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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第二章

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85/85

85 アン・ハッピーは何度でもくり返す ミシェルside

ミシェル(敦忠)視点です!


魔女は怒っている。


バアル氏の登場は、彼女の創造主としての自負を傷つけるものだった。


この世界の全ては魔女が創り出した。

それなのに、地球上にへばりついて暮らす一人間でしかないバアル氏は、妙な角度から建国神話を理解し、私たちとは違う世界観とルールの下に生きているのだ。


(この世界の創造主は魔女(わたし)なのに……というところだろうな)


私は前世と前前世の終末に出会った『白髪の神』を思い出す。

正直、あの“白髪の神”の神力と比べれば、魔女の魔力は世界を創造するには力足らずだったと言わざるを得ない。

“白髪の神”が創造した前世の世界は、それなりに秩序立った世界だった。

しかし今の世界は、実に稚拙でお粗末で矛盾だらけで、まるで子供が作った絵本の中のような世界だ。


魔女は、この世界の主人公はお前だと言う。


しかし、こうやってバアル氏のようにモブにも関わらず自分勝手に行動する者も多くいる。

それに設定に無いカメリア合州国の台頭は、私と魔女にとって衝撃的な出来事だった。


魔女が世界を創造するに当たってまず物語を書いたのは、物語に合わせてキャラクターをそれぞれ配置したほうが簡単だったからだ。


人間は“建国神話”をなぞらえる必要がある。

もし、”建国神話”のストーリーをこの世界がなぞらえることができなければ────


『この世界を破壊して、ま〜た作り直せばいいわよね!?アーハハハハハハ!』


と、魔女は恐ろしいことを言っているのだ────




「”3I/ワルキュー彗星”ですね?

もちろん把握しておりますよ。つい先日、我々の小惑星地球衝突最終警報システムで存在を確認しました。太陽系外から飛来する観測史上3例目の恒星間天体で────」


当然、バアル氏は宇宙から飛来する危機を察知していた。

バアル氏は持参したノート型のパソコンを開き、例の彗星の合成映像を出した。


「青い……綺麗……」

アリス様が実に無邪気で可愛らしくため息をつく。

確かに、画面は青白い尾を引いた美しい箒星を映し出していた。


「────それでですね、ええと、我々の計算ではあと一年後、

この彗星が地球へ到達し、地表へ衝突する可能性が88.88…%………とかなり高い数値が出ています」

バアル氏は淡々と話した。


「ああ、私たちディスィジュエス共和国の国立天文台でも同じぐらいの計算結果だ」

私もバアル氏の論に同意する。


「そ、そんな!?」

アリス様が目を大きく見開き、悲鳴を漏らした。


「はい。衝突すれば地上での被害は甚大なものになるでしょう。

しかし、我々人類の現在の技術ではこの彗星の軌道を逸らす手立てもなければ、地球の軌道を動かすこともできない、……………だからこそ、アリス様、我々はこの危機を打開するためにも、あらゆる可能性にかけ宇宙開発をもっともっと先へ進めなくてはいけないのです!」

そう語りかける、バアル氏のアリス様への眼差しは期待に満ちている。


「フッ、今更だな。

この一年で準備できるのは大災難が起きた後の対処ぐらいだ。

四分の一以上の地表が破壊される可能性がある。一体、私たちに何ができるというのか………」


私は少々苛立っていた。

バアル氏の態度は意外なほどに冷静で明るいからだ。


幻とはいえ、一応、ディスィジュエス共和国の天文研究所で隕石衝突のシュミレーションを出しているが、衝突後は地球環境と動植物の生命に壊滅的な影響を与え、衝撃から生き残った者にも甚大な被害が出ると予想している。


「そんな!これ以上、地球が壊れてしまうなんて………」


地球は既に核戦争によって破滅しかけたことになっている。転生した人間たちが、この世界の不安全な状態を見て勝手にそう辻褄を合わせたのだ。


絶望して青くなったアリス様は、呑気に眠るカイン王のブランケットの上へ自分の小さな顔を埋めた。


「…………………私がなんとかしますので、ご安心ください、アリス様」


私は震えているアリス様に近づき、ほんの気休めを語りかける。

こんなに頼りない義弟に縋ってどうなるものでもないのにと、内心呆れながら……


しかし、世界の大国の国家元首と巨大国際団体の大物が揃って一年後の地球大災難を告げているのだから、ショックを受けるのは無理もないだろう。


(やっぱり、心苦しいな……)


実は、

”3I/ワルキューレ彗星”は魔女が作った幻だ。


私が魔女へ、この世界の主人公として主導権を獲得するために彗星衝突という虚構のイベントを作り出すように助言したのだ。


現状、ディスィジュエス共和国とエヴァグリーン国両国にとって多くの敵対勢力が日々成長しており、平和を脅かしつつある。

そこで、人類共通の脅威の幻覚を作り出すことで関心を地球の外へ向け、世界各国の対立構造を緩和させようという目論見なのだ。


魔女としても、人々を恐怖に陥れることで、人間たちに自らの貧弱な立場を分からせようと考えたようだ。

最終的には、魔女が救世主として現れて彗星を消失させ人類を救い、最上の地球の主と崇め祀られあらゆる権力を掌握することを目論んでいる。


この愚かな計画が最善とも思えないが、地球を破壊するほどの力を持たない魔女の魔力でできるのは、こんな詐欺まがいの茶番ぐらいなのだ。

 


「アーッハッハッハ!いいわ!

