ。じいちゃん、居なかっただろ?祭りの方にずっと詰めてたから」

「そうか、でもなんで?」

「ばあちゃんと何か話してたからな。それで何か言われたんじゃないの?結婚後の生活の話で」

「あいつならいいそうだな。無茶な事はしないだろうから放っておいても問題ないだろ」

「俺もそう思うから放ってる。ちょっとくらい調理に興味が出ればそれもいいし」


 今のところ調理というものではないけど、興味が出ればもう少し手間をかけた料理の仕方を教えるけど。

 何かやりたいというのであれば、教えるし任せる。


 家に帰ってエリー達の作った昼食を食べた。

 今日は揚げ物だった。市販の冷凍食品の唐揚げ、コロッケ、メンチカツを揚げていた。ちょっとキツネ色というより黒いけど。

 油の温度が高くて時間が長かった感じ?


「ヤマト、どう?美味しい?」

「美味しいよ?ちょっと揚げ過ぎだけど」

「「本当に?」」

「うん、慣れれば綺麗にあげられるよ。温度と揚げる時間次第だ」


 どんまいだ。こんなのすぐ慣れる。俺なんか初めて揚げた時は炭化したからな。十分十分、美味しいよ。

 じいちゃんも美味しいって食べてるし。


「そういえば……じいさんもヤマトも美味しいって範囲が広いんだよね。上は厳しいけど下はゆるいんだよね。

 少しくらい失敗してもまずいとは言わないんだ。あたしも結婚したばかりの頃、それで恥をかいたことがあるよ」


 3人は納得してない顔をしてるなぁ。でもちゃんと味は分かってる。人によっては美味しくないと思うのかもしれないけど、俺にはアリーシャ達の料理は美味しく感じるんだよ。

 別に誰の料理でもというわけじゃない。




 そんなやり取りのあった昼食を美味しく食べてから、農場見学に向かう

 じいちゃんの軽トラで行くけど、僕達は荷台に座って乗っている。農道をゆっくり走り、10分程で農場に到着する。それ程遠くはない。


 入り口付近にある会社の事務所にじいちゃんと入っていった。事務所だけど事務机があるわけではなく、好きな丸テーブルに適当に椅子を持っていって事務作業をするそうだ。

 それにドリンクサーバーやお菓子が用意され、そこで飲み物を入れてお菓子を適当に持っていけるようになってる。

 今時は会社ってこんななのか……


 じいちゃんと待っていると奥から男の人が出てきた。社長だそうだ。もう一人女性を連れて来ていた。


「こんにちは、君がヤマトくんかな?浅草と言います。お父様にはいつもお世話になってます」

「両国ヤマトです。よろしくお願いします。こちらの3人はセイラ、アリーシャ、エリーといいます。僕の将来の嫁です」

「「「……よろしく……お願いします」」」

「おや?京極さんのお嬢さんじゃないですか。パーティーで何度かお見かけしましたが」

「そうなんですか?」

「ええ、京極さんとも食品関係でお付き合いがありまして」


 父さんと付き合いがあるなら、伯父さんと付き合いがあってもおかしくない。伯父さんからの紹介で付き合いがあるんだと思う。

 伯父さんの会社関係のパーティーには食品会社の人が多く来てると父さんが言ってたな、そういえば。あとは、この間の水族館のような協力している子供が喜びそうな施設の関係者。

 接待というより親睦会だそうだ。


「京極さんのお嬢さんと両国さんの息子さんが結婚するんですか。知らなかった」

「元々遠縁の親戚で幼馴染でしたから、京極の伯父さんも僕をと考えてたみたいですね」

「ほう。でも夏には両国さん、何も言ってなかったんですが……」

「母さんの方と伯父さんが組んで計画してたみたいですから」

「いいネタをいただきました。今度お会いした時の話題に使えそうだ。

 と、雑談はこのくらいにして農場見学でしたね。こちらの女性がここの責任者です」

「御茶ノ水です。よろしくお願いします」

「「「「よろしくお願いします」」」」


 挨拶も終わり、ここの農場の案内をしてくれた。

 じいちゃんは浅草さんと残って話をするそうだ。


 かなり広い農場内を歩く。

 先頭を歩く御茶ノ水さんは結構背が高く、背の高い方のエリー達より少し高い。農作業をしている事もあって、割と筋肉質そうな体型が作業着を着ていても感じられる。

 農場内を歩いていると、作業をしている人が結構いた。

 気付くとこちらに会釈したのだが、その後セイラ達を見て鼻の下を伸ばしていた。俺はその視線を遮るように移動する。


「やっぱり農家と同じで土日休み関係なく働くんですね?」

「シフト制なんで公休日全部働いているということはないですよ?会社なんで法律の範囲内で交代で休んでます。

 そういう点では個人営業の農家さんの方が大変だと思いますよ?」

「そうですね。人数いないときちんと休めませんよね」

「はい。その点では他にも利益を出す事を考えないといけないんで、大変なんですよね。

 それで今回周辺の農家さんと協力して、新しい野菜の栽培と調理方法や料理自体を一緒に提供出来ないかと計画しているところで、ヤマトさんが農家を継いでくれるということで調理の方を担当して頂けると聞いてます」

