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王女アリスはツリーの下で前世の夢を見る  作者: 漆あんか
第二章

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67 別れは午後のカフェテリア

久々の投稿ですm(_ _)m

「ハァ······北の戦地へは遠いわね·······」


私は白い議事堂ホワイトルームの片隅の、私の部屋でまんじりともせずに過ごしていた。


「アリス様?溜め息などついて、どうなさったのですか?」

エヴリンが不思議そうに聞いた。


「えっと、·········木人形に入ろうと思って。

でも、やっぱり入れなくて困ってるの」


私は以前は、本来の身体をエヴァグリーン国に置いて、ディスィジュエス共和国でアシェルの作った木人形に入って何の苦労もなく過ごしていたというのに、今はどうしてか、木人形の中に入れなくなってしまったのだ。


「ええ!?もう本体で人質にもなっているし、必要ないんじゃなかったんですか?」


「それが、必要になったのよ。『山の塗料』が手に入ったことアシェルに知らせなくちゃ。わざわざ戦地近くの北の森へ入るって言っていたから止めたいの··········」


「なるほど········でも、木人形に乗り移ってから北の戦地へアリス様が行かれるのですか?木人形とはいえ危ないですわよ?」


「大丈夫よ!·······たぶん」


「···········そうですわね!私がお側に同行すれば行けますね!」

エヴリンが腕まくりをして筋肉を見せつけてきた。体力系の話になると異常にノリが良くて本当に助かるわ。


「ありがとう!もう、私も生身で行こうかな?」


「それはちょっと········人質が脱走した形になりますわよ?というか、木人形でもダメですわよね、やっぱり。ミシェル様がどんなに怒られることか········」


エヴリンは想像しただけで真っ青になっている。

私は、北の地でアシェルに会えさえすれば、もしミシェルにバレても何とか誤魔化して貰うつもりなんだけど。


私はアシェルが木人形だから戦争でも死なないと、たかをくくっているのが心配だった。

本体が無事でも、恐ろしい目に合えば心が傷つかないとは限らないのだから。




というわけで、

私は白い議事堂ホワイトルームから程近いアイヅシティにある『木人形リハビリテーションセンター』という施設に来ている。

ここでは医療用の木人形利用に関しての全サポートを行っている。

私のように木人形に入れない人の訓練もしていると聞いたので、私もここでリハビリを受けることにした。

私が持参したのは、以前にアシェルが制作してくれた現在の私にそっくりの木人形だ。


木人形をちょうど良いからと柩に入れて滑車を付けて引き連れていると、何だか葬儀のような物々しい雰囲気が纏う。


リハビリセンターに入ると、いかにも医療施設といった、白く明るい空間が広がっていた。

開放的で明るい雰囲気だ。


まずは担当のカウンセリングを受けて、午前中は木人形の機能のチェックと私の身体検査を行った。


午後から、リハビリの担当がついて少しずつ木人形と私の身体の相性検査をするらしい。


まさか、木人形の医療利用がこんなにきちんとした医療体制に基づいたものだとは知らなかったので私は驚いてしまう。




私は午前中の予定を消化し、

施設のカフェテリアで昼食をとっていた。


「結構疲れたわ·········」


「いっぱい検査をしましたものね。

それにしても、こんなに科学的に木人形のリハビリを行うなんてびっくりですわね!

アリス様は以前はごく簡単に木人形に入り過ぎてたのかもしれませんね」


「本当よ。こんなに回りくどいことになるとは思わなかったわ·············」


この調子ではいつ北の地へ行けるか分からない。


「お医者様の診察では、アリス様の制作の木人形の精巧さに驚いてどこぞの高名な作者かと執拗に聞かれていましたね」


私は先程を思い出して溜息をついた。


「そうね、さすがアシェルだわ。

私も木人形を作ることができるけど、あの域にはなかなか達さないわ··········」



「こんにちは」


私の座るカフェテリアの席の遥か上から声がした。

私は上を見上げると、高身長のミカエルが背後に立っていた。


「あっ!ミカエル!?お久しぶりです」


慣れない場所で知り合いに出会い、私はテンションが上がってしまう。


聞けばミカエルも木人形のリハビリでこの施設に定期的に通っているという。


「え···········っ!ミカエルって木人形なの··········!?」


私とエヴリンは本当に驚く。

だって、私たちは年齢不詳なまでに美しいミカエルの、もはやファンだったから。


「そうなんです。かなり昔の制作品なのでガタがきてしまって。可動に苦労する箇所があるんです。

さすがにもう新しいのに買い替えたいのですが、なかなか木人形は数が限られているので難しくて、どの木人形作家も予約すら受け付けていない状況で·········」


「そうだったんですね」


そうなのだ。午前中にカウンセラーに聞いた話でも同じことを話していた。

既に木人形を持っている私はとても幸運なのだ。


「すみません。さっき、話を聞いてしまいました。

アリスさんは、もしかして木人形を作られるのですか?」


「ええっと、まあ、一応。プロではないですが」


ミカエルは目を丸くした。


「すごいですね!本当に········もしかして、あの柩の中も?」


「いえ、あそこに入っているのは、私の師匠が私に作ってくれたものなのです」


ミカエルが見たいというので、柩を開けると彼は感嘆の溜息を漏らす。

「こんな精巧で緻密な芸術作品を作る師匠がいらっしゃるのは凄い事です。アリス様も相当な腕前なのでしょう」


ミカエルは、見てもいない私の腕を褒めまくっていた。



それから、昼食を一緒に済ませて、解散しようとしたその時、事件は起きた。


「ア、アリスさん、立てません」


「へ?」


「木人形の老朽が原因のようです··············

困ったな··········」


ミカエルは茫然と椅子に座ったままだ。

突然に足が動かなくなったと言う。


長年を共に過ごしたミカエルの美しい木人形は

いつの間にか、

静かに彼に別れを告げていたのだった。


読んでいただきありがとうございます!

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