8 熊の妖精 アリスside
「外には出しませんよ·······」
「なんでよ!すぐ戻ってくるわよ?」
「いいえ!アリス様は戻ってきません!きっと!」
失礼ね。一度くらいは戻ると思うんだけれど。部屋に荷物もあるしね。荷造りって大変よ?
ジョシュアくんはやっぱり頑なだった。
私達が両手をがっつり合わせて、押しては引いてごちゃごちゃ揉めていると、庭園の森の奥から黒い大きなものが進んで来るのを見て、動きを止める。
ゆったりゆったり、ゆっさゆっさ··········
!?
あれは、
くっ熊ぁ!!?
その上に馬乗りになった少年が。
それは、カインだった。
「なっ何よ!?」
「なっ何だ!?アリス様避けて!アブない!」
カインは私達に気づくと何でもないように熊を停止させ、憎々しげに言った。
「んっ?お前達は·····アリス!
なぜこんな外れに来ている?」
「いやいや、それはこっちのセリフですよ〜〜!?」
「俺は、姉さんを探して城内を巡っている。姉さんはこの近くにいるはずだ。俺にこの熊を贈ってくれたんだ」
「はあ?姉って私······」
あれ?
あっそうか······!
あの日、ツリーの下で会った時は私は顔に包帯を巻いていなかった事実に気づく。
あの後で顔の湿疹が酷くなったのだ。
今も、爆竹の時も、包帯を巻いていたからあの時の私だって分からなかったのね。
だけど?
熊なんて私があげるわけないし·······
グルグル······
「「ひっっ」」
ジョシュアくんも私も悲鳴をあげる。
「アリス!お前のことじゃない!」
「は、はいっ!カインには二人も実のお姉様がいらっしゃいますものね!?」
カインは王弟の息子だけど、上に二人も美しい姉がいるのだ。
「その姉上でもない!
·········この熊の妖精をくれた人こそが、本当の姉さんなんだ··········!
今世でようやく出会えたんだ!」
へ、何よそれ··········?
妖精って·······?
「姉さんは、前世から神がかっていたからな·······
彼女の作る物には、もれなく生命の息吹が芽生える。
この熊もそうだ。
これは神聖な、言わば熊の妖精だ」
えっ私ってそうだっけ?
そして姉って、やっぱり私のことなの??
「あの、その熊って、つまり本体は·········」
グワァーオ!
「「ひいいい!!!」」
私とジョシュアくんは叫んで抱き合った。
「ああ、本体は姉さんが掘ったと推測できる木彫りの熊だぞ?」
私は熊の妖精とやらを凝視できない。
これ、あのクリスマスツリーに飾る時、近衛兵が落とした木彫りの熊ぁ!?
そういえば寝ていたカインのおでこに落ちたっけ········
勇気を出してよく見ると、めちゃめちゃ目が合う。目を輝かせて見つめてくる熊の妖精だったが、即座に私が目を逸らすと傷ついたように涙目になった、気がする。
気づけば周囲に他にも蠢く者共が集まって来ていた。
キイイイ〜〜!
ピョンピョン
ワンワン ワンワン!
チュンチュン♪
テテテテテテ·····
ガサゴソガサゴソ
このリアル動物にしか見えないやつら。
まっしぐらに私に近寄って来る。
犬っぽい妖精は尻尾を降っていたから、
もしかしてもしかして、
みんな私に懐いている雰囲気なの············?
これって、全部私がツリーにぶら下げる為に彫った木製の飾りじゃない!!
「どけ!ここ数日かけて城内はくまなく廻ったんだ!
俺は外へ姉さんを探しに行く!!」
ジョシュアくんと他の兵士が守る門を、熊の妖精に跨ったカインは前へと押し進める。
···········門を強行突破しようとするのは私じゃなかった。
カインだった。
悲惨な光景が繰り広げられて、目を過る。
「ああッ」
私は立ち眩みを覚えた。
読んでいただきありがとうございます!
もしよろしかったらブックマーク&評価&感想などお待ちしております!
Twitterへのリンクを貼りましたのでお暇な時にどうぞ〜小説の挿絵など充実させていきたいと考えております♪
⬇⬇⬇ずずいっとスクロールしていただき、広告の下です!





