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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第二章

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84 ロマンチックで素敵な宇宙の話 アリスside

引き続きアリス視点です!


メリー・クリスマス!(✷‿✷)✧

「············ご理解いただけないようですね?」

バアル氏は立ち上がると、私に近づいてくる。



「止めろ!!!」

ドアが勢いよく開き、私はハッと顔を向ける。


部屋に飛び込んで来たのは、ミシェルだった。

ミシェルは超音波の悪影響で倒れていたはずだ。

まだ顔は青褪めていて、傍らにいる元妻のラルラに肩を借りている。



「おやおや、驚いた。平然と動けるとは、フフフ」

バアル氏はミシェルを見て鼻で笑った。


「フフフ・フ・フ・フ・・・・!話は全て聞いたわよ・・・・!」

負けじとラルラがバアル氏に立ち塞がる。

もしかして、ミシェルを庇っているのだろうか?


「お前は、·······自由クリスマス教司祭ではないか。

そのロザリオは司祭の最上階級の証だろう?

アリス様から離れろ!」

そう言ってミシェルが指差した、このバアル氏の胸元には、鮮血のごとくに赤い十字架のペンダントが輝いている。


(『自由クリスマス教会』·······!)


『自由クリスマス教会』とは、赤い十字架を聖なる紋章とする世界規模の大きな宗教団体だ。

カメリア合州国を本拠地に世界中の至る所隅々まで布教活動をし尽くしているというが、同じ国なので『世界宇宙開発事業団』とも密接な関わりがあるのだろう。


忘れもしない。

先の戦争ではこの自由クリスマス教会がディスィジュエス共和国との仲裁を買って出てくれたのだが、その時の圧倒的な軍事行動で多くのエヴァグリーン国民とマロウ家軍兵士ディスィジュエス共和国民が亡くなった。

そして、その後のエヴァグリーン国での強引な布教活動の裏で、様々な利益を強奪する振る舞い·····その背後で糸を引いているだろうカメリア合州国政府も合わせて、彼らに良い印象は全く無かった。


「バアルとやら、何を企んでいる?

アリス様の身柄はディスィジュエス共和国に置かれている。全ての話は国家元首たる私を通してもらわねばならない!」


体調が悪い状態で無理をしているからなのか、いつも柔和で冷静沈着なミシェルらしくない厳しい雰囲気だ。


「このお話はアリス様に直接すべきと判断したのですよ。ねえ、アリス様? 

何、ほんの新しいご趣味の一つとして我が宇宙開発に顔を出して欲しいだけなのですよ。お名前を借りるだけでも構わないのです。とにかく格調高い王族の御名前があれば泊が付くというものですからね」

バアル氏は態とらしくへつらう。


「カメリア合州国も、自由クリスマス教会も、世界宇宙開発事業団も、信用がおけない。

どれも実体は数珠繋ぎに欲にまみれた詐欺組織だ!」


「ははは、手厳しいですね、閣下?」

と言いつつも、バアル氏は気に障る様子もなく飄々とした風情だ。


「………あのう、なぜエヴァグリーン国なのでしょうか?宇宙開発事業には、もっと適した先進技術国が沢山あると思うのですが·····」 


私はおそるおそる尋ねた。

そもそも、カメリア合州国とエヴァグリーン国は、地球上で最も広大な海洋を挟んでいるのもあり、戦争以前までは接点は殆ど無かったぐらい縁遠い関係だったのだ。 


「私が貴国に拘るのは、

エヴァグリーン国が、地球の”魂の故郷”だからですよ」


そう言って、バアル氏は自分の鞄から徐に本を取り出した。


「………これは………!」




バアル氏が持っていたのは、外国語で表記されている古びれた絵本だった。

注意深く確認してみれば、表紙にはトナカイ話で【森の王女】と表記されている。

トナカイ語とは、カメリア合州国で広く使用されている言語だ。私がかろうじて読めるのは、トナカイ語が王族教育の教養として習得している外国語の一つだったからだ。


「これはカメリア合州国の原住民で語り継がれてきた昔話です。最近になって自由クリスマス教会の聖書の”外典”と位置づけられました」


「カメリア合州国の原住民………?

自由クリスマス教会の聖書の外典?ですか??」


【森の王女シリーズ】はエヴァグリーン国のただのおとぎ話のはずなのに。

もしかして違う物語なのだろうか?

私はなんだか居心地が悪くなってくる。


バアル氏は続ける、

「お察しの通り、この物語はエヴァグリーン国の最古のおとぎ話【森の王女シリーズ】とほぼ同じ内容です。

しかし、我が国にも似たような話が伝わっていることに疑問を持ち調査したところ、カメリア大陸の原住民たちが、遥か昔にトンポー列島地域から遥々海を渡って来た民族だということが分かったのです。

同じ民族だから同じ物語を持っているというわけです」

トンポー列島とは、エヴァグリーン国・ディスィジュエス国のある本島と諸島々の名称だ。


「なんと、我々のトンポー列島とカメリア大陸の間の海洋は、昔の航海術では渡れなかったと考えられているのに·······」

ミシェルは一転して、古代ロマンに感嘆の溜息をついている。


「フン!そんな設定、私は知らないわよ!?

