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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第一章 

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8 熊の妖精 アリスside

「外には出しませんよ·······」


「なんでよ!すぐ戻ってくるわよ?」


「いいえ!アリス様は戻ってきません!きっと!」


失礼ね。一度くらいは戻ると思うんだけれど。部屋に荷物もあるしね。荷造りって大変よ?


ジョシュアくんはやっぱり頑なだった。


私達が両手をがっつり合わせて、押しては引いてごちゃごちゃ揉めていると、庭園の森の奥から黒い大きなものが進んで来るのを見て、動きを止める。


ゆったりゆったり、ゆっさゆっさ··········


!?


あれは、


くっ熊ぁ!!?


その上に馬乗りになった少年が。

それは、カインだった。



「なっ何よ!?」


「なっ何だ!?アリス様避けて!アブない!」



カインは私達に気づくと何でもないように熊を停止させ、憎々しげに言った。


「んっ?お前達は·····アリス!

なぜこんな外れに来ている?」


「いやいや、それはこっちのセリフですよ〜〜!?」


「俺は、姉さんを探して城内を巡っている。姉さんはこの近くにいるはずだ。俺にこの熊を贈ってくれたんだ」


「はあ?姉って私······」


あれ?

あっそうか······!

あの日、ツリーの下で会った時は私は顔に包帯を巻いていなかった事実に気づく。

あの後で顔の湿疹が酷くなったのだ。

今も、爆竹の時も、包帯を巻いていたからあの時の私だって分からなかったのね。


だけど?

熊なんて私があげるわけないし·······


グルグル······


「「ひっっ」」


ジョシュアくんも私も悲鳴をあげる。



「アリス!お前のことじゃない!」


「は、はいっ!カインには二人も実のお姉様がいらっしゃいますものね!?」


カインは王弟の息子だけど、上に二人も美しい姉がいるのだ。


「その姉上でもない!

·········この熊の妖精をくれた人こそが、本当の姉さんなんだ··········!

今世でようやく出会えたんだ!」


へ、何よそれ··········?

妖精って·······?


「姉さんは、前世から神がかっていたからな·······

彼女の作る物には、もれなく生命の息吹が芽生える。

この熊もそうだ。

これは神聖な、言わば熊の妖精だ」


えっ私ってそうだっけ?

そして姉って、やっぱり私のことなの??


「あの、その熊って、つまり本体は·········」


グワァーオ!


「「ひいいい!!!」」


私とジョシュアくんは叫んで抱き合った。


「ああ、本体は姉さんが掘ったと推測できる木彫りの熊だぞ?」


私は熊の妖精とやらを凝視できない。

これ、あのクリスマスツリーに飾る時、近衛兵が落とした木彫りの熊ぁ!?

そういえば寝ていたカインのおでこに落ちたっけ········


勇気を出してよく見ると、めちゃめちゃ目が合う。目を輝かせて見つめてくる熊の妖精だったが、即座に私が目を逸らすと傷ついたように涙目になった、気がする。

気づけば周囲に他にも蠢く者共が集まって来ていた。


キイイイ〜〜!

ピョンピョン

ワンワン ワンワン!

チュンチュン♪

テテテテテテ·····

ガサゴソガサゴソ


このリアル動物にしか見えないやつら。

まっしぐらに私に近寄って来る。


犬っぽい妖精は尻尾を降っていたから、

もしかしてもしかして、

みんな私に懐いている雰囲気なの············?


これって、全部私がツリーにぶら下げる為に彫った木製の飾りじゃない!!



「どけ!ここ数日かけて城内はくまなく廻ったんだ!

俺は外へ姉さんを探しに行く!!」


ジョシュアくんと他の兵士が守る門を、熊の妖精に跨ったカインは前へと押し進める。


···········門を強行突破しようとするのは私じゃなかった。

カインだった。


悲惨な光景が繰り広げられて、目を過る。


「ああッ」


私は立ち眩みを覚えた。


読んでいただきありがとうございます!

もしよろしかったらブックマーク&評価&感想などお待ちしております!


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