もっと、もっと、恐怖して震えてちっぽけな小鳥の雛のように惨めに身体を縮こませるがいいわっ!!」

魔女は居丈高にアリス様を見下して言い放った。

なんて傲慢なのだろう。 


「ええ、ラルラ様…………?」

さすがに温厚なアリス様も怪訝な顔をして魔女を見上げる。

未曾有の大災難の話を聞いて嬉々とする魔女は、常識的に考えて破滅主義者か人格破綻者に見えるだろう。



「やあ、アリス様ご安心ください。

我々の神の御名のもとに、何とかしてみましょう。

我々の神は万能ですので」


「「え?」」

「ハア!?」


自信に満ちた声に驚いて、私たちはバアル氏を見た。


まさか”世界宇宙開発事業団”に所属するバアル氏が、ここで非科学的な解決法を自信満々に答えるとは思わなかったのだ。

そうだ、バアル氏は唯一神を尊ぶ自由クリスマス教会の最上司祭でもあったか。


「【森の王女】の絵本の69ページです………そこに重要な記述があります。

『青い星』が地上へ落ちてきて世界を浄化するという内容です」


「ええ!?そんな話知らないわよ!?」

また魔女は怒り狂う。

作者の覚えのない記述なのだ。


バアル氏は得意気に絵本の内容を続ける。


「『青い星が天界に姿を現した時、浄化の日が始まる。

この青い星が現れると、天界の居住施設が轟音とともに落下し地表に激突する

そして第四世界が終わりを告げる────』」


「………」

私は遮ることなく静かに聞いた。


「『“青い星”が我が星にぶつかる

そして我が星は逆方向に回り出すだろう』」


「ええ?“青い星”?もしかして、今回の“彗星”のこと?天の住居って何?」

アリス様がパソコンの映像を覗き込んだ。

確かに”3I/ワルキューレ彗星”の合成映像は青い光を放っている。


「第四世界、か······」

なかなか興味深い内容だと思った。

実際、この世界は何度も破壊と再生を繰り返してきた。


「はあ!?原住民の予言!?また!

そんなの勝手に作らないでよ!まるっきりデタラメじゃない!!」


魔女は自分とは別の者が“建国神話”【森の王女】に加筆したと知って、ヒステリックに騒いだ。


「彗星のことは、ディスィジュエス共和国が何とかするのよ!

あんたのところの神は、しゃしゃり出なくていいのよ!」


(そういえば、魔女は以前の世界には”白髪の神”の他にも神がいるような話をしていたな………)


もしかして、カメリア合州国の原住民たちの所には本当に神様がいるのかもしれないではないか?

ふと、そんな疑問を抱く。


なにせこの世界は魔女が作った幼稚で不完全な世界なのだから、何か別の強い力を持つ存在がいてもおかしくないと思ったのだ。


(まあこっちもいるけどな……偉大なる最強の”神様”が)


地球上で最も偉大なる”白髪の神”は、

今はアシェルの中に閉じ込められている。


「私たち自由クリスマス教会は、世界各地の伝承を集め、神の御心を理解し、これから起こる出来事へ科学という文明の利器を駆使して対処していくつもりなのです。

さあ、アリス様。

私たちの宇宙開発の重要性を理解して頂けたでしょうか?

是非とも、私たちの仲間へ……」


「あ……………」


ブワッッッ


部屋中に竜巻が起こる。


ガツンッ ガツンッ ガッシャーーーン

物という物が飛び交い、壁にぶつかり壊れていった。


「な、なんだ!?この突風は!?」

「痛い痛い!時計が私の頭に当たったわ!」


皆、大騒ぎになる。



「····················アリス!!!」


「アシェル!大丈夫なの!?」


そこに現れたのは真っ青な顔色のアシェルだった。


「アリスに勝手なことを!

………………………お前、許さないぞ!!!」


アシェルは暗い顔でゆらゆら背後は蜃気楼のように影が揺れている。


「そんな・・・・・・・め、目覚めてしまったのぉ・・・・・・・・!?」


魔女は今までで一番、恐ろしい顔をしていた。



かの“白髪の神”は、

私が彼女とハッピーエンドを迎えるときに現れて、全てを台無しにしてきた。


世界や私だけじゃない、彼女の命もきっちり奪っていく。彼女に振られた腹いせのつもりだったのだろうか?


そうやって“白髪の神”は、軽々と、私が覚えているだけでも世界を二度も破滅させたのだった。


(もし、今が絵本のいう四度目の世界だというならば、私が知らないアン・ハッピーエンドが他にあったことになるが………………………


………………………いいや、この調子ならもっと幾度もあっただろうな?)


いつから存在するかも分からない“世界を統べる神”が、再び暴れ出した。


私は今世の息子を呆れて眺めていた。


不定期投稿でご迷惑をおかけしております m(_ _)m


読んでいただきありがとうございます!

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