フン!フン!フン!だからなんだって言うのよ!」

ラルラは地団駄を踏んだ。


「我々”自由クリスマス教“信徒は、世界中のあらゆる信仰を統合し、神とは必ず”唯一神”であると証明していくのが使命なのです。

カメリア合州国の原住民の昔話にもまた”神”が登場します。ですから、これは私たち全人類の立派な神話であり聖典であるのです」


「「…………………………………」」

私とミシェルはバアル氏の熱弁に圧倒され顔を見合わせた。


「我々はこの聖典を預言書であると考えています。

話は単純なようで、これから実際に起こる現象を抽象的に表しているのです。

ほら、ここに“宇宙”に関しての記述があります」


「う、宇宙?」


それは子供用の絵本にしては厚みがあり、これまでの【森の王女シリーズ】全話が収録されているぐらいの量はありそうだ。

バアル氏はパラパラとページをめくり、最後の一話の冒頭ページで手を留めて私に見せてきた。


中の文章も、トナカイ語で書かれており、私はこのどうってことのない昔話が、わざわざ外国語で立派に出版されていることに違和感がある。


タイトルには【森の王女と怖い怖い宇宙への招待──最終回──】とあった。


(あれ!?最終回って書いてある!?

それに、私も読んだことのない話じゃない!?)


エヴァグリーン国内に伝わっていない続きがあるなんて。もしかして【森の王女シリーズ】はエヴァグリーン国が発祥のお話ではないのかもしれないという疑惑さえ湧いてくる。


思えば、この【森の王女シリーズ】は、ディスィジュエス共和国では建国神話と伝えられていたり、おまけに自由クリスマス教会では聖書の外典として扱われているなんて、ただの童話がずいぶん大袈裟に持ち上げられたものだと呆れてしまう。




一話は短い話なので、まだ未読の完結話が気になった私は、頑張ってトナカイ語の文章を読み解く。


「う〜ん……」

ストーリーをかいつまんで纏めれば、

王女と弟王子が二つの国に分かれて戦争をするが、王女の国が負けて国は一つに併合される。

敗者の王女は追放されることになるが、魔女の悪戯により王女と恋人は宇宙の彼方へ飛ばされてしまう。その後の消息は不明だけど、噂によると幸せに暮らしたとのことだ。

もしかしたら、弟王子の王国よりも末永く幸せに暮らしたかもしれない………という含みを持たせている。


「な、なにこれ……本当に、う、宇宙………………?」

あまりに荒唐無稽な展開に私は開いた口が塞がらない。

しかも、これで完結だなんて!?


そもそも“宇宙”なんて発想が、この物語の作られた時代にあったとは思えない。

もしかして、この最終話は偽物なのではないだろうか。


「我々はこの話は未来を暗示していると考えております。

一見、王女は敗者に描かれてはいますが、

最終的に生き残るのはこちらだと暗に示しているのです。

つまり────未来に人類(弟王子の王国)は滅びる。

生き残る為には王女のように宇宙船に乗って宇宙へ活路を見出すしかないと」

バアル氏は仰々しく堂々と語る。




「ア・・・ハハハハハハ!」


部屋中いっぱいに響いたのは、ラルラの笑い声だった。


「失礼……………先程から、あなたは誰ですか?」

ここにきて、始めてバアル氏は飄々とした表情から不快感を顕にした表情へと変わる。


「私の元妻のラルラ•ウスベ•マロウです」

ミシェルが紹介した。


「ああ!ミシェル様の以前の奥様でいらっしゃるラルラ様ですね。そうだ、マロウ家の。

ハハハ、失礼いたしました。

なるほどですねぇ…………」

バアル氏はまじまじとラルラを眺めた。


「ずいぶん、奔放な御方のようです。私のような者には実に新鮮でございます」

と言いつつ、明らかに侮蔑するような眼差しを向ける。


「あなた馬鹿ねぇ。

ぜーんぜん、なってないわ!」

全くものともせず、ラルラは腕を組んで胸を反らし、


「魔女も、神様も、弟王子も!王女も!

ぜーーーんぶ、配役は分かっているの?

そんな事も分からず、すっ飛ばして人類の存続の危機ですって!?

そーーーんなこと一文字も書いてないじゃない!!あなた物語を深読みし過ぎなのよ!!!?」


どうしてだろう。

ラルラは何かに苛立ちを感じているようだ。


「ラ、ラルラ様…………」

この不毛な話題を打ち切る為に、私はラルラを止めようと近づいた。

これ以上事を荒立ててはいけないと思う。

しかもここは、カインが安静にすべき病室なのだ。



「フ………、

国も配役もパズルのピースのように揃いつつありますよ?

もちろん、全く同じというわけにはいきません。

この物語は────実に抽象的ですからね」


「!」

不意に、バアル氏と私は目が合う。


「貴方様は────王女」

バアル氏は私を指差した。


そして、ベッドの青い顔のカインを指差す。

「そして、カイン王が────弟王子でしょう」


バアル氏はにっこり笑う。



(やっぱり、この物語を読んだ者は私とカインを物語の登場人物のように感じるのね………)


不思議と、私はようやくすとんと心が落ちた気持ちさえする。

私も子供の時は、カインと一緒に自分たちのようなお話だねと登場人物に思いを馳せて熱心に読んでいたのだ。


(私は“森の王女”────?)


とはいえ、思えば、

悪戯好きだけど決して賢くはない、ずっこけ悪役……というのが王女の損な役回りなのだった。

ぜんぜんロマンチックでも素敵でもない。


(やっぱりちょっと嫌だな…………)

私は、どうにか否定できそうな言葉がないかと脳みそを捻り回していた。




「コホン………………まあ、彼の考察はそんな程度のものだな。

しかし、要はこの世界を救いたいのだという、

それだけは称賛に値するとは、思わないか?」


「ミシェル殿?」

バアル氏は驚いてミシェルを凝視した。



「とある彗星の軌道上に地球があるという情報が

ある。計算すると彗星と地球とぶつかる可能性が高いという。

バアル殿が言いたかった人類の存続の危機とは、

─────そういう話だろうか?」


ミシェルは爆弾発言をした。



不定期投稿でご迷惑をおかけしております m(_ _)m


読んでいただきありがとうございます!

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