「お役に立てればいいのですが。卒業したばかりの頃ですので、御指導御鞭撻の程よろしくお願いします」

「そんなに気を張らなくても大丈夫ですよ。ヤマトさん1人に任せるというわけではなく、みんなでいろいろ考えてやっていくので」


 とはいえ、俺の調理スキルは重要なのは確かだ。頑張らないと。


「それに屋台の焼きそば美味しかったそうですね。例年のは本当に『屋台』の焼きそばで、雰囲気だけであんまり美味しくなかったそうですが」

「売れたのはうちの看板娘3人のおかげですよ。使ってる食材もいつもと変わらなかったはずですけど。

 用意されてた物を使いましたから、猪肉、キャベツ、玉ねぎ、揚げ玉、後ソース。塩焼きそば用タレも市販品でしたし。

 せいぜい麺を解すのにだし汁を使ったくらいで。こんなのはお店ならどこでもやってるようなもんですし、水やお湯でもそれほど変わりはないですよ?」

「焼き加減、塩加減などで違いが出たのだと思いますよ?その辺が調理スキルの差なんでしょう」

「そうなんですかね?家で調理しているのがほとんどなんで比べるようなことはなかったので」

「でも、調理実習で自分達で作るのとは全然美味しさが違うよ?」

「そうなのか……」


 そんなもんなのか、考えたこともなかった。自分の感覚だけで作ってるから、その辺誰でも出来るように数値化が必要になってくるんだろうなぁ。

 仕事として調理する時はやり方も見直さないといけないかもしれない。


「その話はまだ野菜の栽培もありますから、まだまだすぐにということもありませんから。

 さぁ、他の所も見に行きましょう」


 その後いくつか畑を見せてもらった。じゃがいも等海外のように大きな農機具で収穫する畑やハウスで空調設備を使い栽培している畑、規模は小さいが人の手で面倒を見ている露地栽培の畑等があった。

 流石にうちでは大きな農機具の導入は難しいから、見るのは楽しかった。でも出来不出来の差が多くなるから、選別後の使い道が気になる。

 しかし、うちでは出来ないくらい多くの種類の野菜が栽培されていた。使ったことのない野菜もあり、どんなものなのか使ってみたいと思った。


 見学も終わり事務所に戻って、じいちゃん達に合流した。じいちゃん達はずっと話をしていたようだ。

 今後の事で打ち合わせもあったんだろう。


 と思っていたら……


「おかえりなさい。見学はどうでしたか?うちに勤めません?」「おい?」

「いえ、祖父の跡を継ぎますので。でかい農機具で収穫するような大規模な畑はうちにはないので凄かったです。ただ、大規模になれば規格外品も増えて処理に困りそうだなと。

 他も丁寧に作業されてましたので勉強になりました」

「ですよね~

 畑については、まぁその辺の問題は今も昔もありますけどね。昔ほど規格外品が厳しくないから、処理にはそれほど困らなくはなってます。でも、それでも出る物をどうにかしたいとは思ってますよ」

「あとは御茶ノ水さんと調理について話をしましたけど、普段感覚で調理しているので、仕事でとなると誰でも出来るように数値化するようにしないとなぁとも思いました」

「その辺は追々みんなでやっていけばいいと思います。それでヤマトくんのいいところが失われても意味が無いので」

「そうだ、ヤマト。まだ先の話だし、今から考えすぎるな」


 いきなり勧誘されても困るな。単純に農業をしたいだけではなくて、じいちゃんの野菜作りを継ぎたいのだから。

 ただ、初めての仕事となれば緊張もするし、それまでに出来ることはしておきたいなぁ。

 それでも自分の持っているスキルに期待してくれるのは嬉しい。調理スキルはこれからも磨くようにしておこう。


「我々としては新しい作物を売り出して行きたいと言うところで、栽培と調理について近隣の農家の皆様にご協力をお願いしています。

 農家の皆様に栽培スキルはあっても調理スキルはないと言われていたところ、ヤマトくんの登場なので期待しています。

 でも、これはチームで行う事ですので何かあれば相談して下さい。皆力を貸しますので。

 2年後よろしくお願いします。いい物を作っていきましょう」

「頑張ります」


 卒業後の目標は決まった。農家を継いで、料理もして。自分の希望することや好きな事が出来るのなら嬉しいし頑張る。

 それにセイラやアリーシャ、エリーもいるし、ここに来ればじいちゃんばあちゃん、近所の農家の人、会社経営の農場の人達もいる。

 みんなでやるならそれも楽しいだろう。


### 続く ###


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