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第一話 アイラ部異世界

「できた!ついにできたぞ!」


 俺の目の前には緑色ネオンに輝く魔法陣。教室に満遍なく光(LEDライト)が点在しているせいか真夏なのにさながらクリスマス気分である。


 高校の東棟。グラウンドが見渡せる最端に俺らの部活は存在していた。


 茶道部。と言っても生まれて17年。一度も茶道の勉強なんかしたことない。じゃあなんで茶道部に?と疑問をもつ人も少なくないだろう。


 ちなみに理由は簡単だ。わが校創立60年!この茶道部が異世界転移の魔法陣の研究をしている部活だからだ。その証拠に俺らの周りにはネオンの光以外にも60年の知恵が詰まった資料(赤点)の紙束が散らばっている。


 そう、茶道部なんて公に俺たちの研究内容を晒さないための名目上の肩書でしかないのだ。


彼方かなた氏、GOODLUCK!」


 そういって俺の肩を叩いたのは同じ部活のメンバーである月城銀河つきしろぎんが。ずっしりとした体格(贅肉)がトレードマークで、四角い眼鏡を愛用している。彼も青春を犠牲にここまで共に研究に参加してくれた相棒だ。


 俺は氏名が珍しい。故に物心ついた時から俺は神から与えられし特別な力があるのではないかと思って生きてきた。小学生の頃は、僕私頭いいと思い込むひろゆキッズを陰で一瞥いちべつし、中学生の頃には月に一度、必ず○○省宛てに秘密文書を送り続けた。


 だが年を重ねるごとに周りとの運動能力、学力で格差が現れる。俺はやはり神より選ばれ史使ではないのか?そう思った矢先に現れたのが彼――銀河だ。


 彼も俺と同じく悩みを抱える高校生だった。自分は周りとは違う。それが容姿にも表れたのか真夏にも関わらず初めて出会ったときはロングコートに指ぬきグローブというイカした服装だった。


 そんな俺と銀河、まるでハルヒの力により運命的に結びつけられた俺らだからこそここまでやってこられたのだ。


 俺が魔法陣に入るや否や銀河が外から詠唱を唱え始める。彼の首元にはいつの間にかどこで買ったのか分からないドクロのネックレスがかけられている。


 むにゃむにゃと呪文を唱えながら銀河が電圧装置の電圧をあげていく、それに伴い魔法陣の光が色を増していく。そして、その輝きが最大になったとき!


「はああああああああ!!」


 銀河は立ち上がると、おもむろに両手を突き出し、叫び始めた。


 が、



「………何も起こらないな?」


「待て!彼方氏!」


 おもむろに銀河が叫ぶ。何か誤作動があったのだろうか?


「あと10秒で『ムスタング戦士アズにゃん』の地上波が始まるぞ!」


「………んなもんどうでもいいだろ?」


「いや、我はこの時のためにアニメ化される前からコミカライズ1巻につき10巻分購入してきたのだ。これを見逃すのはファンとして恥。否、切腹モノぞ!」


 言うや否や銀河はたいして重くもないリュックをよっこらせと重そうに背負い、足早に教室を後にした。


「………まじかよ。俺らの努力の結晶のくだりどこいった?まぁ今日の実験は失敗かな、俺も帰―――」


 そう口にした矢先、不意に視界が歪み、意識が遠のいていく。


 まじかよ、存在Xは実在したのか………。



 そして、あかつき彼方は命を落とした。



 ***************************





「起きて!起きてください!」


 誰かが俺の耳元で叫ぶ。甘い。女性の声だ。朝チュン?これが朝チュンなのか?否朝チュンに決まっている!!


 同時に俺はすべてを理解した。この俺を呼ぶ声。この主こそが!!ヒロインなのだと。



 俺はにやけ顔を抑えながら煩悩まみれの脳で起き上がる。


 そこにいたのは――――




 ボイスチェンジャー片手、タンクトップ姿の知らないじじいだった。



 ―――いや誰えええええ!??




✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢✢





「よっ!」


 まるで仲のいい友達みたいなテンションで爺さんは俺に話しかける。


 待て待て待て、状況がつかめない。今まで数多あまたもの異世界ものを見てきた俺だが、こんな急展開あったか?


「女性の声の方が喜ぶと思ったんじゃが………?わしの調べ不足かの?わしはこの世界の神じゃ、よろしくな。これからソナタには異世界に行って魔王を倒してもらう」


 言って神は片手をふいっとあげる。


 やだやだやだ!神はもっと神聖であるべきだろ!なんで今どきの若者が好きなシチュエーションを勉強してるんだよ!?なんか恥ずかしいじゃんかよ!!


「やはりひどく困惑しているようじゃな、じゃが安心しろ」


 言って神はおもむろにタンクトップを脱ぎだす。


「わしは、着やせするタイプなんじゃ!」


 そこには見事なシックスパックが…………って誰得だよ!!てか決め顔でこっち見んなよ!余計に情報量増やしてどうすんだよ!!あと地味に胸に七つの傷ありますね!!ん!?いやこれマッキーで書いてるじゃねえかよ!!だせぇよ!!


「まぁ冗談はここまで、本題に入ろう。お主は死んだ。それも突然死、いや、異世界に行けると妄想してほんとに死んじゃった死!略してIMS死だ!!」


 ドドン!という効果音まで神は再現する。


「僕の恥ずかしい死因に専門的な名前つけるのやめてくれます?」


「ふょっふょっふょー!」


 何がおかしいのか神は笑い出す。笑い方きもいな。もうなんか思ってた異世界転移と違うぞこれ!!


 だが、あきらめてはだめだ。どっかの安西〇生も言っていた。俺は神に質問する。


「あ、あのーチートスキル的な物ってもらえないすかね?」


「んなもんあるわけないだろ!この不調法者めがぁぁぁ!」


 ――えぇぇぇぇ?沸点謎すぎない!?


「これだから下界の人間は嫌いなんじゃ。そんな力あるなら初めから異世界の住民に渡して魔王を倒してもらってるわい。第一、異世界に行けるというのにお前たちは欲張りすぎなんじゃ………あの日だってそうじゃ、わしが………」


 神も大変なんだなーと思った今日この頃です。


「………まぁ、強力な同伴者ならいなくもないが」


「………同・伴・者!」


 その言葉俺は再び目の輝きを取り戻す。今度こそ超キュートでかわいいグラマラスなヒロインが!!


「さ、来なさい」


 神が言うと、まっ白い空間にどこからともなく一人の少女が!



 ………ポテチ片手に現れた。



「よろ、しくで、す」


 むしゃむしゃとポテチを食べる手を止めることなく少女は言う。


 少女――いや、女神とでも言おうか。見た目は純白の羽の生えたあどけない子で年齢は俺より少し下か同じくらいなのだが、ポテチのせいで全て台無しである。


「……おまえな」


「安心してください!コンソメ味です!これでLにバレずにカンニングできます!」


 と少女は続ける。


 ………もう、なんでもいいや。


 異世界に来て早々。この世界の真理を悟る彼方であった。









貴重なお時間をこの作品に割いてくれてありがとうございました<(_ _)>。至らない点が多いと思いますのでもしよろしければご指摘、ご指導いただけると嬉しいです。

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